ARB Hisashi Shirahama Years 1986-1990 Vol.1『ONE and ONLY DREAMs』

1986年6月28日、兵庫県立文化体育館「GOD BLESS THE RING」ツアー最終日、ARB2代目ギタリスト斎藤光浩が脱退、その日ゲストで参加した白浜久がARBの後任ギタリストとして紹介された。9月より「We are ARB Let us introduce Hisashi Shirahama to you」と題されたツアーを開始、11月21日には白浜参加後初スタジオ・アルバム『ONE and ONLY DREAMs』と7インチシングル「プライベート・ガール c/w SPEED OF LOVE」をビクター/invitationより同時リリース。サウンドプロデュースは白浜久で、これまでのシンプルなギターサウンドからシンセ/キーボードを大胆に取り入れサウンド面では大きくイメージチェンジをした作品。

白浜久のギターリフが印象的な「Set Me Free」で始まり、性急にたたみかけるニューウェイヴィーでハイな感覚の「Day Dreamer」、ビシッと決まったアレンジのシングル曲「Private Girl」は“目覚まし時計が鳴るまでの恋 いつまでも続くわけはないだろう”という歌詞がせつない。ベースの岡部滋作曲でドライヴしたギターサウンドが魅力の「Freedom」、“だんだん良くなってるよ/よくなるはずだよ"というコーラスが印象的な「Pride」のバッキングトラックには間奏以外にギターの音色は無い。ほぼ全て白浜が弾くシンセとキースのドラム(パーカッション)が少しという感じ。

アナログではここからB面になり、セッション風のサウンドから始まるブギーな「Speed of Love」、続いて個人的には大好きなパワーポップでグッドメロディの「悪の華」は、そのはずラズベリーズの「Tonight」が基になっているという。
“腹の中まで化粧を しなくても充分きれいだよ
 きれいな花より今は 毒のある実が食べたいから”
退廃的で官能的な歌詞も魅力だ。

間髪いれずに始まる「朝(あした)のかげりの中で」。白浜は石橋凌に、絶望的な男と女をテーマに書いて欲しかったが石橋はリリースされたような“画面の中で響き渡る銃声の キナ臭いNEWSが今日もまた聞こえる”といったポリティカルな歌詞になったという。この曲もいいメロディ。

“不幸な時代に生まれてきたね”と歌い出し、“時代のいけにえにされるその前に ヤツの首をしめろ”というなんとも直情的な歌詞の「Strangler」。このアルバムの作詞作曲は全てRyo-Hisashiというクレジットになっているので、どちらがどの部分を書いたのかわからないのだけど、バブル期に突入した1986年末当時の状況、金と欲望と快楽を追い求め、うらはらに近づく世紀末に予言者たちは終末思想を説く、確かにそんな世の中を嘆いた、演奏と歌がひとつの塊となってこちらに迫ってくるエモーショナルな曲だ。ただ白浜久は生江有二著『渾身・石橋凌』(1989年)の中で「世の中、学校、親、社会が悪いという考え方があるが、おれはそれほど悪い時代ではないと思うんだ。歌うことも語ることも自由だし。そうではなく、今は逆に自由が重すぎる時代なんじゃないか」と語っている。

「Easy To Love」は男女ではなく民族や国家間の憎しみを乗り越えたいという思いを込めて書かれたフォーキーな曲で女性コーラス(Myrah)をフィーチャー、ホンキートンクなピアノソロ(中西康晴)もいい。ラストは「灰色の水曜日」。飛び降り自殺した女子高校生のために書かれた曲。リリース当時、自殺が多いのが水曜日だから、というのをどこかで読んだか聞いた覚えがある。
“冷たい雨風が 激しく木々を揺らす 
 咲いたばかりの花も 次々に散ってゆく 
 目をそらす 木曜日”
という歌詞が切なく悲しい。この曲もピアノは中西康晴が参加。ドラマティックで空間的な広がりを持ったサウンドの響きは新たなARBの誕生を感じさせた。

LPと同時リリースされたCD『ONE and ONLY DREAMs』(1986年) 

7インチシングルの「プライベート・ガール」はアルバム・ヴァージョンからキーボードとベースのみの幻想的な20秒ほどの導入部がカットされたヴァージョン。カップリングの「SPEED OF LOVE」はアルバム・ヴァージョンからセッション風の20秒ほどの導入部とドラムのカウントがカットされている。
7inchシングル「プライベート・ガール c/w SPEED OF LOVE」


『ONE and ONLY DREAMs』リリース時の雑誌広告

文中一部参照:Hisashi Shirahama Official Blog
参照文献:『ARB THE LONGEST TOUR 魂、鳴りやまず』宝島編集部編(JICC出版局・ 1991年)、『渾身・石橋凌』生江有二著(シンコーミュージック刊・1989年)

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