投稿

OASIS「DON'T LOOK BACK IN ANGER」

イメージ
1995年10月発表のアルバム『(What's The Story) Morning Glory? 』より。 2006年6月に開幕したサッカー・ワールドカップ・ドイツ大会。それにあわせるように公開された映画「GOAL!」は、 メキシコからアメリカへ不法入国した少年がやがてイギリスへ渡り成功していくというサクセス・ストーリー(だと思う、映画は未見)。 この映画のTVコマーシャルでオアシスの「モーニング・グローリー」が流れていたので、久しぶりにこのアルバムを取り出して聴いてみた。 もう10年も前になるのか、と思う。確か勤め先のアルバイトのA君に輸入盤を借りたんだよな。 分厚いギターサウンドとストン、ストンと決まるドラム。リアムの歌い方には?と思う箇所もあったが、気に入って自分で国内盤を買った。 4曲がシングルになっているし、緊張感のあるタイトル曲「Morning Glory」、キュートな「She's Electric」、 ポール・ウェラー参加「Champagne Supernova」など、聴き応えというか、ブリティッシュでポップな聴き易い、Oasis節ともいえるメロディに溢れたアルバムだった。 この中でも一番気に入ってたのがアルバムからの4番目のシングルになった「Don't Look Back In Anger」。 ギターのノエル・ギャラガーがボーカルをとるこの曲は、 ノエルがポール・ウェラーのアルバム『スタンリー・ロード』のレコーディングに参加 (Dr. Johnのカバー「I Walk On Gilded Sprinters」のアコースティック・ギター)したとき、 彼の前で演奏されたウェラーの曲「Wings of Speed」に触発されて制作が進められた曲であるという。 ピアノのイントロ(先の「Wings of Speed」を思わせる)から、粘りのあるノエルのギター、 ストリングスを絡めたダイナミック&ドラマティックな王道ミディアム曲。 終盤の歌詞に出てくる “でも頼むからロックンロールバンドなんかに君の人生をゆだねないでくれ/自分にさえ責任がもてないような奴らに” というフレーズは ロックに漬かりきった者に対する戒めか、それとも救済か。 イギリスで1996年2月19日にシングル・リリースされ初登場No.1を獲得、 CDシングルのカップリングに...

スターリン「WALK BOY」

イメージ
1989年10月発表のアルバム『スターリン』より。 THE STALIN解散から4年後の1989年にSTALIN結成(途中VIDEO STALINというのがあるが)。 1989年は、2月にシングル「包丁とマンジュウ」、アルバム『JOY』、7月ビデオ『P』、9月シングル「勉強ができない」、10月アルバム『スターリン』 発売とリリースラッシュだった。それだけアーティスト、レコード会社側も新しいバンドに力を入れていたのだろう。 ギターにTHE LIPSの山盛愛彦、ベースにはパラノイア・スター時代にもベースを弾いていた西村雄介、ドラムはローザ・ルクセンブルグ、ルースターズの三原重夫。 ホームページ「三原重夫のページ」の中の「人のケツ見て24年」にこの頃のレコーディングや合宿についての記述があるが、 三原の“キーとリズムを中心に緩い構成がある他は自由にし、ソロパートなど長さも決めない演奏にミチロウの詞を融合する”という提案に “ミチロウも喜んだ”と書かれている。この三原の提案した即興性を重視したアプローチでこのアルバム製作は進められ、 3人が完成させたサウンドにミチロウの歌を後録りするという形がとられた。前作『JOY』では作詞・作曲遠藤ミチロウだったが、 『スターリン』収録曲の作曲は全てバンド名義でクレジットされている。 「Walk Boy」はディレイのかかったギターのフレーズと三原の弾くキーボードで始まり、シンプルなベース(音符の置き方が変わってるけど)、 ドラムが入り、ミチロウが羊の数を数え始める…。 歌詞は、“行かなけりゃ/Walk Walk Boy/こんなに遠くまで来たはずなのに/ ここがどこだかちっとも気にならない”という短いもの。 “こんなに遠くまで来たはずなのに”という表現がなんとも気持ち悪い。 淡々とした曲調だが、羊の数が100に近づく頃、曲の盛り上がりがピークを迎える。 羊は眠る為に数えているのではなく、歩き続け彷徨える羊(少年)たちを数えているのか。

PLASTICS「RELAX」

イメージ
2005年7月発表のベスト・アルバム『Origato25』より。 デビュー25周年を記念してリリースされた2枚組ベスト・アルバムで、1979年11月にイギリスのラフトレードからリリースされたシングル 「Copy c/w Robot」の2曲(初CD化)、未発表曲2曲のレアトラックを収録。 その未発表の1曲「Relax」は、曲が似ているわけではないがOMDの「Electricity」を思わせる不思議な浮遊感と疾走感を持った曲。 ギターのペナペナ具合も程良く決まっている。 プラスチックスはクールなイメージのバンドだったが、中西俊夫の低音と裏声を駆使した性急なボーカルスタイルは、クールでありながらも 聴き手の精神をホットにさせる魅力を持っている。そのパンキッシュなダンディズムはこの未発表曲「Relax」や例えば2ndアルバム収録曲でスローな「Park」にも顕著に現れている。 またステージがホットだったことは、同じく25周年を記念して発売された『Hard Copy』のDVD映像や、屋根裏ライブCDのジャケット写真を見ても証明済み。 そしてこのベストには「Copy」が3バージョン!収められている。ラフトレードバージョンはベースラインがダダダダッと直線的、他と歌詞が若干異なり、途中のチカによるホラーな叫びが特徴。 おなじみ1stアルバム『Welcome Plastics』収録バージョンはカラフル&キュートな音作り。 再録音アルバム『Welcome Back Plastics』収録バージョンは、ザクザクと刻むGang of Fourのようなギターがかっこいい。 曲調もファンキーになり(特にベースライン)、ボーカルも3種のなかでは一番力強い印象だ。

大江慎也「GO FOR THE PARTY」

イメージ
2006年3月発表のアルバム『The Greatest Music』より。 1990年末以降の長いブランクのあと大江慎也は、2003年6月下北沢Club251でのRock'n' Roll Gypsiesライブへのサプライズ・ゲスト出演、 UNとしてのライブ活動と2004年7月ルースターズ・オリジナルメンバーでのフジロック出演、2004年10月UNのアルバムリリースを経て ついにソロアルバムをリリースした。 大江慎也名義としてはOnesを従え1990年5月にリリースされた『Will Power』から実に16年ぶりとなる。 録音メンバーは池畑潤二、花田裕之、井上富雄。 タメの効いた花田のギター、井上のランニングベース、池畑の木屑の飛び散るのが目に浮かぶハイハットの音、 ざらっとした音の感触は、やはりこの4人だからこそ作り出せるものだ。 UNのアルバムのような唸り、叫ぶような大江のボーカルは抑えられていて聴きやすい。 雑誌のインタビューなどで大江は“初めてのソロアルバム”と言ってこれまでのソロアルバムを否定していたが、楽曲によってはこれまでのソロアルバム を思い起こさせる曲もある。 が、やはり演奏メンバーが違うだけあり、大江が歌っているという以外にも聴き所は作られている。 “明日また会えたら会えるくらいの それくらいがいい” という歌詩がでてくる「Go For The Party」がいい。 走り抜けたルースターズの日々、自分達の作り出す音楽への絶対的な自信、 そして伝説を背負い、“Living Legend”と呼ばれた大江に“世界と宇宙が俺の足元にひざまずく”という思いを抱いた日もあっただろうか。 そんな苦しい夢から覚め、ロックンロールの気軽さ、ギター持ったら出来ちまった、バンドで音出して録音しちまった。という感じの曲が実に爽快だ。 練りに練られて作られた、というアルバムではないが、「Go For The Party」の先の歌詩や“笑って過ごせよ今日くらい”、 「何処へ行こうか」の“気がついたらそこにいた位の そんな所があったら行くけれど”、 「Stay With You」の“今日を楽しく過ごそう 笑って過ごすなんて なんて楽しいだろう” といった歌詩に現れている‘気楽さ’がこのアルバムのムードを作り、製作の原点になっているように思う。

はっぴいえんど「12月の雨の日」

イメージ
1970年8月発表のアルバム『はっぴいえんど』より。 つい最近まで、はっぴいえんどは積極的に聴くバンドではなかった。鈴木茂『バンド・ワゴン』や大瀧詠一のソロアルバムなどは聴いていたが、 2005年9月に稲荷山公園で行われた「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル」の細野晴臣のライブを 見て感激してから、細野ソロ初期3作~はっぴいえんどと辿って聴いていった。 私が日本のロックバンドを聴き始めた頃、レコード屋でみた「ゆでめん」のジャケットは強烈な印象を残したが、 その頃、私の周囲にも、はっぴいえんどの音楽に興味を持っている者はいなかったように思う。 はっぴいえんどは良くないと言っている者もいなかったと思うのだが、 中学~高校生にはThe Bandやバッファロー・スプリングフィールドなどのアメリカンロックに影響を受けたはっぴいえんどは、 四人囃子やパンタ(頭脳警察)よりも近寄りがたいものだったという気もする。 自分の好きなパンタとはっぴいえんどが三田祭事件以来対立している、ということにも少なからず影響されてたかもしれないが、それよりも、 雑誌ロック画報01のはっぴいえんど特集で湯浅学が語っていた“はっぴいえんどの得体の知れなさ”が私にとっては入り口にならず、 長い間理解できなかった訳だ。 この「12月の雨の日」は、はっぴいえんどにとって最初につくられた曲で、細野,大瀧、松本の3人が細野宅に集まり作ったメロディに、 後日松本が大滝宅へ向かう途中で見た風景を描いた詞をつけ、その後に鈴木茂の印象的なイントロのフレーズが入った事により、この曲が出来上がり、 同時にバンドの方向性も生まれた。 他のメンバーが「これしかない」と思ったと言う、イントロのギターが独特の世界を作り出しているのは間違いない (アコギのストロークとドラムのタイミングも)。 全編を通して弾いている鈴木茂のギターは、瑞々しさをも感じさせるメロディにゆらぎとうねりを生み出しているが、 このファーストアルバムは4チャンネル録音で、後に8チャンネルで録音されシングルとして発売されたバージョンは、 数本のアコギがダビングされ、余裕のある大瀧の歌とともにさらに広がりを感じさせる素晴らしい出来だ(個人的にはこのシングルバージョンが好み)。 

SWAMP CHILDREN「EL FIGARO」

イメージ
1982年8月発表のアルバム『So Hot』より。 以前、このコーナーで「Samba Zippy」を紹介した時、2004年にSwamp Childrenの唯一のアルバム『So Hot』がCD化されていると書いたが、 内容はアルバム収録曲全9曲に、2枚の12インチシングルから6曲をプラスした15曲入りというもの。ジャケットは新しく変更されている。 このグループのアナログ盤は中古市場で安くはないので非常にお得。 ジャズ、ファンク、ニューウェイブ、アヴァンギャルドを飲み込んだ一枚。 アルバムで2曲めにあたる「El Figaro」は、恒松正敏ファンなら “ん?どこかで聴いたような...”と思われるかも。 E.D.P.SのセカンドLP『Edges of Dream』収録の「Chippoke」とベースラインがかなり似ている。などという事は抜きにしても、緊迫感のあるベースラインとドラム、 そこへフルートやアン嬢のスキャットが被さりストレンジな空気感を作り出しているこの曲は、 「Samba Zippy」と並んでアルバムを代表する曲と言っていい。

ヒカシュー「ヴィニール人形」

イメージ
1996年10月発表のアルバム『1978』より。 ヒカシューが東芝からのデビューアルバム以前に練馬の家で宅録したデモレコーディング音源のCD化。 巻上公一が手渡したこのデモテープを聴いた近田春夫によるプロデュースで、1stアルバムは製作される事となる。『1978』に収められている曲の多くが1stアルバムにも収録されているが、ここではその原型というか、 メジャーデビューの為に整理される前の、混沌としたエネルギーとパワーを含んだ状態の演奏を聴くことが出来る。 安い楽器を使い、身近に転がっている物を楽器代わりに叩き、うめき声をあげ、覚えたての楽器を演奏する、録音も4chのピンポン録音。 しかし、このころヴァニティ・レコード(アーントサリーをリリースした)からレコーディングの話しがあったという事もあり、 アレンジは完成されている。このデモをどう整理して、なにをマイナスすれば聴き易くなるか、という方法で1stアルバムは作られたのかも知れない。とはいっても、もちろん東芝からリリースされた「ヒカシュー」は素晴らしいアルバムだが。 内容は全て興味深いものだし、パソコン用のデジタル・データも素晴らしい(が、フィルムは現在の私のパソコンWindows XPでは見ることは出来ないようだ)。 ここでは“怪奇大作戦”(海琳談)な「ヴィニール人形」をお勧めとしておく。 1stアルバムのバージョンよりも全てのパートが不気味度を増していて、途中で聴こえるキーボード・アルペジオも美しく、 “ヴィニール~溢れ出る目から耳から~”の所、海琳正道の16のリズムで刻むギターカッティングがキレ味良い。

THE BADGE「飛べない天使」

イメージ
1983年5月発表のアルバム『Touch』より。 ザ・バッヂ。彼等唯一のアルバムが再発された2004年まで、実は音を聴いたことがなかった。活動期間が1982~1986年で、私が熱心に音楽を聴いたり見たり情報を集めたりしていた時期と重なるのだが、レコードを借りたりもしなかったし、 ライブで目当てのバンドの対バンになっていたことも無かった。 もっとも私がこの時期(幾分ダークな)ニューウェイブに興味が向いていて、ザ・バッヂのようなサウンドに興味が無かったからかもしれない。 バンド名やアルバムの黒いスーツの描かれたアルバムジャケットは当時から知っていたが、 この頃では中古でも見なくなっていたので、2004年のCD化を機に手にとって聴いてみた。 ザ・ジャムとして来日した時のポール・ウェラーに気に入られたという事やバンドの写真をみても想像できるザ・ジャムの影響下にあるサウンドだが、 それだけでは括れない魅力がある。ビタースウィートなボーカル、ハーモニー、印象的なメロディ、時にシャープで時に余裕のあるサウンド...。 「飛べない天使」はイントロがちょっぴりニック・ロウの「Cruel To Be Kind(邦題:恋するふたり)」を思わせるポップなナンバー。 ザックリとしたアコースティックギターの響き、“Never Smile, Never Cry~”と歌われるところの流れるようなベースラインがいい。 自分の感情表現やトライする気持ち、自分の音楽さえも押さえつけられた“飛べない天使”たちの苛立ちを歌った曲で、 “こんなはずじゃなかったさ/なにかが違いすぎる/夢のないステージに/爪をかみ冷たい夜を待つ”というフレーズなどを聴くと、 ザ・バッヂのメンバーが歩んできた、これまでの音楽活動を振り返った気持ちが込められているかもしれない、と思ってしまう。 今ザ・バッヂの音源は初期の未発表音源のリリースや、テイチク時代、キング時代とリイシューが進んでいる。 CDの演奏を聴く度に彼等のライブを体験したかったと思う。それはもう叶わぬ事なのだが...。

東京60WATTS「ウイスキーバーブルース」

イメージ
2004年3月発表のアルバム『Watts! Going On』より。 仕事の帰り、夜の国道を車で走っていたら、ラジオからなかなか渋い曲が流れてきた。 ギターのアルペジオにのせて“ウイスキーを一杯飲っていかないか”なんて歌われている。 その頃家に帰ってはウイスキーのロックをちびちびと飲んでいた私は、飲んだくれが集まるそのバーがいかに感じが良くて、いかに居心地が良いかを訴える歌詞に、 これは愉快な曲だなぁと思って聴いていたのだが、曲の後半に「ラフロイグ」好きで悲しい身の上の女が登場することにより表情を変える。 ちょっといきなりって感じもする展開だけど、この曲の主題でもあるのだろう。 ボーカルの大川たけしのユーモラスで脱力気味の歌声も堅苦しくなくていい。 東京60WATTSはこのアルバムでメジャーデビューした5人組。 確かな演奏力で(ピアノがいい味)、この曲の他にも面白い曲が並んでいる。

友部正人「地球のいちばんはげた場所」

イメージ
1988年発表のライブ・アルバム『はじめぼくはひとりだった』より。 私は最初、この歌になにか凄く広大な砂漠や荒地、例えばネバダとかグランドキャニオンとかエアーズロックとか(全部行ったことないけど)、 そういうイメージを持っていて、さらに政府の影のような男に彼女を誘拐されてしまうという、いささか荒唐無稽な内容だ、などと考えていたのだった。 ある時この歌の内容の話をしていたら、もっと小さな、日本のアパートや、二人じゃ狭く感じる台所があるような部屋が舞台なんじゃないかと思えてきたのだった。 彼女と共に夢を見、愛を交わした部屋が、“ぼく”に代わる新しい男の登場によって、この地球上でいちばん“はげた”場所に変わってしまう。 それは身近で、とてもせつなく、悲しい歌だった。 このアルバムは1988年9月27日に有楽町よみうりホールで行われたデビュー15周年記念コンサートを収録したもので、40曲程演奏された中から 27曲が選ばれている。「地球のいちばんはげた場所」はこのCDで初めて盤に収録された曲で、 ここでは松竹谷清(トマトス)のアコースティク・ギターをバックに歌われた。 それにしてもなんという思い込みをしていたのだろう...。

AKEBOSHI「WIND」

イメージ
2002年8月発表のミニ・アルバム『Stoned Town』より。 Akeboshi=明星嘉男を初めて聴いた(見た)のは2005年5月日比谷野音でのイベント“MAZRIの祭”の時。 トップバッターだったので、まだ明るい5月の夕刻、アコースティックでキレのあるサウンドを聴かせてくれた。 その時のMCで「今日はロックな集まりなので、ロックじゃない曲を云々...」みたいなことを話していたが、 聴いた歌も演奏も、その辺の“ロックバンド”なんかより、よっぽど硬質な意志を感じたものだ。 「Wind」は野音のライブでも演奏していた曲で、 イントロのクラシカルなピアノ、ドラムのリムショット、何度も“Don't try to~”と歌われる箇所が耳に残る英語詞の曲。、 縦笛(Tin Whisle)や弦が使われていてケルト・アイルランドな印象が残る。 曲の後半に出てくる歌詞“Winding Road”と“Straight Way”の対比も鮮やか。 この曲はアニメのエンディング・テーマとしてTVで流れていたらしい。だから、ある人にとってはこの曲を聴くとそのアニメのエンドタイトルが 思い浮かぶのかもしれないが、私にとっては暮れ行く野音の景色と缶ビールの味を思い出すのだった。

KEANE「BEND AND BREAK」

イメージ
2004年5月発表のアルバム『Hopes And Fears』より。 ボーカル、ピアノ&ベース、ドラムという3人編成のバンド、キーンのファーストアルバムは素晴らしい出来上がりだ。 この中からUKでは4曲がシングル・カット、いずれもUKチャート上位に入り、アルバムは1位となった。 私が手に入れたのは輸入盤でインターナショナル盤(UK盤や日本盤と曲順、曲数が異なる)だが、 控えめで哀しげな曲調の「Somewhere Only We Know」で始まり、ややアップテンポの「This Is The Last Time」と続き(いずれもシングルカットされた曲)、 3曲目に位置する「Bend and Break」まで非のうち所がない。 「Bend and Break」は前曲よりやや速めのテンポで、ボーカルが入ったあたりの抑えた演奏から、 サビの部分でシンセサイザーを加えた広がりのある演奏と伸びやかなボーカルが魅力的。 この曲はUKではシングルリリースされなかったが、2005年ドイツ、オーストリアでシングルカットされたようだ。 いい曲が揃っていて、アルバム全編を通して、時に恐れを、時に希望を感じられる演奏とアレンジ、歌の表現力は凄い。轟音ギターもアコースティク・ギターも全然加えられていないので、ギターの音が入っている曲に慣れている耳には新鮮。

THE WHO『MY GENERATION』

イメージ
壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.10 壁に飾りたいジャケ10回目、とりあえず最終ということで、やはり外せないザ・フーのファースト・アルバムの英国盤ジャケット。 1965年にBrunswickからリリースされ、1980年にVirginから再リリースされたものの、私がフーに対して興味を持った80年代後半頃には 非常に入手困難なレコードであった。 薬品のドラム缶の横で見上げるメンバー。ユニオンジャックのジャケットを羽織ったジョン、マフラーを巻いてるピート、 短髪のロジャー、白いGジャンのキース、4人とも細身のパンツと革靴。バンド名が赤、タイトルが青文字、右上に黒い四角に白抜きでレーベル名(これってオアシスっぽい?)。 格好よすぎるデザイン。 自分の部屋にこのジャケットを飾りたいと思っても、オリジナル盤、再発Virgin盤ともに高値で手が届かなかった。 そんな時、新宿某レコード店でこの英国仕様アナログ盤が再発されるという広告を見た私はすぐさま購入。たしか2800円位した。 後で知ったのだが、それはリプロ盤とよばれるブートレグで、どうせならBrunswickで作ればいいものをVirgin盤で作られたものだった (ブート製作者が持っていなかったのかもしれない)。 それでも、まぁポスターやピンナップを買ったと思えばいいので、ずいぶん長い間私の部屋に飾られていたジャケットだ。 リプロ盤はよく見ると色の発色が綺麗じゃないし、文字や写真のエッジがボケているので、後になって本物のVirgin盤(右上のジャケ写)を購入した。 US仕様ではCD化されていたが、英国盤ジャケット仕様でのCD化は2002年まで待たなければならなかった。ステレオ化、曲は大幅に追加されて2枚組みになって発売。 2004年には紙ジャケで再発された。

SMALL FACES『OGDEN'S NUT GONE FLAKE』

イメージ
壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.9 初期のビート・グループから、サイケデリック/ヒッピー・ムーブメントに影響を受けて変化を遂げたスモール・フェイセスの 1968年5月にリリースされた4枚目のアルバム。 円形のタバコ缶を模したジャケットは左横で綴じられていて、ジャケットを左に開くと右にタバコの葉と巻き紙の写真、 左にタバコを吸う人を花々や葉が囲み、たくさんの蝶が飛び立つ姿などが描かれた極彩色のイラストが現れる。 右のタバコの写真、左のイラストそれぞれが下側で綴じられていて、開くとメンバーを写した白黒写真が現れるしくみ。 タバコの葉と巻き紙は、タバコを巻いて吸う様に、このアルバムを聴いてひと時思惑にくれて欲しいという願いでもあるらしい。 右上のジャケ写は1996年にCastleから10,000枚限定でリイシューされた160g LP。 全英チャートでは6週間1位に留まり続けたヒット作だが、スタジオ盤としてはグループ最後のアルバムとなってしまった。

THE CLASH「I FOUGHT THE LAW」

イメージ
壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.8 クラッシュのジャケット・デザインではエルビスのジャケットを模した『ロンドン・コーリング』のアルバム・ジャケットや、 10インチ盤の『ブラック・マーケット』、日本盤LP『パールハーバー '79』、 UKシングル盤ではピストルズやディラン、ビートルズなどのレコードを聴く男女が描かれた「ロンドン・コーリング」、 ラフトレード、ファクトリーなどのインディレーベルをデザインした「ヒッツヴィルUK」など7インチ、12インチシングル盤でも面白いデザインが多かったが、 今回は1988年に編集盤『ザ・ストーリー・オブ・ザ・クラッシュ』がリリースされた際、UKでシングルカットされた「アイ・フォート・ザ・ロウ」を選んだ。 クラッシュの多くの写真を手掛けたペニー・スミスのメンバーフォトを薄い緑の色相に変化させて、真ん中を横切るようにタイトルとバンド名が配置されている。 右上のジャケ写は12インチ盤で、タイトルの下にステージ写真が3点使われているが、7インチ盤ではメンバーフォトのみで青味がかった色調だった。 キリリと締まったメンバーの立ち姿の中身は、ボビー・フラーでヒットした名曲をパワフルなドラミングとスピード感のあるスリリングな演奏、 ジョーのホットなボーカル、コーラスで仕上げた、ご存知の超名カバー曲(この曲の内容でTVCMに使われるとは思わなかったが)。クラッシュ活動中の1979年、アメリカでの1stシングルとなった曲で、アメリカ進出への足がかりとなった曲でもある。

ECHO & THE BUNNYMEN「THE KILLING MOON "ALL NIGHT VERSION"」

イメージ
壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.7 1980年代のニューウェイブの12インチ・シングルやアルバム・ジャケットには綺麗なもの、センスのいいものが多かった。アズティック・カメラ、ジョイ・ディビジョン、ザ・スミス、ドルッティ・コラム、ペイル・ファウンテインズ、ストロベリー・スイッチブレイド...。 絵画、風景、動物もの、ポートレイト等々。このエコー&ザ・バニーメンは、自然派とも言うべき美しい写真を使い、素晴らしいジャケットを多く残した。 凍てついた瀑布に立つメンバーを写したアルバム『ポーキュパイン』や地下(洞窟?)の湖に舟を浮かべた『オーシャン・レイン』、 海辺の鳥たちを写した「A Promise」の7インチやアルバム『ヘブン・アップ・ヒア』、ロイヤル・アルバート・ホールの写真に彩色したシングル「ネヴァーストップ」、 これは絵画だがHenry Scott Tukeによる、木々の下に佇む少年と少女を描いた油絵を使用したシングル「The Back of Love」などなど。 その中で1984年1月にUKリリースされたシングルの12インチ・ヴァージョン「The Killing Moon“All Night Version”」を選んだ。 雲の間に浮かぶ満月に照らされた岸辺。右側には木々が黒く、手前には一艘の帆船の影。画面中央より上に浮かぶ月、やや下を横切る水平線、 夜風に流れゆく雲や、月光が照らすさざめく波の陰影は奥行きをあたえ、写真の中に物語を感じさせる。 “All Night Version”の通り、9分余りの長尺に仕上げたこのヴァージョンは、 妖しく美しい弦の響き、アクセントをつけながら物語を進めていくリズム、イアン・マッカロクの艶のある声が月光と闇を紡ぐ、 ジャケット、内容共に極上の12インチ・シングル。

WAYNE KRAMER『DANGEROUS MADNESS』

イメージ
壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.6 デトロイトのバンド、MC5のギタリストであったウェイン・クレイマーが1996年に発表した、エプタフと契約後2枚目のソロ・アルバム。 ホワイトのストラトキャスターの写真を、ヘッドからネックの部分にかけて歪んだ状態に加工し、ブラックをバックに大きく白抜きのアーティスト・ネームが入った ジャケット。ストラトキャスターという曲線の美しいギターを更に歪めて曲線を強調し、 弦やピックアップ部分の陰影など、コントラストを強くして格好良いジャケットになっている。 裏ジャケットにはクライベイビーのワウワウ・ペダルの写真をやはり歪んだ加工を施して面白い仕上がり。 CD中ジャケにはテレキャスターと思われる写真も使われている。 サウンドはラウド、ハード、ポップ&パンキッシュな仕上がり。中には「Back To Detroit」というスローでメランコリックな曲もあり。 タイトルトラックではテレンス・トレント・ダービーがコーラスで参加、The Deviantsのミック・ファレンが数曲で歌詞を提供している。

CAPTAIN BEEFHEART & HIS MAGIC BAND『TROUT MASK REPLICA』

イメージ
壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.5 1969年発表のアルバムで28曲入り、オリジナル・アナログは2枚組だった。 赤~ピンクのグラデーションをバックに、帽子を被った魚の頭部になったビーフハート。 ジャケットデザインをしたCal Schenkelによれば、本物の魚の頭部を買ってきて被ったそうだ。 でも見た目は“ます(トラウト)”じゃなくて“コイ”みたいだが。 帽子の上にはバトミントンのシャトルのような物がくっついている。 “パー”をだした右手は“聴こえるかー”というジェスチャーのようだ。 内容は数々の伝説に満ちているが、周到な準備をし瞬間的に録音を終え完成させた、奇妙で精巧に構築されたアヴァンギャルド。 時にザックリ、時に微妙なズレが気持ちいいギターがパンク・ニューウェーブ以降に受け入れられたのには納得。 地引雄一著「ストリート・キングダム」の裏表紙写真で、魚の被り物に杖を持ったシュルツ・ハルナは、 このアルバムジャケットにインスパイアされたのだろうか。

FAUST『FAUST』

イメージ
 壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.4 ドイツのバンド・ファウストの1971年発表のファースト・アルバム。グループ名の“拳”そのまま、レントゲン写真の拳がデザインされたジャケット。 オリジナルLPはクリアーなレコード盤(レーベルは金属箔押し)と透明なビニールに赤文字印刷した歌詞カードを 透明なジャケットに入れるという“透ける”にこだわった作りだった。 自宅の壁に飾りたいが、私が興味を持ち始めたときには、オリジナルはレコード屋のレジの後ろの壁に飾られていたのを思い出す。 サウンド・コラージュを多用し、様々な約束事から解放された実験的な内容は聴き手のイマジネーションを刺激する。 2003年にオリジナル・アートワークを再現したCDが発売された(CDは透明に出来ないが)。 右上のジャケ写は1991年にCD化された時のものでプラケースにバンド名と拳が印刷され、白いジャケットに赤文字印刷された仕様。

JIMI HENDRIX『BAND OF GYPSYS』

イメージ
壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.3 ジミ・ヘンドリクス1970年発表のライブ・アルバム。トタン板(?)の壁の前に立つパペットはジミの他、ボブ・ディラン、ブライアン・ジョーンズ、ジョン・ピールといわれている。 以前の契約を解消する為にライブ録音が行われ、ジミ本人は満足出来る演奏、仕上がりではなく、この英国初回プレス用のパペット・ジャケットも 嫌がっており、リリースにも不本意だったようだ。内容に全然関係の無い人物の人形が3体もくっついていては、確かにあまりいい気はしないだろう。 トタン板のブルーの前に、画面中央より少し右に人形を集めて上から写したジャケットはユーモラスであり、ファンキーで渋い内容とは かけ離れた印象を与えるが、その後変更された(というか米国盤仕様)ジミのうつむき加減にギターを弾く、暗いトーンのジャケットよりは優れたデザインだと思う。   内容は1999年に「ライブ・アット・フィルモア・イースト」という2枚組CDとして大幅に追加・改訂され、まったく違う印象のものになった。