ARB Hisashi Shirahama Years 1986-1990 Vol.2『ROCK OVER JAPAN』
1987年6月21日、ビクター/invitationよりリリース、白浜久参加後2枚目のアルバムで前作から7ヶ月という短いスパンで制作、リリースされた。発売当時私の知り合いの車に乗ると必ずこのアルバムを録音したカセットがかかっていたので、まるごと覚えるほど聴いたな。
白浜久のブログによれば『ROCK OVER JAPAN』は白浜と石橋凌が膝を突き合わせて曲もアルバムも作った、このアルバムは誇りだし、石橋凌がフェイバリットボーカリストなのはずっと変わらない、と書かれていた。デジタルサウンドへの移行とともに曲調もポップになったARBの“愛と平和と革命”の一枚。
オープニングのタイトルトラック、“ロックで日本中塗りつぶせ!”という「Rock Over Japan」は疾走感のあるロックンロール賛歌。続いてデジタルビートにのせて“時代は変わる!”と高らかに宣言するカラフルなアレンジの「Happiness」、俺は占い師でストリートの証人、“早く目を覚ませ!”と歌うファンキーなテイストの「Hurry Up」、「Angel」は渡辺等のチェロを加えてソウルフルにしっとりと進むが、ドラムロールとともに“お前はソルジャー…”とやはりARB的に現代社会で生きる人々を歌う。「Angel」の歌詞は100%石橋凌と白浜はブログに記している。ここまでがアナログのA面。
タックスマンを思わせるややコミカルな内容の「Automatic Man Goes」では“GNPは飛ぶ鳥を落とし”という歌詞がバブル景気の当時を思わせる。"若者(れんちゅう)が権力に石を投げ”ていた60年代、そして“微笑みの80年”代を取り上げ平和と愛をポップに歌う「Peace & Love」は石橋凌と白浜久のツインヴォーカルも魅力。シンデレラのガラスの靴を効果的に使用した歌詞で、魔法や運命を信じず、裸足のままで俺と踊ろうと歌う「Dreaming Baby」は特に好きな曲。クレジットはないが白浜がトランペットを吹いており、こちらはクレジットされているが野島健太郎がピアノで参加している。白浜時代の“魂こがして”と個人的には思っていた「Owe My Own」。白浜によれば“花園から外へ出るのは辛いけど一歩前に踏み出してみよう”という内容の、性急なビートが、もがき続ける人生を思わせる曲。
“孤独の日々の中で 胸を躍らせた
いくつもの出会いに 裏切られて
娼婦のように 山師のように
何ひとつ救われず 生きろというのか
OWE MY OWN 花園に背を向けて
OWE MY OWN 前に倒れてくちはてるまで”
「Owe My Own」Lyrics by Ryo & Hisashi
ラストは「Say! No!!」で、ノーと言え!断れ!拒否しろ!と煽り続け、そして、革命だ!とさらに煽るデジタル感満載のアップテンポな曲。
石橋凌によるとこのアルバムは“(自信のある)ライヴに来たことのない人にも届く・伝わるようなクオリティーのサウンドを作りたい、作品のクオリティだけを追求して作った”と語っている。その結果『ROCK OVER JAPAN』はARBがこれまでリリースしたアルバム中最高位のオリコン25位を記録した。しかしキースにとっては“デジタルドラムを使用したレコーディングは一番辛いものだった”という。ジャケット・アートのディレクションはこれまでもARBのジャケットを多く手掛けていた大野拓家。ARBのアルバムで最も彩りがあるユニークなジャケットは、ダイカットされた丸(日本)の中で柔らかな肉体性と素のままの精神性を持ち、今後のバンド成長の可能性を示していたようにも思える。
先行して1987年5月21日にはシングル「Happiness c/w Say !No!!」がリリースされている。両面ともシングルヴァージョンの表記がある。「Happiness」はアルバムヴァージョンでは曲の後半にアウトロがあるのに対してシングルヴァージョンはフェイドアウトで終了し40秒ほど短い。「Happiness」はPVも作られた。
参照文献:石橋凌監修『表現者 石橋凌』(キネマ旬報社・1999年)、『1979-1989 オリコン・チャートブック LP編』(オリジナル・コンフィデンス刊・1990年)
