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WAYNE KRAMER『DANGEROUS MADNESS』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.6 デトロイトのバンド、MC5のギタリストであったウェイン・クレイマーが1996年に発表した、エプタフと契約後2枚目のソロ・アルバム。 ホワイトのストラトキャスターの写真を、ヘッドからネックの部分にかけて歪んだ状態に加工し、ブラックをバックに大きく白抜きのアーティスト・ネームが入った ジャケット。ストラトキャスターという曲線の美しいギターを更に歪めて曲線を強調し、 弦やピックアップ部分の陰影など、コントラストを強くして格好良いジャケットになっている。 裏ジャケットにはクライベイビーのワウワウ・ペダルの写真をやはり歪んだ加工を施して面白い仕上がり。 CD中ジャケにはテレキャスターと思われる写真も使われている。 サウンドはラウド、ハード、ポップ&パンキッシュな仕上がり。中には「Back To Detroit」というスローでメランコリックな曲もあり。 タイトルトラックではテレンス・トレント・ダービーがコーラスで参加、The Deviantsのミック・ファレンが数曲で歌詞を提供している。

CAPTAIN BEEFHEART & HIS MAGIC BAND『TROUT MASK REPLICA』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.5 1969年発表のアルバムで28曲入り、オリジナル・アナログは2枚組だった。 赤~ピンクのグラデーションをバックに、帽子を被った魚の頭部になったビーフハート。 ジャケットデザインをしたCal Schenkelによれば、本物の魚の頭部を買ってきて被ったそうだ。 でも見た目は“ます(トラウト)”じゃなくて“コイ”みたいだが。 帽子の上にはバトミントンのシャトルのような物がくっついている。 “パー”をだした右手は“聴こえるかー”というジェスチャーのようだ。 内容は数々の伝説に満ちているが、周到な準備をし瞬間的に録音を終え完成させた、奇妙で精巧に構築されたアヴァンギャルド。 時にザックリ、時に微妙なズレが気持ちいいギターがパンク・ニューウェーブ以降に受け入れられたのには納得。 地引雄一著「ストリート・キングダム」の裏表紙写真で、魚の被り物に杖を持ったシュルツ・ハルナは、 このアルバムジャケットにインスパイアされたのだろうか。

FAUST『FAUST』

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 壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.4 ドイツのバンド・ファウストの1971年発表のファースト・アルバム。グループ名の“拳”そのまま、レントゲン写真の拳がデザインされたジャケット。 オリジナルLPはクリアーなレコード盤(レーベルは金属箔押し)と透明なビニールに赤文字印刷した歌詞カードを 透明なジャケットに入れるという“透ける”にこだわった作りだった。 自宅の壁に飾りたいが、私が興味を持ち始めたときには、オリジナルはレコード屋のレジの後ろの壁に飾られていたのを思い出す。 サウンド・コラージュを多用し、様々な約束事から解放された実験的な内容は聴き手のイマジネーションを刺激する。 2003年にオリジナル・アートワークを再現したCDが発売された(CDは透明に出来ないが)。 右上のジャケ写は1991年にCD化された時のものでプラケースにバンド名と拳が印刷され、白いジャケットに赤文字印刷された仕様。

JIMI HENDRIX『BAND OF GYPSYS』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.3 ジミ・ヘンドリクス1970年発表のライブ・アルバム。トタン板(?)の壁の前に立つパペットはジミの他、ボブ・ディラン、ブライアン・ジョーンズ、ジョン・ピールといわれている。 以前の契約を解消する為にライブ録音が行われ、ジミ本人は満足出来る演奏、仕上がりではなく、この英国初回プレス用のパペット・ジャケットも 嫌がっており、リリースにも不本意だったようだ。内容に全然関係の無い人物の人形が3体もくっついていては、確かにあまりいい気はしないだろう。 トタン板のブルーの前に、画面中央より少し右に人形を集めて上から写したジャケットはユーモラスであり、ファンキーで渋い内容とは かけ離れた印象を与えるが、その後変更された(というか米国盤仕様)ジミのうつむき加減にギターを弾く、暗いトーンのジャケットよりは優れたデザインだと思う。   内容は1999年に「ライブ・アット・フィルモア・イースト」という2枚組CDとして大幅に追加・改訂され、まったく違う印象のものになった。 

13TH FLOOR ELEVATORS『THE PSYCHEDELIC SOUND OF 13TH FLOOR ELEVATORS』

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 壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.2 壁飾ジャケの2回目は13フロア・エレヴェイターズ、1966年発表のファースト・アルバム。 サイケ&ガレージなサウンドを包むのは、グレーンとレッドの強烈な色彩の中からこちらを見つめる瞳と、 アイシャドウのように目を縁取るグループ名のサイケデリックな文字、が描かれた眩暈のするようなジャケット。 光の洪水のようなこのジャケットをじっと見ていると、 青い縁取りの黒い瞳になぜかパワーを感じるのは、瞳の中にグリーンのピラミッド(状のハイライト)が描かれているせいか。右上のジャケ写は2005年にCharlyからリイシューされたデジパックCD。 ヒットした「You're Gonna Miss Me」、テレビジョンが取り上げていた「Fire Engine」を含むこのアルバムは、 鳴り止まぬエレクトリック・ジャグがサイケ感を増し、時として粗暴、時としてピュアなロッキー・エリクソンのボーカルと、 よく響くギターが精神に切り込んでくる。 瞳の中に浮かぶもうひとつの目は、13フロア・エレヴェイターズの世界を覗き込んだ私たちの目が映っているのかも。

THE VELVET UNDERGROUND & NICO『THE VELVET UNDERGROUND & NICO』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.1 連続企画、部屋の壁に飾ってみたいレコード・ジャケット、ということで、 やはりこれは外せないという、1967年3月に発表されたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのファースト・アルバム。 実際飾ってたし。おかげで白いジャケは少し日焼けしてしまった(パネル枠部分は真っ白のまま)。 アンディ・ウォーホルのペインティングによるバナナをデザインしたジャケットはシールになっていて、 剥がすとピンク色の中身が現れる(剥がしたことはないけど)。 私が持っている1996年にリリースされたリマスター盤CDではトレイの下の部分に皮を剥かれたバナナを見ることが出来る。 シンプルな完成されたジャケットという評価があるが、ピンク色のバナナの中身は見ていると心もとない。 シールとしているからには剥がすことを前提としているのだろうか。 リスナーがバナナの皮を剥くことによって完成されるものであったのか。 ピンク色のバナナが本来のジャケットであると考えていたのだろうか。 剥がしたいという欲望のままバナナの皮を剥くのか、中身を見たいという欲求を押さえ、完成されたデザインの黄色いバナナの皮を見て耐えるのか。 まるで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドがこのファーストアルバムの中で歌い、演奏した数々の矛盾のようだ。

SWAMP CHILDREN「SAMBA ZIPPY」

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1989年7月発表、KALIMAのベスト・アルバム『Flyaway』より。 パンク・ロック以降、80年代の初め頃から形作られていったイギリスのニュージャズ(ブリティッシュ・ジャズ)・シーンは、 やがてエブリシング・バット・ザ・ガール、シャーデーなどを輩出しヒットを生み出すが、 マンチェスターのファクトリー・レーベルにはスワンプ・チルドレンというバンドが ラテンやボサノヴァ、ジャズを取り入れたサウンドを作っていた。 スワンプ・チルドレンはやがてKALIMAと名前を変えて活動を続け、 このベスト・アルバムは「Samba Zippy」を収録した1982年のスワンプ・チルドレンのアルバム『So Hot』 から1987年のKALIMAのシングル「Weird Feelings」までの間よりセレクトされている。 ジャジーなAnn Quigleyのボーカル曲も魅力的だが、 アルバムの1曲目「Samba Zippy」はパーカッシブなサンバのリズム、跳ねて動き回るベースフレーズに アコースティック・ギターとフルートが重なるニューウェイブ・ジャズとも言えそうなインストゥルメンタル曲で、個人的にはサイケな印象。 調べてみるとスワンプ・チルドレンのアルバム『So Hot』はシングル曲を加え、2004年LTMよりCD化再発されていた。 これは聴いてみないと。

PANTA「氷川丸」

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2005年5月発表のライブ・アルバム『2002 Naked Tour Live at The Doors』より。 2001年の初め頃から歌われていた曲だが、このライブ盤が(待望の)初出となった。 氷川丸は現在、横浜港山下公園に係留され観光スポットとなっているが、1930年に建造された貨客船で、 太平洋戦争が始まってから傷病者を運ぶ病院船として海軍に徴用された。 白く塗られた船体、赤十字の印し、それを照らすライト。あふれる負傷者、病人。あわただしく動き回る軍医、看護人達。休む間もない手当て、手術。 手当ての甲斐なく亡くなった者を弔うために歌われる「海ゆかば」。戦時下で保護された病院船とはいえ常につきまとう危険。 そして、なにもかもを包む、おだやかな深い海。 そんな光景が浮かぶ歌詞に少しのユーモアを加え、速い2拍子にのせて歌われる。 これだけ強烈にイメージを喚起させる歌詞は久しぶりだ。 ギターのストロークが船のスピードを感じさせ、躍動的とも思えるが、ヴァイオリンとピアノの旋律が絡み合う悲しくも美しいアレンジ。 今も海が見つめているのは、繰り返される未来と追加されるだけの過去なのか。 

POTSHOT「可愛いアノ娘」

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2001年1月発表のマキシ・シングル「In My Heart / 可愛いアノ娘」より。 そのまんまロッカーズの1stアルバム『WHO TH eROCKERS』を模したジャケットでのリリースに並々ならぬリスペクトを感じるが、 スタジオバージョンがリリースされていないロッカーズの名曲「可愛いアノ娘」を取り上げるところが素晴らしい。 もともとThe Whoバージョンの「Summertime Blues」なアレンジだったが、そのあたりをホーンが担当。 歌メロをなぞるバッキング・ギターが強調され、軽やかなドラムでハッピーな仕上がり。 Potshotは80年代の日本ロック・カバーをシングルで取り上げたり、トリビュート盤に参加したりして親近感があったのだが (ボーカルのRyojiは映画『ロッカーズ』のサントラでロッカーズの「ロックンロール・レコード」も歌っている)、 2005年夏で解散すると発表した。リスペクタブル・ルースターズに参加していたバンドが少なくなっていくなぁ...。

PEALOUT「CIRCLE OF THE METALIC SEASON」

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1996年8月発表のマキシ・シングル「Let Me Sink In The Deep Reddish Sky」より。 95年11月にリリースされたPealoutの1stシングル(7インチ)のCD化の際に録音され追加収録された。イントロのピアノ(ちょっぴりクイーンの「手をとりあって」を思わせる)、 続くアコースティック・ギターのストローク、歌が始まりコーラスの後半でドラムのキックとベースが入ってくる導入部が美しい。 “僕達”が共に過ごした日々や季節を、感じた事や信じた事を確かめるように歌う歌詞(英語詞)が切なくても、  “僕達は進まなければ 二つの道が決して交わらなくても” という言葉を力強く感じ、個人的には強い結束の歌だな、とずっと思っていたのだが、 2005年7月でPealout解散というアナウンスに、それぞれの道がもはや同じ目的地ではない事を知った(別にバンドの歌じゃないかもしれないが...)。 MIDIから出た2ndアルバム『ONE』にもこの曲は収録されているが、CDシングルのバージョンの方が輝いていると思う。 あの最初のコーラスの後半で入るドラムのキックとベースが弱くて、美しく聴こえないっていうのが理由だけど。(2005.4.10)

REDRUM「SLEEP」

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2004年9月発表のミニ・アルバム『ANSWER SONGS』より。 キューブリックといえば、このバンドも「シャイニング」にちなんだバンド名。REDRUMの表記正しくは、Dの後のRが左右逆なんだけど。後ろから読むと...。 1999年にデビューCDがリリースされた時、ラジオで紹介されていたのを聞いて(確かメンバーがゲストだった)いいネーミングだなと思い、 ずーっと気にはなっていたのだが、音を聴いたのは、この7枚めのミニアルバムが初。 1曲目のビート全開ロックンロールナンバー「SLIDER」もいいけど、 デイヴィッド・リンチ/アンジェロ・バダラメンティのフローティング・ミュージックを感じさせる、4曲目の「SLEEP」が気持ちいい。 弦の響きのはっきりとしたギター・フレーズ、少し不安定なYUMIのボーカル、しっかりとしたドラミング、中盤でノイジーなギター爆発。 聴かせます。 ひとつ気になるのはベースのミックスが(アルバム全体で)少し引っ込み気味なところかな。 ジャケが『CMC』な気がするのは私がルースターズファンだからか?

スーパーミルク「ゴキブリ天国」

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2001年7月発表のアルバム『ライブ・エレキダンス 1979~1980』より。 70年代末関西パンク/ニューウェイブ・シーンの知られざるバンド、スーパーミルク。バンド名の由来はキューブリックの「時計仕掛けのオレンジ」でマルコム・マクドゥエルたちが飲んでいるドラッグ入りミルクの名前から、というのがイカす。 1979年~1983年までの活動期間にレコード・リリースはなく、ライブを集めたこのアルバムが初リリースとなった。 歌詞の掲載もなく、オーディエンス録音のために音質があまり良くないので、歌っている内容が聴き取り難いが “片手にニコチン、心はマシーン、唇にコーラ、背骨は湾曲” で始まる「ゴキブリ天国」が気に入っている。 シンセサイザーがピコピコというより、キュルキュルと鳴り響く中、 “つぶらな瞳を輝かせた30cmのゴキブリ”に支配された町で、 “せめて俺たちはくたばる時までエレキダンス”  とゴキブリの時代を歌ったスラップスティックでポップな曲。 当時スタジオ録音でシングル・リリースしていたら日本のパンク/ニューウェイブ史に残る名曲になっていただろう。

頭脳警察「見知らぬ友への反鎮魂歌」

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2004年10月発表のアルバム『music for 不連続線』より。 頭脳警察が演劇の音楽を手掛けている、というのはパンタ詩集「ナイフ」などを読んで知っていたが、その音に接する事は出来ないだろうと思っていた。 映画と違って演劇は手軽に繰り返し見られるメディアではないし、なにしろ70年代のことだ、演劇そのものをフィルムに記録するというのも難しいことだろう。 しかし、このCDは実際の公演で使用していた6mmのオープンリール・テープをマスターとして製作され、今我々の耳に届いた。 パンタの活動の中でも歴史的な記録であることは間違いない。 全20曲のなかでパンタがボーカルをとるのは5曲。 凶暴な「鴉の歌」や後にアルバム『歓喜の歌』に再録される「最終指令自爆せよ」もいいが、 「見知らぬ友への反鎮魂歌」のスローな曲にのった菅孝行の叙情的な歌詞が耳に残る。 このアルバムの歌詞は「最終指令~」など3曲を除き全て劇団・不連続線主宰の菅孝行だが、 革命の演劇を目指していた不連続線の志と、 パンタが常に持っている‘世界は未だ闇に包まれている’というイメージはこの歌の中で共鳴している。 “見知らぬ友よ まだ世界は夜だ   たとえ殺したおまえと殺されたおまえが手をとりあっても   冷えた心に炎は還らない” というフレーズが秀逸。

RIDE『TODAY FOREVER』

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1991年発表のシングル。 ロックに痺れるのは音だけじゃなくてジャケットも、というわけで今回は気に入りジャケを紹介。90年代に活躍したライドが1991年に発表したシングル。 動物系のジャケはいろいろあるけど、ホオジロザメの美しい写真を使ったこの4曲入りシングルはいいですね。水の揺らぎ、サメの開かれた口から流れ出る水、白い歯、静かな目に魅入られます。12インチなら迫力増してなお良し。 ちなみに裏ジャケはサメなら一度に沢山食べられそうな稚魚の群れです。あ、サウンドももちろんいい。繊細で獰猛なUKロック。

FUN BOY THREE「LIFE IN GENERAL(LEWE IN ALGEMEEN)」

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1982年3月発表のアルバム『Fun Boy Three』より。 Fun Boy Threeは1981年にスペシャルズを脱退したテリー・ホール、ネヴィル・ステイブルズ、リンヴァル・ゴールディングの3人が結成。アフリカンなリズムを大胆に導入した音楽性がユニークだった。 このファースト・アルバムにも収録されているアラビアンなデビューシングルやバナナラマ協力のセカンドシングルもいいが(共に英国でヒット)、低音響くアフリカン・ビートと様々なパーカッション、中盤のラップが気持ちいい「ライフ・イン・ジェネラル」を大音量で聴きたい。 UK New Wave Renaissance 2004の企画で2004年4月に日本初CD化。

THE GO-BETWEENS「STREET OF YOUR TOWN」

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1988年8月発表のアルバム『16 Lovers Lane』より。 The Go-Betweensは1978年にオーストラリアで結成、後にイギリスに活動を移しニューウェイブ、ネオアコースティックの流れの中で活躍した。この曲は彼らの6枚目のアルバムにしてラストアルバム収録曲で、シングルカットもされている。ギターのストローク、カウントからベースが入り、 "Round and round, Up and down, Throuh the streets of your town" と歌われる軽快で、乾いていて、可愛らしくて、どことなく儚げなポップソング。アマンダ・ブラウンの甘いコーラス。ベーシストのジョン・ウィルスティードが弾いているというギターソロも乾いた味でいい。 春や秋のよく晴れた休日に聴きたくなる曲。

THE GROOVERS「情炎」

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2003年2月発表のアルバム『SETZNA』より。 藤井一彦の作る歌詩は、アルバム・リリースを重ねる毎に鋭さ、表現の豊かさが増しているが、この「情炎」には凄いなと思わされた。 “命綱のロープの結び目のようなふたり” 固く結びついているふたりを、こう表現できるなんて。 必死に共に生きてきた古風(“作者の名も知られぬ、古い絵のよう”)なふたりが、辿り着いたどこかの静かな目的地で、お互いの内なる情炎に気付く...。 それは「固く結びついている」ふたりにとって“小さくても致命的なほころび”なのか。アコースティック・ギターのイントロから始まり、激しいギターサウンドに変わるミディアム・バラード。

THE ROOSTERS 『CMC』

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1983年7月1日、Shan-Shanからリリースの12インチ・シングル。  SIDE A : 1. CMC(作詩/大江慎也 作曲/ザ・ルースターズ) シドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ主演の映画『未知への飛行』に影響を受け作られたと言われている曲で、 サマービーチを突然襲う爆撃の様子が歌われている。 『未知への飛行』は、ユージン・バーディックとハーヴィー・ウィーラーによって書かれた小説『未確認原爆投下指令』(原題:『Fail Safe』) を原作とした映画で、冷戦下のソ連に誤って侵入したアメリカの核戦略爆撃機を呼び戻す努力と、 これが故意ではないとソ連の首相を説得するアメリカ大統領や戦略空軍司令部の緊迫したやり取り、徐々に近づく核戦争の恐怖を描いた。爆撃機の積んでいるのは20メガトンの核爆弾。これをモスクワに投下する事態になれば、 米ソ間の全面核戦争になり、世界の終末が訪れることになる。そして、アメリカ大統領の下した命令は...。 もともとは「サマー・サマー・サマー(巡航ミサイル・キャリア)」という題名だったが、 リリース時にはCruising Missile Carrierの頭文字をとったタイトルに改められた。 “バカンスを楽しむ人々は~”の部分を除けばスリーコードで作られたルースターズ型のロックンロール・ナンバーで、そのビート感は群を抜く。 イントロのギターで警報が鳴り響き、フィード・バックが爆撃機の飛来を告げる。 その前のめりに突き進む演奏は“磯ガニ”が登場する少しユーモラスな歌詩、ポップな井上のベースラインとマッチして緊張感を生み出す。 “Summer Day, Summer Beach, Summer Sun”の部分のドラミングは、The Clashの「Tommy Gun」を彷彿とさせるフレーズだ。 2. カレドニア(作詩/大江慎也 作曲/ザ・ルースターズ) 抽象的なフレーズが並ぶ歌詩。“飛んでゆく、棒一本持って”、“旋風をたてて”、“水しぶきをあげて”、“In To Deep Blue Sea” などのフレーズからは前の曲のようなミサイルや潜水艦などが頭に浮かぶ。 スカルノ峰やウギンバはインドネシアの地名、ナッソウはババマの首都。 井上の低くうねるベース・ラインが印象的だが、 このベースを前面に出して(ドラムやギターは抑えられた)Rem...

THE ROOSTERS 『ニュールンベルグでささやいて』

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1982年11月21日、Shan-Shanよりリリースの12インチ・シングル。 たった1日で音録り、ミックスダウンまで全てを終らせるという予定で行われた1982年9月末のレコーディング。 ファースト・テイク重視という思い切りの良さで、いままでライブで練り上げてきたアレンジ、フレーズを盤に刻み込む。 少し前、7月4日に行われた東京千代田公会堂のワンマン・コンサート”Let's Rock”では、 既にこのセッションから5曲が演奏されていた。 このコンサートの為に5月末から週10時間のリハーサルを続けられていたというし、録音の数カ月前からライブのセットに組み込んできていたので、 新曲を短時間でしかも曲の持つ最良の部分を引き出して録音することにはかなり自信があったのだろう。 機材的にもワンギター、ワンアンプで、大江はフェンダー・リードII+VOXアンプ、花田はフェンダー・ストラト+HIWATTアンプ、 井上はフェンダー・ジャズベース+ACOUSTICアンプの組み合わせのみ。池畑はドラムセットにゴング・バスを加えている。 実際には大江が体調不良のためレコーディングは中断となり、10月に入ってダビング、ボーカル・トラックの録音とミックスダウンが行われ、 計4日間をかけた。このレコーディング・セッションで録音された曲は、 "ニュールンベルグでささやいて" "撃沈魚雷" "バリウム・ピルス" "ロージー" "サマー、サマー、サマー"(巡航ミサイル・キャリア=C.M.C) "ニュー・カレドニア" "ゴミ" "ゴー・ファック" の8曲。 "ニュールンベルグ"から"ロージー"までの4曲が、45回転30cmミニ・アルバム『ニュールンベルグでささやいて』として1982年11月21日に日本コロムビアのShan-Shanレーベルからリリースされた。 SIDE A : 1. ニュールンベルグでささやいて(作詩/大江慎也・中原聡子 作曲/ザ・ルースターズ) 13歳で麻薬中毒、薬を買う金に困り14歳で娼婦となったベルリンの少女Christiane F.の記録 『かなしみのクリスチアーネ・われら動物...

1984『BIRTH OF GEL』

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1985 年 3 月にルースターズを脱退してからおよそ 1 年後、 新宿ロフトの 1984 のステージで歌詩を書いた紙を見ながら「 I'm Waiting For The Man 」 を歌う大江慎也がいた。 ルースターズの別ユニットとして始まった1984は、ルースターズからの池畑、井上、安藤、大江の脱退に伴って やがてプロデューサー・柏木省三のバンドへと変わっていった。メンバーも84年以降ルースターズに在籍していたベースの柞山一彦のほか、ルースターズのジャケット・コンセプト等ビジュアル面で関わっていた鏑木朋音をキーボードに、 ギターは当時Sence of Viewというバンドにも在籍していた富永保というラインナップ。 このメンバーにデイト・オブ・バースを迎え、 ゲスト・ボーカリストとして大江慎也が参加して録音されたのが『Birth of Gel』だった。 先のロフトでの大江の飛び入り参加は、音楽活動再開にむけた一歩であり、このアルバムの参加から初のソロアルバム発表へ続く足がかりとなる。 大江はタイトル・トラックの「Birth of Gel」とドアーズのセカンドアルバムから「Strange Days」のカバーで ボーカルをとっている。「Birth of Gel」はつやつやした演奏にのせて英語で歌われるポップな曲。 「Strange Days」はほぼ原曲に忠実なアレンジ。 この他、US初期パンクのリチャード・ヘル「The Hunter Was Drowned」は原曲のサックスに変わりキーボードをフューチャー、 、モダン・ラヴァースの「Pablo Picasso」はつこっみ気味の柏木のボーカルもあわせてかっこ良く仕上がっている。 カセットや『逆噴射家族』のサウンドトラック・アルバムにも収録されていた「Space 1999」は、 オーケストラ・ヒットやアコースティック・ギターのソロを入れてアレンジしているが、だんだん悪くなっている気がする。 日本的な印象の「春霞」、「Sorrow」という曲名は『爆裂都市』のサントラにも入っていたが違う曲で、 曲調は『逆噴射家族』の雰囲気に近い。作曲の“Jun”というクレジットは下山のことか。1984初期のパーカシッブな特徴はなくなり、「Bad Dreams」 といった曲ではトム・ヴァーレインのような引き攣ったギターが目立つようになっ...