映画・田口トモロヲ監督作品『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ』

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ』。最寄りの映画館では上映なし。少し離れた町のシネコンまで電車で出かけた。公開直後なので少しだけ。

映画の冒頭、監督の田口トモロヲがナレーションを務めるNHKドキュメンタリーを模したような主人公ユーイチ(峯田和伸)の語りから始まりクスッと笑わせてくれる。1978年というあと少ししたら半世紀前になろうかという出来事をもとにした作品のため全体的にやや説明が多いと感じるものの、日本パンク黎明期の熱意と熱気、シーンの高揚と喪失、そして拡散をうまく捉えていると思う。

フォトグラファーという表現者でありながらもシーンを客観的に見ているという立場でもあり、交渉ごとや清算など実務的なものにルーズになりがちなバンドの人間に代わってそれらを担当せざるを得なくなったユーイチ役を峯田和伸が好演。印刷屋の娘という設定でミニコミを発行しているサチ(ゼルダのチホがモデル)を吉岡里帆が明るくパワフルにそして爽やかに演じている。吉岡里帆から「リディア・ランチ」という言葉を聞いたときは新鮮だったなぁ。それに若葉竜也が演じるバンド・TOKAGEのモモ(リザードのモモヨがモデル)の3人を中心に物語は進む。

どうしてもモデルのバンドの再現力に興味がいってしまうところだけど、ロボトメイア(ゼルダがモデル)が「うめたて」を演奏するライヴシーンはなかなか感動的な再現力。吉岡がベースを弾く姿も絵になっていてかっこいい。ヨーコのトライアングル・イヤリングも再現。音はオリジナルの音源を使用した当て振りだが映画館の大音量で聴けるのもうれしい。それに新宿ロフトの外観の再現力は驚異的だ。ロフトの建物はもちろん、隣の家とその奥の建物を完全再現(VFXか)。素晴らしい。

1978年から1981年頃までのシーンをギュッと圧縮、同時進行していなかった事柄も並列で描いており、パンフレットには事実にフィクションを織り交ぜドラマ性を高めて観客が理解し易くした、と監督が語っている。宮藤官九郎が脚本ということで何となく想像できたがややコメディタッチ、でもホロリとさせる部分もあり、リアリティをキープしながらポジティブな作品となっている。原作にあったエピソードで幾つか入れてもよかったんじゃないかとか、あのバンドのこの曲を使って欲しかったと思うところはあるけど、まぁ、おっさんのノスタルジーというより現代の若者が観てどう感じるかが重要だ。


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