NINA SIMONE「Don't Let Me Be Misunderstood」

少し前に「The House of The Rising Sun」の日本語詞について書いたけど、「Don't Let Me Be Misunderstood」もアニマルズで有名な曲。アニマルズが1965年にシングルリリースし英米でヒット、日本でも尾藤イサオが1965年にシングル「悲しき願い」として日本語カヴァーしヒットした。私は尾藤イサオでこの曲を初めて聴いて、次にアニマルズのヴァージョン、その後1970年代後半にサンタ・エスメラルダのヴァージョンを聴いたと思う。ディスコ・アレンジのサンタ・エスメラルダ版がリアルタイムだったな。

尾藤イサオのしゃがれた声で“ベイビー 俺の負けだ あきらめよう”で始まり、サビでは”誰のせいでもありゃしない みんなおいらが悪いのか”と歌われる日本語カヴァーは強烈に耳に残ったし今も刷り込まれて残っている。あの“タッタラ  タッタラタ〜 タラタッタターラ〜”というこれまた耳に残るイントロのフレーズとともに。ただ60年代の邦題によくある“悲しき〜”(街角とか雨音とか)がついている「悲しき願い」と原題「Don't Let Me Be Misunderstood」の曲名が違うので歌の内容も違うんじゃないか、と思っていた。

アニマルズの「Don't Let Me Be Misunderstood」がニーナ・シモンのカヴァーだったと知ったのは随分たってから。ニーナ・シモンがフィリップスから1964年にリリースしたアルバム『ブロードウェイ・ブルース・バラッズ』に収録されていた。まるでオルゴールのようなハープの音色が印象的なイントロに続いて、ちょっとした諍いから愛する人を傷つけてしまった後悔、自分の心の弱さ、相手に与えてしまった誤解を解きたいという思いを震える声で訴えかけるように歌うニーナ。ドラム、ウッドベース、ギター、ストリングス、ゴスペルタッチのコーラスを加えたシンプルなアレンジ。あの“タッタラ  タッタラタ〜”のフレーズの無いのがとても新鮮だった。

”ねぇあなた 今は分かってくれるよね
 もし ときどき私が怒りっぽく見えたら
 誰もがいつでも天使じゃいられないってこと 分かってほしいの
 なにもかもうまくいかなくなると 私の悪いところが顔を出してしまう

 私の心に悪気はないのよ
 あぁ、どうか私を誤解しないで

 ときどき私は何の心配もなく無邪気で
 喜びを隠しておけないほどだって 知ってるでしょう?
 だけど 心配ばかりしてしまう時もある
 そんな時 あなたは私の別の面を見ることになるわ

 私の心は良いことをしようと思っているだけ
 あぁ、どうか私を誤解しないで

 もし私がとげとげしく見えても 
 あなたにあたるつもりはないんだって分かってほしい
 人生には問題がつきもの 私だってたくさん抱えているけど
 それだけはしたくないの だってあなたを愛しているから

 ねぇ…ねぇあなた 私だって人間なのよ 分かるでしょう?
 みんなと同じように欠点がある
 ときどき 自分がしてきた少し馬鹿げた事や些細な事を後悔して
 気がつくと ひとりぼっちなの

 私の心に悪気はないの
 あぁ、どうか私を誤解しないで

 どうか私を誤解しないで
 私なりに精一杯やっているのよ だからお願い
 どうか私を誤解しないで
 違うの 違うの 違うの…”
「Don't Let Me Be Misunderstood」written by Bennie Benjamin , Sol Marcus , Gloria Caldwell 

エンディングにあの“タッタラ  タッタラタ〜”に近いフレーズがストリングスで奏でられる。これをアニマルズはアレンジして全篇に採用したのだろう。ニーナ・シモンのヴァージョンにはラストに“I try so hard, so please”という一節がある。右上の画像は1993年にリイシューされたCD(Verve/PolyGram 314 518 190-2)で、シングルリリースされた「Don't Let Me Be Misunderstood」のB面曲だったポップな「A Monster」がボーナストラックとして収録されている。

エルビス・コステロがザ・コステロ・ショウ名義で1986年にリリースしたアルバム『キング・オブ・アメリカ』に「Don't Let Me Be Misunderstood」のカヴァーが収録されており、シングルカットもされている。コステロ・ヴァージョンはアニマルズ・ヴァージョンを下敷きにしており、コステロのしゃがれた声とウッドベースの低音を生かしたアレンジが魅力。“Oh Lord, Please don't let me〜”の部分に車かバイクのアクセルを吹かすようなサウンドが挿入されていて不安を煽る仕上がり。このアルバム、リリース当時は賛否両論の評価だったと思う。私も発売後すぐ友人に借りて聴いたけど、アコースティックなテイストのフォークやR&R、カントリー、R&B、ロカビリーなサウンドは、コステロ初期のポップでパンキーな印象と違って地味でとっつきにくい感じをうけたな。近年というか後々このアルバムは好評価となっているようで、私にとっても印象変わってバラエティ感もある聴きやすい好アルバムになった。

下の画像は1995年にDemon RecordsよりリイシューされたCDで、カワード・ブラザース名義のシングル曲を含むボーナストラック5曲を収録、エルヴィス・コステロ&ザ・コンフェデレイツの1986年ライヴ(6曲)がボーナスディスクとして付属していた。
THE COSTELLO SHOW『KING OF AMERICA』(Demon Records DPAM11・1990年)
<Limited Edition with Free Live Bonus Disc>

サンタ・エスメラルダの「Don't Let Me Be Misunderstood」はクエンティン・タランティーノ監督の映画『キル・ビル VOL.1』(2003年)でユマ・サーマンとルーシー・リューの対決シーンで使用された。下の画像は「Don't Let Me Be Misunderstood」の10分を超えるヴァージョンを収録したサントラ盤。
ORIGINAL SOUNDTRACK『KILL BILL VOL.1』(ワーナーミュージックジャパン WPCR-11729・2003年)

愛する人を自分の未熟さから傷つけて(失って)しまう、分かってほしいという悲痛な願いを描いた原曲の歌詞は、尾藤イサオ「悲しき願い」の日本語詞との共通点はあるなと思ったし、恋人に限らず家族や友人、仕事関係など、人とのコミュニケーションにおいて悪気はなく良かれと思ったことが誤解されてちょっと気まずくなる、というのは現代でもよくあることで、普遍的な題材の歌だなと感じた。

このブログの人気の投稿

私の放浪音楽史 Vol.84 1984『逆噴射家族フィルムサウンドダイジェスト』

私の放浪音楽史 Vol.50 BRUCE SPRINGSTEEN『BORN TO RUN』

WILKO JOHNSON「WILKO JOHNSON SPECIAL PLAYING ANALYSIS」