大谷英之編『ザ・クラッシュと日本』
ザ・クラッシュの新たな書籍が発売された。シンコーからは2003年〜2019年にかけて5冊のムック本が刊行されていて、今回もムック本かなと思っていたら単行本だった。
今回の『ザ・クラッシュと日本』は“ファンたちの異様な「熱」を本という形にして、後世に伝えたい。それが 唯一にして最大のモチベーションとなった”と大谷英之が「はじめに」に記している。
ザ・クラッシュ、特にジョー・ストラマーのファンに対する姿勢はこれまでもムック本などで読んでいた。ファンを大事にし、少年少女でも対等な気持ちで話す、ファンを楽屋へ入れる、サインは最後の一人まで…心温まる逸話の数々。この本でもペニー・スミスによるクラッシュ来日密着写真の中にファンを招待した楽屋の写真がある(密着写真が9枚とは少なすぎるよ…)。
クラッシュを撮影しようとロンドンのスタジオに突撃した17歳の少女。
1982年来日時にジョー・ストラマーのホテルの部屋に泊まった男子高校生。
1988年ラティーノ・ロカビリー・ウォーのUKツアーバスに寝泊まりしたファン。
といった熱狂的なクラッシュ・ファン、ジョー・ストラマー・ファンたちへのインタビューは、そのストレートに憧れへと向かうピュアな気持ちと行動力に驚かされる。このインタビュー3本は当時の写真もあり非常に面白く、この本のハイライトだろう。
他に元ピールアウトのドラマーで『ぼくはザ・クラッシュが好きすぎて世界中からアイテムを集めました。』の著者でもある高橋浩司のインタビューも面白かったし(トッパーの写真あり)、ジョー・ストラマーの自宅を訪問した戎隆明のインタビュー内容も展開に驚く。ジョーやポール・シムノン関係が圧倒的に多い本になってるけど、ミック・ジョーンズはビッグ・オーディオ・ダイナマイトの2011年フジロック出演時のレポートもあり(ブログ『HIGH-HOPES』の記事に加筆、短いけど)。
クラッシュの担当ディレクターだった野中規雄へのインタビューはロンドンコーリング40周年時のムック(2019年)より再録。その野中規雄雄が久坂玄名義で雑誌ジャム1980年4月号に書いた記事は『THE DIG Tribute Edition JOE STRUMMER 1952-2002』に再掲されていた。スマッシュ代表の日高正博へのインタビューと雑誌ミュージック・マガジン1982年3月号の今野雄二によるジャパンツアー・レポートも『THE DIG Tribute Edition JOE STRUMMER 1952-2002』に収録されていた。このあたりはどうかなぁ、繰り返し本に載せることもなかったんじゃないか。どうせならファン目線から見たクラッシュに統一してほしかったな。業界/評論家筋じゃなくてね。
ザ・クラッシュ、ジョー・ストラマー/ポール・シムノンは、優しくて、面倒見が良く、兄貴肌、そして人生の師…と、約300ページまるまるいい人紹介を読んで、ザ・クラッシュの本がこれでいいんかなという気持ちにはなった。
