『ジャン=ジャック・バーネル自伝(ストラングラー・イン・ザ・ライト)』取材・アンソニー・ボイル、訳・伴野由里子
2025年7月26日、シンコーミュージック刊。
2022年にオリジナルのフランス語版が出版、2023年にはエリザベス・ケイによって英語版、2025年に伴野由里子により日本語版が出された。編集はジェズ・ドレイクとJ.J.バーネルとクレジットされている。
原題は『JEAN=JAQUES BURNEL STRANGLER IN THE LIGHT CONVERSATIONS WITH ANTHONY BOILE』、題名のあとに“アンソニー・ボイルとの対話”とあるとおり、自伝といってもアンソニー・ボイルによるジャン=ジャックへのインタビュー形式で語られたものだ。コロナ・ウィルスの影響と距離の問題でその対話は2021年2月から翌年3月までZoom上でおこなわれた。冒頭に幼少時やステージ上、オフステージなどの写真を36ページ掲載、本文はテーマ毎に12章に分けて生い立ちや母国(ジャンの両親はフランス・ノルマンディーからの移民でジャンはイギリス生まれ)、影響を受けた音楽、自身の作り出した音楽、バンドメンバー、武道、暴力、神話や三島由紀夫、ドラッグ、セックス、モーターサイクルなどについて語られている。
ジャン=ジャックはバンクが革命だったとし、次第に“パンク革命から弾き出され”、“俺たちは抹消され”、“完全に孤立し”、“「革命」の担い手であることのプレッシャーから解放された”という。しかしそれはストラングラーズが独自路線を歩むことに繋がり良かったと語っている。ジャン=ジャック自身が他のパンクバンドや客やジャーナリストとトラブルを起こしたり、フィンチリーボーイズというストラングラーズ親衛隊がらみの暴力沙汰など武勇伝多し。
原語にもあったんだろうが、気になるのはジャンの発言の後に(ニヤリ)が多用されてることで、これ必要なのかな。まぁともかく口語体で書かれているのでとても読みやすい。ストラングラーズのメンバーのヒューやデイヴ、ジェットとの出会い、その音楽的変遷、ヒューの脱退、デイヴとの別れ、ジェットの引退と、バンドとしての栄枯盛衰、近年のバンドの状態についても語られている。ジャンは知識豊富で、政治的、地政学的な会話、文学、芸術に関する会話はとても面白く読める。
ザ・ストラングラーズの結成は1974年、ヒュー、ジェット、ジャン=ジャックの3人にハンス・ウォームリングというギター/キーボードプレイヤーが一時参加した後にデイヴと交代、ホープ&アンカー、ナッシュビル、レッドカウなどパブサーキットで実力をつけ、1976年には年間200本超えるライヴを行ったという。1977年には2枚のアルバムをリリース、ファースト『RATTUS NORVEGICUS(邦題:夜獣の館』は全英チャート4位、セカンド『NO MORE HEROES』は同2位といずれも商業的にも成功、人気を獲得した。
武道(空手)と三島由紀夫(と神話)についてはそれぞれ独立した章で語られている。「武道」の章ではジャン=ジャックの空手修行日本滞在記という感じ。リザードのファーストアルバム(1979年)プロデュース、ARBのアルバム『YELLOW BLOOD』(1984年)のレコーディングとツアー参加にも少しだけ触れられている。この章ではないが大学生のころに冨田勲「月の光」を知りお気に入りだったと書かれている。
ナチズム・ファシズムに対する厳しい意見があるにもかかわらず三島由紀夫に傾倒しているのは理解に苦しむところだが、三島の思想と行動にジャン=ジャックは矛盾を見出し、そこが人間的魅力だと考えているようだ。そしてやはり自決(ジャン=ジャック曰く“芸術的パフォーマンス”)に大きく惹きつけられているように思う。“三島の場合、彼という人物と比べると芸術は取るに足らないものにさえ思える”と語っている。
ジャン=ジャックの政治的発言はなかなか興味深く、
“民主主義を広めるという長きに亘るアメリカのマントラには絶対反対だ。(略)我々の理想を他国に押し付けようとする度に何が起こるかを散々見てきた。馬鹿げてるし、むしろ前より多くの問題を引き起こしてる”
“3つの国境沿いで戦争の危機が高まっている。ポーランドとベラルーシ、ウクライナとロシア、中国と台湾。(略)いずれウクライナは侵略され、誰もそれを止めようとしないだろう”(2021年12月におこなわれた対談)
…といった具合だ。
“俺たちにとってネズミは逆境に負けない者のシンボルであり、ロゴの一つとして今も残ってる。もし明日パリやロンドンに爆弾が落ちたとしても、生き残るのはネズミやゴキブリだろう。ネズミは非常に賢い生き物にもかかわらず、悪名高い。でも、だからこそ自分たちのシンボルにしたんだと思う”
pic from THE STRANGLERS 4CD BOX SET『THE OLD TESTAMENT』CD1(EMI UK 1992)

