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MUSIC MAGAZINE 増刊『パンタ/頭脳警察 反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』

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2024年1月17日、ミュージック・マガジンより刊行。 2023年7月に逝去したパンタの追悼本が刊行された。色々なところからパンタを追悼する書籍が刊行されるだろうと思っていたが、初めての追悼本だ。 パンタの音楽活動を1. 頭脳警察(1975年迄)、2. ソロとHAL(1989年のソロ迄)、3. 再結成頭脳警察〜2024年最新作で遺作『東京オオカミ』迄、と3つの章に分け、ヒストリー記事、その時代に録音された音盤の紹介、ミュージックマガジン誌に掲載されたパンタの過去記事再掲が主な内容。 ヒストリーとディスク評は新規に書かれ、第2章には『PANTA & HAL BOX』(2004年リリース)のブックレットに掲載された志田歩のテキスト「ドキュメント PANTA & HALの時代」に、2018年のPANTA & HAL EXTENDEDライヴの内容をエピローグとして加筆し収録している(これPANTA & HALの活動を軸にしつつ、この時代の日本ロックシーンをも炙り出していく力作)。 第1章には、頭脳警察が楽曲提供し演奏で参加した1974年の舞台「ロック・サド・イン・ジャパン」に関する田山三樹の記事を掲載、提供曲紹介など初めて知る内容で非常に興味深い。 写真は全体的にやや少なめと思うけど、1stソロ・アルバム『PANTAX'S WORLD』ジャケット写真の別カットや『唇にスパーク』ジャケット写真の別カット(小さくモノクロだけど)もあり。 ディスコグラフィは充実しており、一部シングルと編集盤や発掘音源、ビデオ作品のジャケ写がモノクロになっている他は、紹介されている音盤のジャケ写はほぼカラーで掲載。パンタが他アーティストへ提供した楽曲紹介も充実、こちらも紹介されているジャケ写はカラーで掲載されている。 再掲の記事では、やはり平岡正明の「パンタ、もとにもどれ」だろう。スウィート路線のアルバム『KISS』(1981年リリース)に対し“性愛が足りない”、“性的ボルテージを充電しろ”、と自説を展開し、このアルバムの楽曲を“パンタがパンタになる以前の青春歌謡”、陳腐な“渚と風と太陽と恋という何万遍も使われたデテールをつかって”、“これまでのパンタらしい要素なしに、初恋の過去に溺れて見せること”が、パンタが『KISS』でやりたかったことなのだろう、と7ペ...

友部正人「DON'T THINK TWICE, IT'S ALRIGHT」

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友部正人がカヴァーしたボブ・ディランの曲というと、この曲「Don't Think Twice, It's Alright」(邦題:くよくよするなよ)が好き。1992年リリースの8cmCDシングル「Love Me Tender」(プレスリーのカヴァー)のカップリング曲。ディランのアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』収録曲の友部正人による日本語詞カヴァー。 友部正人は女性から別れた男に向けた歌詞にしているが、意訳ではあるものの原曲の持つメッセージやイメージをほぼ忠実に再現していると思う。歌詞には、幾つかの別れの理由が挙げられているが、“でも、もうあんまりくよくよしないでね”と優しい言葉をかける、切ないながらも少しほのぼのした雰囲気を併せ持つ非常に優れたディラン曲の日本語カヴァーだ。 演奏は友部の歌にギターとハーモニカ、仲井戸麗市のギターとマンドリンによるカントリー・フレーヴァーなアレンジ。 このCDシングルは「Love Me Tender」、「Don't Think Twice, It's Alright」、「Jersey Girl」の3曲の日本語詞カヴァーが収録されていて、3曲目のトム・ウェイツのカヴァーもいい。

THE GROOVERS「LIKE A ROLLING STONE」

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ボブ・ディランの曲をカヴァーしている日本人アーティストでお気に入りというと、ザ・グルーヴァーズが1992年にリリースした自主制作のCDシングル「メロディ」のカップリングだった「ライク・ア・ローリング・ストーン」かな。 1989年アルバム『マキシマム・キス』でデビューし四人で活動していたザ・グルーヴァーズがヴォーカリスト西村茂樹の脱退でトリオとなり、ギタリストだった藤井一彦がヴォーカリストも兼ねるようになって発表した初めての音源でもある。グルーヴァーズはこの後、ロックンロール/ブルース色を強め、よりソリッドになりその魅力を増していく。 ザ・グルーヴァーズの「ライク・ア・ローリング・ストーン」は、友部正人による日本語歌詞で歌われる、じっくりスローに、モンタレーでのジミ・ヘンドリックス&エクスペリエンスの演奏を彷彿とさせる8分越えのエモーショナルなカヴァーだ。難解だと言われるディランの歌詞が、友部正人の日本語詞で歌われメロディと一体となって届く。  “どんな気分だい どんな気分だい  宿無しになるって ひとりぼっちになるって  Like A Rolling Stone” このCDシングル、8cmCDシングルが黒いブラスチック盤に嵌め込まれて、7インチサイズのジャケットに封入されている。もちろん聴く時には外周のプラスチックを外す。 裏ジャケットにはLimited Edition, 1,000 copiesと印刷されており、この盤は452のスタンプが押してある。収録曲は「メロディ」、「現在地」、「Like A Rolling Stone」の3曲。 「ライク・ア・ローリング・ストーン」は、1999年にリリースされたベスト・アルバム『ヴェリー・ベスト・オブ・グルーヴァーズ』の初回ボーナス・ライヴCDで1998年11月11日・新宿ロフトのライヴ・ヴァージョンを聴くことができる。

MY PLAYLIST Vol.8『FAVORITE COVERS OF BOB DYLAN SONGS』

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ボブ・ディランのカヴァーでマイ・ベスト・トラックをCD1枚分集めたいと思って、最初につくったのは2000年代の初め頃かな、その時は日本のアーティストも入れて作ったのだが、そのうちサントラの『アイム・ノット・ゼア』やCD4枚組のカヴァーアルバム『チャイムス・オブ・フリーダム』がリリースされて、海外のアーティストで、なるべくスタジオ録音で、と変わっていった。 オープニングは、ジミ&エクスペリエンスの「見張り塔からずっと」で、やはりディラン・カヴァーの最高峰だろう。原曲のアコースティック・ギターのカッティングから発展させたようなイントロ。性急さを取り込みながらも腰のあるリズムに変換したミッチ・ミッチェルのドラム。原曲のコード進行は王道ともいえるが、ディランのヴォーカル・メロディにジミのギターが目眩く空間を作り出す、ロックでポップでサイケデリック、決して色褪せない至極の1曲だ。 それでラストはザ・ローリング・ストーンズ「ライク・ア・ローリング・ストーン」。高慢な金持ちが住所不定・路上生活者=ローリング・ストーンのようになるまで落ちぶれ、かつてあんたが蔑んでいた者たちと同じになって、どんな気分だ?と問いかける栄枯盛衰の歌。この初めと終わりの2曲は変わらず定位置にしている。 以下、私の選んだ『FAVORITE COVERS OF BOB DYLAN SONGS』  1.  All Along The Watchtower The Jimi Hendrix Experience  2. Ballad of A Thin Man  Kula Shaker  3. Crawl Out Your Window  Transvision Vamp  4. I Wanna Be Your Lover  Wilko Johnson  5. Going Going Gone Richard Hell & The Voidoids  6. Stuck Inside of Mobile With The Memphis Blues Again Cat Power  7. It's All Over Now, Baby Blue Hole  8. My Back Pages Ramones ...

フリクションのファースト・アルバム『軋轢』とライヴ3作品がアナログ再発!

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フリクションのファースト・アルバム『軋轢』、1979年のライヴを10インチ盤で自主制作した『’79 Live』、神奈川大学のライヴで1996年にCDでリリースされた『Live – Pass Tour ’80』、1984年ローマでのライヴ『Live at “Ex Mattatoio” in Roma』が P-VINEからアナログ・リイシュー される。リリースは2024年5月〜6月でタイトルによりリリース日が違う。 10インチの『’79 Live』のアナログ・リイシューは初めて。これは!買うかな!と思ったけど、音源は?オリジナルなのか?それとも2005年に黒ジャケでCD再発された時の別音源? 探してみると、 レコードショップBASEのインフォメーション では、 “※ジャケットはオリジナルのデザイン、10インチという形態ですが、音源は2005年にリリースされたCD音源(同ライブの別録り音源)のアナログ化となります” ということだ。うーむ、オリジナルじゃないのかー。 右上の画像は『軋轢』の裏ジャケ。

パンタ/頭脳警察の歩みを振り返る MUSIC MAGAZINE増刊 発売

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今年7月7日に亡くなったパンタの、頭脳警察・ソロ・HALなど活動の歩みを振り返る、ミュージックマガジンの増刊が発売される。内容は新規の記事とこれまでミュージックマガジン誌に掲載されていたパンタのインタビュー、対談等の再録になるようだ。 タイトルは『パンタ/頭脳警察―反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』で、発売日は2024年1月17日。 PANTA・頭脳警察オフィシャルHPのインフォメーション。 右の画像は増刊号に収録されると思われる「パンタ×平岡正明−頭脳警察の復活をめぐって」掲載のMUSIC MAGAZINE 1990年12月号。この時の対談は2時間、速記原稿400字詰125枚分あったそうだから拡大版で掲載して欲しいものだ。

SHEENA & THE ROKKETS『1979 DEMO』

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2023年10月5日、ayu-Recordsよりリースの発掘音源。 鮎川誠の自宅から『6.19. '79 音羽スタヂオ WITH HARRY HOSONO』とタイトルの書かれたカセットテープが発見された。その内容は44年前、シーナ&ザ・ロケッツが2ndアルバム『真空パック』制作前に、プロデューサーの細野晴臣にレパートリーを披露したデモレコーディング。注目は「ユー・メイ・ドリーム」の原型「ユメ・ユメ・ユメ」で、2番の歌詞が違うし、鮎川が語っていた通りブリッジ部分なしの演奏が聴ける! その他にも「Batman Theme」、JBのカヴァー「I Got You」、「レイジークレイジーレギー」(レイジー・クレイジー・ブルースのレゲエアレンジ)、「もう一度 // おまえがほしい」(「オマエガホシイ」)、キンクスのカヴァー「You Really Got Me」、「センチメンタル・フール」と『真空パック』収録にされる7曲のデモ演奏が聴ける。 収録曲は下記 1. BATMAN THEME 2. ビールスカプセル 3. I GOT YOU 4. ユメ・ユメ・ユメ 5. レイジークレイジーレギー 6. レモンティー 7. 涙のハイウェイ 8. もう一度 // おまえがほしい 9. セッション1 10. ワンナイト・スタンド 11. ワンナイト・スタンド 12. YOU REALLY GOT ME 13. センチメンタル・フール 14. レイジーレギー 15. ハイウェイ 16. ハイウェイ 17. セッション2 18. セッション3 19. ビールスカプセル 20. ラグドール 21. I GOT YOU Track 2(19)、6、7(15,16)、20がファースト『#1』収録曲、15はパーツ。 Track 10(11)は制作途中のパーツといった感じ。次の3rdアルバム『チャンネル・グー』に収録される曲。 シーナ&ザ・ロケッツ・オフシャルショップで『1979 DEMO』を購入すると「月刊鮎川誠Vol.4」が付属していたが、現在は配布終了している。 鮎川誠は生前、こうした発掘音源のリリースを計画していたようで、今回のリリースも「鮎川誠の秘蔵原盤シリーズVol.1」とあるように、今後未発表音源のリリースを予定しているようだ。『 Rooftop 』オンラインのLucy Mirror...

THE BEALTES「NOW AND THEN」

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ザ・ビートルズの新曲が発表される…1994年に始まったアンソロジー・プロジェクト時に完成できなかった曲を今の技術を駆使して完成させるものだ、というインフォメーション。どんな曲なんだろう…ジョン・レノンのデモを素材にポール、ジョージ、リンゴがアンソロジー・プロジェクトで完成させた新曲「Free As A Bird」と「Real Love」は、収録したアルバム『アンソロジー1』、『アンソロジー2』、シングルCDも買った。『アンソロジー3』に新曲は収録されなかった。たしか当時「Grow Old With Me」が3曲目の新曲と言われていたけどね…。 「Now And Then」もアンソロジー・プロジェクト時にポール達が取り組んだ曲のひとつだったが、ジョンのヴォーカルをうまく取り出す事ができないため、完成させることはなく、作業を途中で止めたものであるという。 「Free As A Bird」と「Real Love」のCDシングル持ってるからCDなら買ってもいいなと思っていたのだが、「Now And Then」は2023年11月2日配信に続いてアナログ7インチ、12インチ、カセットテープでリリースされ、当初CDシングルはラインナップに無かったよね?それにしてもネットショップで見る「Now And Then」のジャケット写真、これはなんだ?シンプルな曲タイトルのみのジャケット・デザイン。これはとりあえずの仮ジャケじゃないのか?しばらくしてCDリリースがアナウンスされたが、ビートルズのラスト・シングルがこのジャケか。購入意欲は薄れていく…。 リリース後しばらくしてジョージ・ハリスンの妻・オリビアが「Now And Then」の裏ジャケにに使用された手作りの時計についての 奇妙な記事 を読んだ。ふーむ…これは不思議なシンクロニシティだ。それに裏ジャケの方がいいじゃん。ビートルズのロゴも入ってるし。 ということで結局輸入盤のCDシングルを入手。まぁ味気ないつくり。表のジャケットはコンテンポラリー・アートのアーティスト、エド・ルシェのデザインということだ。そう思ってみると多少ありがたみはあるが…。やはりパソコンで聴くのとCDを家のオーディオ装置で再生するのとは音に違いがあるよなぁ。さすが最新テクノロジーを使って取り出したジョン・レノンのヴォーカルは、いかにもテープから取り出したって感じ...

NHK『トップランナー』選「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」

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逝去したチバユウスケを偲び、2023年12月13日(水)にNHK総合で午後11時50分〜『トップランナー』選「 THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 」が放送される。2003年オンエアされた番組のアンコール放送で、インタビュー、ライヴ映像を含む内容。

追悼・チバユウスケ

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2023年11月26日、チバユウスケ逝く。 ミッシェル・ガン・エレファントはファースト『カルト・グラス・スターズ』が出た頃に友人が「これかっこいいんだよー」と言って聴かせてくれた。ウィルコ・ジョンソンばりのギター・カッティング…これ今やるんだ…と思ったが、ジャケットに写る細身のスーツ姿、タイトな音像には惹かれるものがあった。自分で買って聴くようになったのはシングル「ゲット・アップ・ルーシー」、「バードメン」からかな。 1998年頃、私が推してたUKのバンド、60FT DOLLSをミッシェルが応援してるって雑誌『SNOOZER』で読んで、おおっ!となったり、雑誌『ROCKIN'ON JAPAN』のアーティストが日本のロック・アルバム3枚を選ぶ、特集「20世紀、日本、ロック」で、チバユウスケがルースターズの『ルースターズ』、『ルースターズ・ア・ゴーゴー』、『インセイン』の3枚を選んでるのを見て、うおぉ!となったり、『レコード・コレクターズ』のパブロック特集でフィールグッド、ビショップス、インメイツ、ルー・ルイス等からの影響を語りつつ自前の7インチをカラー写真で紹介するページもあったり、雑誌『ROCKS OFF』で「オレの100枚」を紹介したり、好みが共通しているってことは親近感持つよね。2022年9月にはチバユウスケが所有するアナログ盤をディスクガイド的に紹介した本『 EVE OF DESTRUCTION 』が出版されていた。これも良かったなぁ。スカパラやPEALOUTとの共演シングルも聴いた。 昼間の街は平らな庭で 夜になってから花が咲く 赤いサイレン ライトの群れ クラクションの中キスをした 俺たちに明日がないってこと はじめからそんなのわかってたよ この鳥達がどこから来て どこへ行くのかと同じさ エレクトリック・サーカス 燃え上がる空 澄みきった色の その先に散る Thee Michelle Gun Elephant 「Electric Circus」words by Yusuke Chiba 以下のフォトはALIVE RECORDS(US)『COLLECTION』(0043-2) ブックレットより RIP…

ザ・ルースターズ「PLAYLIST from ARTISTS」

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ルースターズの音源が配信されて日本コロムビアの特設サイトでは アーティストによるプレイリスト が公開されている。それぞれ10曲〜15曲を選曲。ウエノコウジ、OKAMOTO'Sのオカモトショウ、宮藤官九郎、Gyogun Rend'sのパッチ、Mo'some Tonebenderの百々和宏、ヤマジカズヒデ、ピロウズの山中さわお、PotshotのRyojiなど、各アーティストのコメントあり。「Desire」、「Heavy Wavy」、「Strange Life」、「 In And Out」、「Girl」とか各人ベスト・アルバム的ではないこだわりの選曲があるなー。矢井田瞳ってルースターズ聴くんだ…しかも「ゴミ」選んでるし。

OTOTOY「ザ・ルースターズ、全13作品118曲配信解禁!──配信実現の立役者が語る、“ロック”を次世代に繋ぐために」

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“読んで・聴いて・買えるミュージック・ストア”『 OTOTOY 』で「 ザ・ルースターズ、全13作品118曲配信解禁!──配信実現の立役者が語る、“ロック”を次世代に繋ぐために 」と題された記事が掲載されている。元日本コロムビア(1986年入社)で現在は株式会社Nicholson & Co.代表の渡辺佳紀が自身とルースターズとの関わり、今回の配信実現までの経緯を語っている。インタビュアーはフリーライターの岡本貴之。 ルースターズの音の変遷については今更な感じがするが、フジロック出演、ボックスセット『VIRUS SECURITY』リリースあたりの話は興味深い。今も“当時のプロデューサー”としか語られない柏木省三の影響についてもちらり。

THE DARLING BUDS『POP SAID...』

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1980年代後半、イギリスのミュージック・シーンで “ブロンド・ムーブメント” というのがあったという…。ザ・プリミティヴスとトランスヴィジョン・ヴァンプのファースト・アルバム・リリースは共に1988年、日本で洋楽を紹介する雑誌(『ロッキンオン』とか)でもこの2バンドはよく記事やピンナップが掲載されていたし、プリミティヴスのトレイシー嬢とトランスヴィジョン・ヴァンプのウェンディ嬢がお互いに罵り合っているという記事を何回か読んだ記憶がある。しかし当時 “ブロンド・ムーブメント” なる呼称を聞いたり読んだりした覚えはなかったと思う。ブロンド・ヘアーの女性ヴォーカリスト+楽器担当の野郎どもという見てくれでカテゴライズしたものらしい。先の2バンドの他にザ・ダーリン・バッズという3バンド目が存在していた。まぁ3バンドでもムーヴメントと言うには無理あると思うけど…。 ザ・ダーリン・バッズはギタリストのハーレー・ファーとヴォーカリストのアンドレア・ルイスが中心になり1986年、ウェールズ・ニューポートで結成。バンド名はシェイクスピアのソネットまたはH・E・ベイツの著作に由来すると思われる。バンドの自主制作シングル、インディのNative Recordsから2枚のシングルをリリースした後、メジャーのエピックと契約、1988年9月にシングル「Burst」、12月にシングル「Hit The Ground」、1989年1月にファースト・アルバム『ポップ・セイド…』をリリースした。 バンド結成時にはヴェルヴェット・アンダーグラウンドやクランプスのカヴァーも演奏していたということだが、このファースト・アルバムではノイジーな部分は抑えられ、ひたすらポップ!ブライト!メロディアス!&スピーディ!な仕上がり。アルバムのラスト「Things We Do For Love」ではボ・ビートも盛り込んでいる。 THE DARLING BUDS「Burst」 THE DARLING BUDS「Hit The Ground」 ダーリン・バッズのファースト・アルバムは日本盤リリースされなかったんだよな…。日本盤がリリースされたのはセカンド・アルバム『クラウダディ』(日本盤リリースは1991年2月)からで、ファースト同様ポップな曲もありつつ、ヴェルヴェッツ的な感触や当時のマッドチェスター、セカンド・サマー...

THE PRIMITIVES『LOVELY』

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ザ・プリミティヴスはギタリストのポール・コート、ベーシストのスティーヴ・デュラハン、ドラムのピート・トゥイーディー、ヴォーカルのキーロン・マクダーモットにより1985年、イギリス・コヴェントリーで結成。まもなくヴォーカルがトレイシー・キャッテルに交代、彼女はトレイシー・トレイシーというステージネームを使用した。バンドとマネージャーのウェイン・モリスが設立したLazy Recordsよりシングルをリリース、その後メジャーのRCAと契約し、ドラマーがティグ・ウィリアムスに交代、1988年にリリースしたのがファースト・アルバム『ラヴリー』だった。 ヴェルヴェッツからの影響を感じさせるラフなガレージ感に、ジャングリーなギターポップとパンクのスピードをあわせ持ったサウンド、それにモンローが革ジャンとエレクトリック・ギターを抱えたようなルックスのトレイシー嬢(1967年生まれ)も魅力的だった。ファースト・アルバムからの先行シングルで1988年2月にリリースされたシングル「Crash」は全英シングル・チャート5位のヒットとなり、アルバム『ラヴリー』も全英アルバム・チャート6位をマークした。 THE PRIMITIVES「Crash」 アルバムからのセカンド・シングル「Out of Reach」。トップ・オブ・ザ・ポップスでのパフォーマンス。 THE PRIMITIVES「Out of Reach」 プリミティヴスは、このファーストとセカンドの『ピュア』まで聴いたけど一度売っちゃってるんだよね…右上のジャケ写はチェリーレッドから2020年にリリースされたバンドの軌跡をコンパイルしたCD5枚組『BLOOM! THE FULL STORY 1985-1992』からのもの。 THE PRIMITIVES『Bloom! the full story 1985-1992』 1990年6月に来日し東京、川崎、名古屋、大阪で公演をおこなっている。この時のサポートは大江慎也+ONESだった。 Flyer = THE PRIMITIVES in JAPAN 1990 プリミティヴスはサード・アルバム『ガロア』をリリース後1992年に解散するが、2009年に再結成し活動を続けている。

TRANSVISION VAMP『POP ART』

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前回のホリー&ジ・イタリアンズ「Tell That Girl To Shut Up」のカヴァーを含むトランスヴィジョン・ヴァンプのファースト・アルバム。トランスヴィジョン・ヴァンプはヴォーカルのウェンディ・ジェイムスとギタリストのニック・クリスチャン・セイヤーを中心に結成。1987年にダンカン・ブリッジマンをブロデューサーに、ジャケット・アートを先頃亡くなったジェイミー・リードが手がけたシングル「Revolution Baby」でデビュー。続いてシングル「Tell That Girl To Shut Up」、「I Want You Love」をリリースした後、これらの楽曲を含むアルバム『ポップ・アート』を1988年9月にリリースした。日本盤CDは1988年10月25日にリリースされている。 このころブロンド女性ヴォーカリストをフューチャーしたバンドがいくつかあったが、なかでもトランスヴィジョン・ヴァンプのウェンディ嬢(1966年生まれ)はブリジッド・バルドーが引き合いに出されるようなコケティッシュでバンド名の通りヴァンプな魅力があった。セックス・ピストルズというよりジョーンズ=クックなパンキーさにT-REXなグラム感をプラスし、さらにサイバーなフレイヴァーを加味したサウンドで、なかなかバラエティ豊かな楽曲が並んでいる。 代表曲というとPVもセクシーなこの曲か。 TRANSVISION VAMP「I Want Your Love」 「Tell That Girl To Shut Up」の日本盤8cmCDシングル この曲のPVも紹介しておくか。 TRANSVISION VAMP「Tell That Girl To Shut Up」 トランスヴィジョン・ヴァンプはセカンド、サード・アルバムのCDやリミックス集CD、プロモ・ヴィデオ集も買って結構好きだった。1991年にトランスヴィジョン・ヴァンプは解散するがウェンディのソロも買ったな。

HOLLY & THE ITALIANS『THE RIGHT TO BE ITALIAN』

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少し前に パワーポップ・コンピ で紹介した「Tell That Girl To Shut Up」が収録されているホリー&ジ・イタリアンズのアルバム。オリジナルは1981年リリースだが、私が購入したのは2002年にアメリカのWounded Bird RecordsからリイシューされたCD。オリジナルLPとは若干曲順を変更、シングルB面曲等を追加している。 永遠のガールズ・パワーポップナンバー「Tell That Girl To Shut Up」の他にも疾走ナンバーの「Baby Gets It All」、シンガロングな「I Wanna Go Home」、ファンキーな「Just Young」、“決められた範囲以上に近づかないで”・”暴力を振るうつもりはないけどあんたが銃に弾を込めるのを手伝ってあげる”と刺激的な歌詞が歌われる「Rock Against Romance」など聴きどころは多い。「Just For Tonight」はUSガールズ・グループのザ・シフォンズが1968年にリリースしたシングル曲のカヴァーでややしっとりしたアレンジになっている。 CDのボーナストラックには「Miles Away」のシングル・バージョン、シングルB面曲3曲「Fanzine」、「It's Only Me」、「Poster Boy」を追加収録。 ホリー・ベス・ヴィンセントはアメリカ生まれ、ホリー&ジ・イタリアンズを結成、1979年にイギリスに渡りオーヴァルから7インチ・シングル「Tell That Girl To Shut Up c/w Chapel of Love」をリリースした。その後ヴァージン・レコードと契約、アメリカに戻りアルバム『THE  RIGHT TO BE ITALIANS』の録音を開始するが制作は難航、完成するのに1年以上を費やした。リリース当時好意的な反応がなかったというこのアルバムだが、今ではパワーポップ名盤アルバムに必ず取り上げられる1枚だ。

追悼・JAMIE REID

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セックス・ピストルズのレコード・ジャケット、ポスター、チラシ等のデザインを手がけたジェイミー・リードが逝去。76歳だった。 バンドロゴ、曲名、アルバムタイトルは脅迫状を模し、ユニオンジャックを切り裂いてクリップで止め、エリザベス女王の口元に安全ピンを刺した男。シングル「God Save The Queen」をリリースした後、ジェイミー・リード、ジョニー・ロットン、ポール・クック、プロデューサーのクリス・トーマス、エンジニアのビル・プライスは路上で襲われる羽目になったが、今じゃユニクロのTシャツの図柄に使われるポップ・アートになった。 1989年9月6日〜9月25日には渋谷パルコ・ギャラリーで『UP THEY RISE』と題された展覧会を開催(その後大阪、名古屋へ巡回した)。下の画像はその時のチラシ表裏。 下の画像はそのジェイミー・リード展『UP THEY RISE』を取り上げた、今は無き情報誌『シティーロード』のFRONT LINE ART eyeで、開発チエによる記事「パンクの神殿を飾りつけた男 ジェイミー・リード」。 下の画像は、CDアルバム、CDシングル、ポストカード、ピストルズ関係の本に使われたジェイミーのデザイン。真ん中あたりにあるバッジは確か上記の展覧会で買ったんだと思う。 ジェイミーはジョニー・ロットンやマルコム・マクラーレンより過激でアナーキーだったというのをグレン・マトロックのインタビューで読んだが、彼のデザインを見るほどにうなずけるものだ。 耳からだけじゃなくパンクを視覚から網膜に焼きつけた。その目の醒めるようなヴィジュアル・イメージの鮮度は決して失われることはないだろう。 RIP…。

MY PLAYLIST Vol.7『PANTAX'S ROCK'N'ROLL WORLD』

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パンタのスローな曲を集めたマイ・ベストを作ったとき、スピーディーでロックンロール感のある曲を集めたベストも作った。ソロ1作目『PANTAX'S WORLD』〜『P.I.S.S.』 ま でのスタジオ・アルバムから18曲を選曲したが、こちらもスウィート路線のアルバム『KISS』と『唇にスパーク』、それに『クリスタル・ナハト』からは選曲しなかった(やはりトータルな印象で…)。カーステレオでよく聴いたなぁ。 以下、私の選んだ『PANTAX'S ROCK'N'ROLL WORLD 1976-1989』  1. 死ぬまで離さない  2. ドーベルマン  3. モータードライヴ  4. バニシング・ロード  5. 五月雨にスラーをかけて  6. Audi 80  7. ロックン・ロール・トリートメント  8. Saturday Night Clash 夜霧に消えた青春  9. 反逆の軌跡 10. キック・ザ・シティ 11. 走れ熱いなら 12. ロックもどき 13. 孑孒 14, ナイチンゲール 15. 北回帰線 16. 429 Street 17. 13号埋立地から 18. PISS (Piss into my heart) Track1. 5. 9. 14. 17.  アルバム 『反逆の軌跡』(1985年) Track2. 7 アルバム『16人格』(1984年) Track3. 6. 10.アルバム 『1980X』 PANTA & HAL  (1980年) Track4. アルバム『R☆E☆D』 (1986年) Track8. 13. 16.  アルバム『SALVAGE(浚渫)』(1983年) Track11.  アルバム『走れ熱いなら』(1977年) Track12. アルバム『PANTAX'S WORLD』 (1976年) Track15.  アルバム『マラッカ』 PANTA & HAL (1979年) Track18. アルバム『P.I.S.S.』(1989年) という内容。全18曲で収録時間は約70分。 オープニングはパンタとリスナーの固く結びついた関係について1985年に発表された曲で、この歌の通りパンタ...

MY PLAYLIST Vol.6『SLOW PANTAX'S WORLD 1976-1989』

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スローな曲を集めた編集アルバムというと、例えばストーンズ『スロー・ローラーズ』やビートルズ『ラヴ・ソングス』とか、日本だったらサザンの『バラッド』や佐野元春『スローソングス』、浜田省吾の編集盤というよりセルフ・カヴァー・アルバム『サンド・キャッスル』なんかがあるけど、パンタのスローなバラードを集めてみようと思ったのはアルバム『P.I.S.S.』をリリースした頃だった。ソロ1作目『PANTAX'S WORLD』〜『P.I.S.S.』 ま でのスタジオ・アルバムとシングル「ルイーズ」、12インチ・シングル『プラハからの手紙』から14曲を選曲したが、PANTA & HALのアルバム『1980X』、スウィート路線のアルバム『KISS』と『唇にスパーク』、それに『クリスタル・ナハト』からは選曲しなかった(まぁなんとなくトータルな印象で…)。 以下、私の選んだパンタ・スロー・ソングス『SLOW PANTAX'S WORLD 1976-1989』  1. 夜明けはまだ  2. ふたりじゃいられない  3. 奴と俺とおまえと  4. ブーゲンビリア  5. スカンジナビア  6. 裸にされた街  7. やかましい俺のROCKめ  8. 明日天気になれ  9. ONE NIGHT LOVER 10. 素直な気持ちでいられたら〜入江にて AM4:00 11. 綺羅と紛れて 12, ステファンの6つ子 13. Good Morning Blues 14. 35番目の朝に Track1. 7. アルバム『走れ熱いなら』(1977年) Track2. アルバム『16人格』(1984年) Track3. 11. 14.アルバム 『反逆の軌跡』(1985年) Track4. アルバム『R☆E☆D』 (1986年) Track5. 1 2inchシングル『プラハからの手紙』(1987年) Track6 . アルバム『マラッカ』 PANTA & HAL (1979年) Track8. アルバム『PANTAX'S WORLD』 (1976年) Track9. アルバム『P.I.S.S.』(1989年) Track10. 13. アルバム『SALVAGE(浚渫)』(1983年) Track12 . 7...

PANTA「MOONLIGHT SURFER」OR "LEGENDARY SURFER"

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パンタ(中村治雄)が他アーティストに提供した楽曲の中で一番有名かつカヴァーも多いのは「ムーンライト・サーファー」だろう。パンタが作詞作曲し、1977年に石川セリに提供。シングルにもなった。その後、桑名晴子がカヴァーし、やはりシングルになりB面は英語詞ヴァージョンだった(英詞はLinda Hennric)。 私的にヒットしたのはパンタが作曲(作詞は青木茗=金井夕子)した岩崎良美のシングル曲「Vacance」だったな。1982年7月21日リリースで爽やかな夏の雰囲気と少しセンチメンタルな感じの歌詞にメロディそしてアレンジ。ぜひ広く聴いて欲しいサマーソング。他の80年代アイドルでは堀ちえみ「幼な馴染み」、石川秀美「Rule」、荻野目洋子「昨日より輝いて」、伊藤さやか、伊藤かずえ、太田貴子にも提供曲あり。 石川セリには、後にパンタも歌詞を変えてセルフカヴァーした「スノーキャンドル」、名曲「真珠星(Pearl Star)」、「ひとりぼっちの日曜日」、「Fairy Tales」を提供、他に麻生レミ「Same Again」、杏里「白いヨット」、松原みき「予言」、山下久美子「××」、桑江知子、高樹澪などの女性シンガーにも提供している。 男性シンガー、バンド関連では白竜、柴山俊之、沢田研二、チェッカーズ、ルースターズ、ビートたけし等に提供。 アルバムのプロデュースをした 小森みちこ『REMEMBER』 も忘れがたい1枚。 近年ではSKI(制服向上委員会)に多数の曲を提供していた。 右上の写真はパンタが提供したアーティスト、バンドのアルバム、シングルの一部。石川セリのアルバム『星くずの街で』は黒ジャケットもあるがこれは白ジャケット。パンタが4曲の歌詞を提供したパフォーマンス・グループ時代錯誤のアルバム『冒険倶楽部』。WELCOMEのアルバム『BLUESY』(1981年)には「ミスティデイ・ミスティナイト」の歌詞を提供、WELCOMEは後にパンタと活動を共にするギタリスト菊池琢己が在籍していたバンド。CDは制服向上委員会のアルバム『No! Make』(2000年)で、パンタは作曲2曲と作詞作曲した「煌きの後に」を提供している。シングルは石川セリ「ムーンライト・サーファー c/w ミッドナイト・ラブ・コール」、桑名晴子「ムーンライト・サーファー c/w MOONLIGHT SURFER(英...