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ヒカシュー「ヴィニール人形」

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1996年10月発表のアルバム『1978』より。 ヒカシューが東芝からのデビューアルバム以前に練馬の家で宅録したデモレコーディング音源のCD化。 巻上公一が手渡したこのデモテープを聴いた近田春夫によるプロデュースで、1stアルバムは製作される事となる。『1978』に収められている曲の多くが1stアルバムにも収録されているが、ここではその原型というか、 メジャーデビューの為に整理される前の、混沌としたエネルギーとパワーを含んだ状態の演奏を聴くことが出来る。 安い楽器を使い、身近に転がっている物を楽器代わりに叩き、うめき声をあげ、覚えたての楽器を演奏する、録音も4chのピンポン録音。 しかし、このころヴァニティ・レコード(アーントサリーをリリースした)からレコーディングの話しがあったという事もあり、 アレンジは完成されている。このデモをどう整理して、なにをマイナスすれば聴き易くなるか、という方法で1stアルバムは作られたのかも知れない。とはいっても、もちろん東芝からリリースされた「ヒカシュー」は素晴らしいアルバムだが。 内容は全て興味深いものだし、パソコン用のデジタル・データも素晴らしい(が、フィルムは現在の私のパソコンWindows XPでは見ることは出来ないようだ)。 ここでは“怪奇大作戦”(海琳談)な「ヴィニール人形」をお勧めとしておく。 1stアルバムのバージョンよりも全てのパートが不気味度を増していて、途中で聴こえるキーボード・アルペジオも美しく、 “ヴィニール~溢れ出る目から耳から~”の所、海琳正道の16のリズムで刻むギターカッティングがキレ味良い。

THE BADGE「飛べない天使」

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1983年5月発表のアルバム『Touch』より。 ザ・バッヂ。彼等唯一のアルバムが再発された2004年まで、実は音を聴いたことがなかった。活動期間が1982~1986年で、私が熱心に音楽を聴いたり見たり情報を集めたりしていた時期と重なるのだが、レコードを借りたりもしなかったし、 ライブで目当てのバンドの対バンになっていたことも無かった。 もっとも私がこの時期(幾分ダークな)ニューウェイブに興味が向いていて、ザ・バッヂのようなサウンドに興味が無かったからかもしれない。 バンド名やアルバムの黒いスーツの描かれたアルバムジャケットは当時から知っていたが、 この頃では中古でも見なくなっていたので、2004年のCD化を機に手にとって聴いてみた。 ザ・ジャムとして来日した時のポール・ウェラーに気に入られたという事やバンドの写真をみても想像できるザ・ジャムの影響下にあるサウンドだが、 それだけでは括れない魅力がある。ビタースウィートなボーカル、ハーモニー、印象的なメロディ、時にシャープで時に余裕のあるサウンド...。 「飛べない天使」はイントロがちょっぴりニック・ロウの「Cruel To Be Kind(邦題:恋するふたり)」を思わせるポップなナンバー。 ザックリとしたアコースティックギターの響き、“Never Smile, Never Cry~”と歌われるところの流れるようなベースラインがいい。 自分の感情表現やトライする気持ち、自分の音楽さえも押さえつけられた“飛べない天使”たちの苛立ちを歌った曲で、 “こんなはずじゃなかったさ/なにかが違いすぎる/夢のないステージに/爪をかみ冷たい夜を待つ”というフレーズなどを聴くと、 ザ・バッヂのメンバーが歩んできた、これまでの音楽活動を振り返った気持ちが込められているかもしれない、と思ってしまう。 今ザ・バッヂの音源は初期の未発表音源のリリースや、テイチク時代、キング時代とリイシューが進んでいる。 CDの演奏を聴く度に彼等のライブを体験したかったと思う。それはもう叶わぬ事なのだが...。

東京60WATTS「ウイスキーバーブルース」

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2004年3月発表のアルバム『Watts! Going On』より。 仕事の帰り、夜の国道を車で走っていたら、ラジオからなかなか渋い曲が流れてきた。 ギターのアルペジオにのせて“ウイスキーを一杯飲っていかないか”なんて歌われている。 その頃家に帰ってはウイスキーのロックをちびちびと飲んでいた私は、飲んだくれが集まるそのバーがいかに感じが良くて、いかに居心地が良いかを訴える歌詞に、 これは愉快な曲だなぁと思って聴いていたのだが、曲の後半に「ラフロイグ」好きで悲しい身の上の女が登場することにより表情を変える。 ちょっといきなりって感じもする展開だけど、この曲の主題でもあるのだろう。 ボーカルの大川たけしのユーモラスで脱力気味の歌声も堅苦しくなくていい。 東京60WATTSはこのアルバムでメジャーデビューした5人組。 確かな演奏力で(ピアノがいい味)、この曲の他にも面白い曲が並んでいる。

友部正人「地球のいちばんはげた場所」

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1988年発表のライブ・アルバム『はじめぼくはひとりだった』より。 私は最初、この歌になにか凄く広大な砂漠や荒地、例えばネバダとかグランドキャニオンとかエアーズロックとか(全部行ったことないけど)、 そういうイメージを持っていて、さらに政府の影のような男に彼女を誘拐されてしまうという、いささか荒唐無稽な内容だ、などと考えていたのだった。 ある時この歌の内容の話をしていたら、もっと小さな、日本のアパートや、二人じゃ狭く感じる台所があるような部屋が舞台なんじゃないかと思えてきたのだった。 彼女と共に夢を見、愛を交わした部屋が、“ぼく”に代わる新しい男の登場によって、この地球上でいちばん“はげた”場所に変わってしまう。 それは身近で、とてもせつなく、悲しい歌だった。 このアルバムは1988年9月27日に有楽町よみうりホールで行われたデビュー15周年記念コンサートを収録したもので、40曲程演奏された中から 27曲が選ばれている。「地球のいちばんはげた場所」はこのCDで初めて盤に収録された曲で、 ここでは松竹谷清(トマトス)のアコースティク・ギターをバックに歌われた。 それにしてもなんという思い込みをしていたのだろう...。

AKEBOSHI「WIND」

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2002年8月発表のミニ・アルバム『Stoned Town』より。 Akeboshi=明星嘉男を初めて聴いた(見た)のは2005年5月日比谷野音でのイベント“MAZRIの祭”の時。 トップバッターだったので、まだ明るい5月の夕刻、アコースティックでキレのあるサウンドを聴かせてくれた。 その時のMCで「今日はロックな集まりなので、ロックじゃない曲を云々...」みたいなことを話していたが、 聴いた歌も演奏も、その辺の“ロックバンド”なんかより、よっぽど硬質な意志を感じたものだ。 「Wind」は野音のライブでも演奏していた曲で、 イントロのクラシカルなピアノ、ドラムのリムショット、何度も“Don't try to~”と歌われる箇所が耳に残る英語詞の曲。、 縦笛(Tin Whisle)や弦が使われていてケルト・アイルランドな印象が残る。 曲の後半に出てくる歌詞“Winding Road”と“Straight Way”の対比も鮮やか。 この曲はアニメのエンディング・テーマとしてTVで流れていたらしい。だから、ある人にとってはこの曲を聴くとそのアニメのエンドタイトルが 思い浮かぶのかもしれないが、私にとっては暮れ行く野音の景色と缶ビールの味を思い出すのだった。

KEANE「BEND AND BREAK」

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2004年5月発表のアルバム『Hopes And Fears』より。 ボーカル、ピアノ&ベース、ドラムという3人編成のバンド、キーンのファーストアルバムは素晴らしい出来上がりだ。 この中からUKでは4曲がシングル・カット、いずれもUKチャート上位に入り、アルバムは1位となった。 私が手に入れたのは輸入盤でインターナショナル盤(UK盤や日本盤と曲順、曲数が異なる)だが、 控えめで哀しげな曲調の「Somewhere Only We Know」で始まり、ややアップテンポの「This Is The Last Time」と続き(いずれもシングルカットされた曲)、 3曲目に位置する「Bend and Break」まで非のうち所がない。 「Bend and Break」は前曲よりやや速めのテンポで、ボーカルが入ったあたりの抑えた演奏から、 サビの部分でシンセサイザーを加えた広がりのある演奏と伸びやかなボーカルが魅力的。 この曲はUKではシングルリリースされなかったが、2005年ドイツ、オーストリアでシングルカットされたようだ。 いい曲が揃っていて、アルバム全編を通して、時に恐れを、時に希望を感じられる演奏とアレンジ、歌の表現力は凄い。轟音ギターもアコースティク・ギターも全然加えられていないので、ギターの音が入っている曲に慣れている耳には新鮮。

THE WHO『MY GENERATION』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.10 壁に飾りたいジャケ10回目、とりあえず最終ということで、やはり外せないザ・フーのファースト・アルバムの英国盤ジャケット。 1965年にBrunswickからリリースされ、1980年にVirginから再リリースされたものの、私がフーに対して興味を持った80年代後半頃には 非常に入手困難なレコードであった。 薬品のドラム缶の横で見上げるメンバー。ユニオンジャックのジャケットを羽織ったジョン、マフラーを巻いてるピート、 短髪のロジャー、白いGジャンのキース、4人とも細身のパンツと革靴。バンド名が赤、タイトルが青文字、右上に黒い四角に白抜きでレーベル名(これってオアシスっぽい?)。 格好よすぎるデザイン。 自分の部屋にこのジャケットを飾りたいと思っても、オリジナル盤、再発Virgin盤ともに高値で手が届かなかった。 そんな時、新宿某レコード店でこの英国仕様アナログ盤が再発されるという広告を見た私はすぐさま購入。たしか2800円位した。 後で知ったのだが、それはリプロ盤とよばれるブートレグで、どうせならBrunswickで作ればいいものをVirgin盤で作られたものだった (ブート製作者が持っていなかったのかもしれない)。 それでも、まぁポスターやピンナップを買ったと思えばいいので、ずいぶん長い間私の部屋に飾られていたジャケットだ。 リプロ盤はよく見ると色の発色が綺麗じゃないし、文字や写真のエッジがボケているので、後になって本物のVirgin盤(右上のジャケ写)を購入した。 US仕様ではCD化されていたが、英国盤ジャケット仕様でのCD化は2002年まで待たなければならなかった。ステレオ化、曲は大幅に追加されて2枚組みになって発売。 2004年には紙ジャケで再発された。

SMALL FACES『OGDEN'S NUT GONE FLAKE』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.9 初期のビート・グループから、サイケデリック/ヒッピー・ムーブメントに影響を受けて変化を遂げたスモール・フェイセスの 1968年5月にリリースされた4枚目のアルバム。 円形のタバコ缶を模したジャケットは左横で綴じられていて、ジャケットを左に開くと右にタバコの葉と巻き紙の写真、 左にタバコを吸う人を花々や葉が囲み、たくさんの蝶が飛び立つ姿などが描かれた極彩色のイラストが現れる。 右のタバコの写真、左のイラストそれぞれが下側で綴じられていて、開くとメンバーを写した白黒写真が現れるしくみ。 タバコの葉と巻き紙は、タバコを巻いて吸う様に、このアルバムを聴いてひと時思惑にくれて欲しいという願いでもあるらしい。 右上のジャケ写は1996年にCastleから10,000枚限定でリイシューされた160g LP。 全英チャートでは6週間1位に留まり続けたヒット作だが、スタジオ盤としてはグループ最後のアルバムとなってしまった。

THE CLASH「I FOUGHT THE LAW」

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.8 クラッシュのジャケット・デザインではエルビスのジャケットを模した『ロンドン・コーリング』のアルバム・ジャケットや、 10インチ盤の『ブラック・マーケット』、日本盤LP『パールハーバー '79』、 UKシングル盤ではピストルズやディラン、ビートルズなどのレコードを聴く男女が描かれた「ロンドン・コーリング」、 ラフトレード、ファクトリーなどのインディレーベルをデザインした「ヒッツヴィルUK」など7インチ、12インチシングル盤でも面白いデザインが多かったが、 今回は1988年に編集盤『ザ・ストーリー・オブ・ザ・クラッシュ』がリリースされた際、UKでシングルカットされた「アイ・フォート・ザ・ロウ」を選んだ。 クラッシュの多くの写真を手掛けたペニー・スミスのメンバーフォトを薄い緑の色相に変化させて、真ん中を横切るようにタイトルとバンド名が配置されている。 右上のジャケ写は12インチ盤で、タイトルの下にステージ写真が3点使われているが、7インチ盤ではメンバーフォトのみで青味がかった色調だった。 キリリと締まったメンバーの立ち姿の中身は、ボビー・フラーでヒットした名曲をパワフルなドラミングとスピード感のあるスリリングな演奏、 ジョーのホットなボーカル、コーラスで仕上げた、ご存知の超名カバー曲(この曲の内容でTVCMに使われるとは思わなかったが)。クラッシュ活動中の1979年、アメリカでの1stシングルとなった曲で、アメリカ進出への足がかりとなった曲でもある。

ECHO & THE BUNNYMEN「THE KILLING MOON "ALL NIGHT VERSION"」

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.7 1980年代のニューウェイブの12インチ・シングルやアルバム・ジャケットには綺麗なもの、センスのいいものが多かった。アズティック・カメラ、ジョイ・ディビジョン、ザ・スミス、ドルッティ・コラム、ペイル・ファウンテインズ、ストロベリー・スイッチブレイド...。 絵画、風景、動物もの、ポートレイト等々。このエコー&ザ・バニーメンは、自然派とも言うべき美しい写真を使い、素晴らしいジャケットを多く残した。 凍てついた瀑布に立つメンバーを写したアルバム『ポーキュパイン』や地下(洞窟?)の湖に舟を浮かべた『オーシャン・レイン』、 海辺の鳥たちを写した「A Promise」の7インチやアルバム『ヘブン・アップ・ヒア』、ロイヤル・アルバート・ホールの写真に彩色したシングル「ネヴァーストップ」、 これは絵画だがHenry Scott Tukeによる、木々の下に佇む少年と少女を描いた油絵を使用したシングル「The Back of Love」などなど。 その中で1984年1月にUKリリースされたシングルの12インチ・ヴァージョン「The Killing Moon“All Night Version”」を選んだ。 雲の間に浮かぶ満月に照らされた岸辺。右側には木々が黒く、手前には一艘の帆船の影。画面中央より上に浮かぶ月、やや下を横切る水平線、 夜風に流れゆく雲や、月光が照らすさざめく波の陰影は奥行きをあたえ、写真の中に物語を感じさせる。 “All Night Version”の通り、9分余りの長尺に仕上げたこのヴァージョンは、 妖しく美しい弦の響き、アクセントをつけながら物語を進めていくリズム、イアン・マッカロクの艶のある声が月光と闇を紡ぐ、 ジャケット、内容共に極上の12インチ・シングル。

WAYNE KRAMER『DANGEROUS MADNESS』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.6 デトロイトのバンド、MC5のギタリストであったウェイン・クレイマーが1996年に発表した、エプタフと契約後2枚目のソロ・アルバム。 ホワイトのストラトキャスターの写真を、ヘッドからネックの部分にかけて歪んだ状態に加工し、ブラックをバックに大きく白抜きのアーティスト・ネームが入った ジャケット。ストラトキャスターという曲線の美しいギターを更に歪めて曲線を強調し、 弦やピックアップ部分の陰影など、コントラストを強くして格好良いジャケットになっている。 裏ジャケットにはクライベイビーのワウワウ・ペダルの写真をやはり歪んだ加工を施して面白い仕上がり。 CD中ジャケにはテレキャスターと思われる写真も使われている。 サウンドはラウド、ハード、ポップ&パンキッシュな仕上がり。中には「Back To Detroit」というスローでメランコリックな曲もあり。 タイトルトラックではテレンス・トレント・ダービーがコーラスで参加、The Deviantsのミック・ファレンが数曲で歌詞を提供している。

CAPTAIN BEEFHEART & HIS MAGIC BAND『TROUT MASK REPLICA』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.5 1969年発表のアルバムで28曲入り、オリジナル・アナログは2枚組だった。 赤~ピンクのグラデーションをバックに、帽子を被った魚の頭部になったビーフハート。 ジャケットデザインをしたCal Schenkelによれば、本物の魚の頭部を買ってきて被ったそうだ。 でも見た目は“ます(トラウト)”じゃなくて“コイ”みたいだが。 帽子の上にはバトミントンのシャトルのような物がくっついている。 “パー”をだした右手は“聴こえるかー”というジェスチャーのようだ。 内容は数々の伝説に満ちているが、周到な準備をし瞬間的に録音を終え完成させた、奇妙で精巧に構築されたアヴァンギャルド。 時にザックリ、時に微妙なズレが気持ちいいギターがパンク・ニューウェーブ以降に受け入れられたのには納得。 地引雄一著「ストリート・キングダム」の裏表紙写真で、魚の被り物に杖を持ったシュルツ・ハルナは、 このアルバムジャケットにインスパイアされたのだろうか。

FAUST『FAUST』

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 壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.4 ドイツのバンド・ファウストの1971年発表のファースト・アルバム。グループ名の“拳”そのまま、レントゲン写真の拳がデザインされたジャケット。 オリジナルLPはクリアーなレコード盤(レーベルは金属箔押し)と透明なビニールに赤文字印刷した歌詞カードを 透明なジャケットに入れるという“透ける”にこだわった作りだった。 自宅の壁に飾りたいが、私が興味を持ち始めたときには、オリジナルはレコード屋のレジの後ろの壁に飾られていたのを思い出す。 サウンド・コラージュを多用し、様々な約束事から解放された実験的な内容は聴き手のイマジネーションを刺激する。 2003年にオリジナル・アートワークを再現したCDが発売された(CDは透明に出来ないが)。 右上のジャケ写は1991年にCD化された時のものでプラケースにバンド名と拳が印刷され、白いジャケットに赤文字印刷された仕様。

JIMI HENDRIX『BAND OF GYPSYS』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.3 ジミ・ヘンドリクス1970年発表のライブ・アルバム。トタン板(?)の壁の前に立つパペットはジミの他、ボブ・ディラン、ブライアン・ジョーンズ、ジョン・ピールといわれている。 以前の契約を解消する為にライブ録音が行われ、ジミ本人は満足出来る演奏、仕上がりではなく、この英国初回プレス用のパペット・ジャケットも 嫌がっており、リリースにも不本意だったようだ。内容に全然関係の無い人物の人形が3体もくっついていては、確かにあまりいい気はしないだろう。 トタン板のブルーの前に、画面中央より少し右に人形を集めて上から写したジャケットはユーモラスであり、ファンキーで渋い内容とは かけ離れた印象を与えるが、その後変更された(というか米国盤仕様)ジミのうつむき加減にギターを弾く、暗いトーンのジャケットよりは優れたデザインだと思う。   内容は1999年に「ライブ・アット・フィルモア・イースト」という2枚組CDとして大幅に追加・改訂され、まったく違う印象のものになった。 

13TH FLOOR ELEVATORS『THE PSYCHEDELIC SOUND OF 13TH FLOOR ELEVATORS』

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 壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.2 壁飾ジャケの2回目は13フロア・エレヴェイターズ、1966年発表のファースト・アルバム。 サイケ&ガレージなサウンドを包むのは、グレーンとレッドの強烈な色彩の中からこちらを見つめる瞳と、 アイシャドウのように目を縁取るグループ名のサイケデリックな文字、が描かれた眩暈のするようなジャケット。 光の洪水のようなこのジャケットをじっと見ていると、 青い縁取りの黒い瞳になぜかパワーを感じるのは、瞳の中にグリーンのピラミッド(状のハイライト)が描かれているせいか。右上のジャケ写は2005年にCharlyからリイシューされたデジパックCD。 ヒットした「You're Gonna Miss Me」、テレビジョンが取り上げていた「Fire Engine」を含むこのアルバムは、 鳴り止まぬエレクトリック・ジャグがサイケ感を増し、時として粗暴、時としてピュアなロッキー・エリクソンのボーカルと、 よく響くギターが精神に切り込んでくる。 瞳の中に浮かぶもうひとつの目は、13フロア・エレヴェイターズの世界を覗き込んだ私たちの目が映っているのかも。

THE VELVET UNDERGROUND & NICO『THE VELVET UNDERGROUND & NICO』

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壁に飾りたいジャケ~Pictures On My Wall~Vol.1 連続企画、部屋の壁に飾ってみたいレコード・ジャケット、ということで、 やはりこれは外せないという、1967年3月に発表されたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのファースト・アルバム。 実際飾ってたし。おかげで白いジャケは少し日焼けしてしまった(パネル枠部分は真っ白のまま)。 アンディ・ウォーホルのペインティングによるバナナをデザインしたジャケットはシールになっていて、 剥がすとピンク色の中身が現れる(剥がしたことはないけど)。 私が持っている1996年にリリースされたリマスター盤CDではトレイの下の部分に皮を剥かれたバナナを見ることが出来る。 シンプルな完成されたジャケットという評価があるが、ピンク色のバナナの中身は見ていると心もとない。 シールとしているからには剥がすことを前提としているのだろうか。 リスナーがバナナの皮を剥くことによって完成されるものであったのか。 ピンク色のバナナが本来のジャケットであると考えていたのだろうか。 剥がしたいという欲望のままバナナの皮を剥くのか、中身を見たいという欲求を押さえ、完成されたデザインの黄色いバナナの皮を見て耐えるのか。 まるで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドがこのファーストアルバムの中で歌い、演奏した数々の矛盾のようだ。

SWAMP CHILDREN「SAMBA ZIPPY」

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1989年7月発表、KALIMAのベスト・アルバム『Flyaway』より。 パンク・ロック以降、80年代の初め頃から形作られていったイギリスのニュージャズ(ブリティッシュ・ジャズ)・シーンは、 やがてエブリシング・バット・ザ・ガール、シャーデーなどを輩出しヒットを生み出すが、 マンチェスターのファクトリー・レーベルにはスワンプ・チルドレンというバンドが ラテンやボサノヴァ、ジャズを取り入れたサウンドを作っていた。 スワンプ・チルドレンはやがてKALIMAと名前を変えて活動を続け、 このベスト・アルバムは「Samba Zippy」を収録した1982年のスワンプ・チルドレンのアルバム『So Hot』 から1987年のKALIMAのシングル「Weird Feelings」までの間よりセレクトされている。 ジャジーなAnn Quigleyのボーカル曲も魅力的だが、 アルバムの1曲目「Samba Zippy」はパーカッシブなサンバのリズム、跳ねて動き回るベースフレーズに アコースティック・ギターとフルートが重なるニューウェイブ・ジャズとも言えそうなインストゥルメンタル曲で、個人的にはサイケな印象。 調べてみるとスワンプ・チルドレンのアルバム『So Hot』はシングル曲を加え、2004年LTMよりCD化再発されていた。 これは聴いてみないと。

PANTA「氷川丸」

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2005年5月発表のライブ・アルバム『2002 Naked Tour Live at The Doors』より。 2001年の初め頃から歌われていた曲だが、このライブ盤が(待望の)初出となった。 氷川丸は現在、横浜港山下公園に係留され観光スポットとなっているが、1930年に建造された貨客船で、 太平洋戦争が始まってから傷病者を運ぶ病院船として海軍に徴用された。 白く塗られた船体、赤十字の印し、それを照らすライト。あふれる負傷者、病人。あわただしく動き回る軍医、看護人達。休む間もない手当て、手術。 手当ての甲斐なく亡くなった者を弔うために歌われる「海ゆかば」。戦時下で保護された病院船とはいえ常につきまとう危険。 そして、なにもかもを包む、おだやかな深い海。 そんな光景が浮かぶ歌詞に少しのユーモアを加え、速い2拍子にのせて歌われる。 これだけ強烈にイメージを喚起させる歌詞は久しぶりだ。 ギターのストロークが船のスピードを感じさせ、躍動的とも思えるが、ヴァイオリンとピアノの旋律が絡み合う悲しくも美しいアレンジ。 今も海が見つめているのは、繰り返される未来と追加されるだけの過去なのか。 

POTSHOT「可愛いアノ娘」

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2001年1月発表のマキシ・シングル「In My Heart / 可愛いアノ娘」より。 そのまんまロッカーズの1stアルバム『WHO TH eROCKERS』を模したジャケットでのリリースに並々ならぬリスペクトを感じるが、 スタジオバージョンがリリースされていないロッカーズの名曲「可愛いアノ娘」を取り上げるところが素晴らしい。 もともとThe Whoバージョンの「Summertime Blues」なアレンジだったが、そのあたりをホーンが担当。 歌メロをなぞるバッキング・ギターが強調され、軽やかなドラムでハッピーな仕上がり。 Potshotは80年代の日本ロック・カバーをシングルで取り上げたり、トリビュート盤に参加したりして親近感があったのだが (ボーカルのRyojiは映画『ロッカーズ』のサントラでロッカーズの「ロックンロール・レコード」も歌っている)、 2005年夏で解散すると発表した。リスペクタブル・ルースターズに参加していたバンドが少なくなっていくなぁ...。

PEALOUT「CIRCLE OF THE METALIC SEASON」

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1996年8月発表のマキシ・シングル「Let Me Sink In The Deep Reddish Sky」より。 95年11月にリリースされたPealoutの1stシングル(7インチ)のCD化の際に録音され追加収録された。イントロのピアノ(ちょっぴりクイーンの「手をとりあって」を思わせる)、 続くアコースティック・ギターのストローク、歌が始まりコーラスの後半でドラムのキックとベースが入ってくる導入部が美しい。 “僕達”が共に過ごした日々や季節を、感じた事や信じた事を確かめるように歌う歌詞(英語詞)が切なくても、  “僕達は進まなければ 二つの道が決して交わらなくても” という言葉を力強く感じ、個人的には強い結束の歌だな、とずっと思っていたのだが、 2005年7月でPealout解散というアナウンスに、それぞれの道がもはや同じ目的地ではない事を知った(別にバンドの歌じゃないかもしれないが...)。 MIDIから出た2ndアルバム『ONE』にもこの曲は収録されているが、CDシングルのバージョンの方が輝いていると思う。 あの最初のコーラスの後半で入るドラムのキックとベースが弱くて、美しく聴こえないっていうのが理由だけど。(2005.4.10)