My Wandering MUSIC History Vol.107 DATE OF BIRTH『AROUND + AROUND』
デイト・オブ・バースの初音源となるファースト・アルバム。ポートレート・レコードは当時ルースターズのプロデューサーだった柏木省三がオーナーのレーベルで、この10インチ・アナログレコードが最初のリリースだった(カタログNo.はP001)。
1曲目の「Pack My Bag」。破壊力のあるリズムトラック、マーク・ボランのようでもありテレヴィジョンのトム・ヴァーレインのようでもある痙攣するギター、セクシーでミステリアスなヴォーカル、幻惑的かつスペイシーなキーボード、圧倒的な魅力を感じられる1曲で、私は友人のルースターズ・ファンだったKBちゃんに当時「こんなのあるよー」と借りて聴いたのだが、このクリエイティヴでセンスあるサウンドに驚いたものだ。
続く「Space To Time」と「Mistress of The Night」は、暗闇と星々といったイメージのベーシックはシンプルなドラムレスの曲だが、ファンタスティックなシンセ・ブルースと呼んでいいかも。機械仕掛けのオモチャのような、宝箱のフタを開けたようなイメージ溢れる、サンプリングを多用したサウンドの「Remember Eyes」は、このアルバムの中では唯一日本語詞で歌われ、後々までデイト・オブ・バースの代表曲になるポップな曲。エレクトロでカラフルでダンサブルなサウンドの「Fresh Chapter "Mixed Up 1967"」はキュートなヴォーカルも魅力。ラストの「Backward」は1分に満たないインスト。
全体で約20分のコンパクトなアルバムだが初期デイト・オブ・バースの魅力がぎっしり詰まっている。彼らが管理を任せられていたフチガミ・レコーディング・スタジオで録音され、プロデュース、エンジニアリング、ミックスはデイト・オブ・バース。コ・プロデュースは柏木省三。アートワークはルースターズのジャケットを多く担当した鏑木朋音で、このジャケットに使用している写真はジャン・コクトーの映画『詩人の血(原題:Le Sang d'un poète)』から。
「Pack My Bag」はプロモ・ヴィデオも作られており、ロケットが墜落・爆発するシーンや人力飛行機が飛行に失敗するシーンやトリケラトプスのソフビ(?)がサングラス美女と絡まったり、火山が爆発したり、ジョン・F・ケネディのフィルムを使用したりするヴィデオで、すげー気に入ってた。市販されてないけど。この曲はソニーから1986年にリリースされたオムニバス・アルバム『別天地』に重藤功名義で「Around Around」という曲名で(ややこしいな)再録されている。
『AROUND + AROUND』は、デイト・オブ・バースの前身マインド・コントロールの音源をプラスして2度CD化されているが、いずれも現在は入手困難だから「Pack My Bag」のプロモ・ヴィデオや『別天地』の「Around Around」を加えてExpanded Editionとして再発してもいいんじゃないか。
ポートレート・レコードのシンボル・マークは柏木省三の横顔シルエット。レーベル名は省三→肖像→ポートレートというネーミングと思われる。
『AROUND + AROUND』レコード・レーベル面より
ポートレート・レコードの雑誌掲載広告(フールズメイト1986年3月号)