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追悼・JAMES CHANCE

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2024年6月18日、ジェームス・チャンス逝く。71歳だった。 NO WAVEムーヴメントの代表的な人物のひとりジェームス・チャンス(本名:ジェームス・シーグフリード)はリディア・ランチとともにティーンエイジ・ジーザス&ザ・ジャークスを結成、フリクション結成前1977年3月にニューヨークに渡ったレックはジェームスとリディア・ランチに誘われティーンエイジ・ジーザスにベーシストとして加わっている。ジェームス・チャンスはティーンエイジ・ジーザスを脱退後コントーションズを結成、レックを追ってニューヨークに渡ったチコヒゲはジェームスに誘われコントーションズの2代目ドラマーとなる。 レック達が関わったNO WAVEといわれたバンド・アーティスト達の音楽性、実験性、芸術性に限らず日常の行動や言動から受けた影響は、帰国後フリクションを形作る大きな初期衝動となった。それゆえ日本において日本のパンクロックについて振り返るときには、必ずフリクションとともにNO WAVEについて語られることになる。それにNO WAVEというムーヴメントを世界的に表出したオムニバスアルバム『 NO NEW YORK 』(1978年)が、日本ではリリース当時から一貫して評価が高く、NO WAVEの衝撃が特に大きかったと言っても良いだろう。そのアルバムに収録された DNA にはレックと共に渡米したモリイクエがドラマーとして参加している。 右上の本はジェームスが来日した2005年にエスクァイア・マガジン・ジャパンから刊行された『NO WAVE ジェームス・チャンスとポストNYパンク』。コントーションズに限らず、DNA、マーズ、ティーンエイジ・ジーザス&ザ。ジャークスのライヴ告知フライヤーの画像や、ジェームスへの100の質問、ジェームス邸訪問、チコヒゲが語るニューヨークでの生活、ファンジン「WATCH OUT Vol.2」からレックのインタビューとモリイクエの私信の再掲、PHEW、大友良英、山野直子などがジェームスやNO WAVEについて語り、椹木野衣によるジェームス・チャンスとNO WAVEの芸術性についての考察は非常に興味深い。スクリーミング・マッド・ジョージや塩井るりが当時のニューヨークを振り返り、ZEレコード創立者マイケル・ジルカによるNO WAVE入門など、当時のニューヨーク、パンク、NO WAVEの雰囲...

私の放浪音楽史 Vol.106 TOM WAITS『CLOSING TIME』

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1973年、アサイラム・レコードよりリリースのアルバム。 このアルバムを聴いたのは1980年代初め頃。その頃聴いたアメリカのバンドやアーティストで強く影響を受けたアルバムが3枚ある。ブルース・スプリングスティーン『 明日なき暴走 』、テレヴィジョン『 マーキー・ムーン 』、そしてこのトム・ウェイツのデビュー・アルバム『クロージング・タイム』だった。 ジャケットのトム・ウェイツが寄りかかる古ぼけたピアノの上には吸い殻の山になった灰皿、グラスに酒瓶、右上の時計の針は(おそらく午前)3時20分過ぎを指している。閉店時間(CLOSING TIME)だ。アルバムの内容を感じさせるカヴァーアート。 オープニングは夜明けを55年型の車に乗って走る情景を描いた「Ol' 55」。ピアノのリリカルな響き、アコースティックなセット中心のゆったりしたサウンドが心地よい。この曲はイーグルスがカントリーなフレイヴァーでカヴァーし『オン・ザ・ボーダー』(1974年)に収録された。フォーキーな「I Hope That I Don't Fall In Love With You」、ジャジーな「Virginia Avenue」、カントリーな「Old Shoes (& Picture Postcards)」、ミュートしたトランペットの音が優しいロマンティックな子守唄「Midnight Lullaby」、アナログ盤だとA面のラストだった切なく苦い「Martha」は40年以上前に付き合い別れた女性へのメッセージ。俺の全てはお前で、お前の全てはおれだった、だけど二人が一緒にいられない理由は、俺が男だったからだ、という男女間の友情がテーマなのかも。 アナログ盤だとB面の始まりはマーサに続いて女性の名前ロージーに語りかける「Rosie」、トム・ウェイツのピアノとヴォーカルのみで思い焦がれる感情を歌うセンチメンタルな「Lonely」、アップテンポな「Ice Cream Man」はセクシャルなイメージの歌詞で歌われ、曲の終わりにはイントロのピアノのメロディがオルゴールの音色となって幻惑的に響く。続いてこれもまた美しいメロディを紡ぐ「Little Trip To Heaven (On The Wings of Your Love)」、夜空に輝くグレープフルーツのような月とひとつの星、消えてゆく輝...

私の放浪音楽史 Vol.105 小山卓治『HIMAWARI』

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1984年7月21日、CBSソニーからリリース。 前作からほぼ1年ぶりに発表された小山卓治のセカンド・アルバム。オープニングはアコースティック・ギター〜アコーディオンの2分以上ある長いイントロを経て歌が始まる「ひまわり」。もともと“ガソリン・タウン”というタイトルで、受けとった絵はがきも、ひまわりじゃなく街のネオンの写真だったという。日常に潜むものや感情を抉り出すのではなく、目に見える日常の風景をつないでゆく手法を使用して歌詞を作り上げた。ドラムのリムショットが間奏の手前でスネアに変わるところは劇的で、間奏ではイントロのアコースティックギターのフレーズが再登場する。女性コーラスも効果的に使われ、練られた歌詞に楽曲の構成・アレンジは小山卓治が次のステップに進み、ただのスプリングスティーン・フォロワーじゃないことを証明した曲と思う。 工場のサイレン(実は空襲警報の効果音だという)で始まりレゲエのリズムで歌われる「煙突のある街」は当時ブレイカーズでヴォーカル&ギターを担当していた真島昌利の曲を取り上げた。真島もバッキングヴォーカルで参加している。労働者の健康被害、組合の賃上げ闘争、ラストはおそらく工場の煤煙と排水による河川の汚染により会社が訴えられたと思われる内容。“時間を殺す場所さ 自分を殺す場所さ”という歌詞は、アルバイトというと工場の長時間労働をしていた私にとっては身につまされる歌だった。重厚で聴き応えのある曲だが、効果音の挿入がやや過剰に思える。真島昌利は1992年リリースの3枚目のソロアルバム『RAW LIFE』で「煙突のある街」を録音している(若干歌詞が違う)。 「下から2番目の男」は怖いもの知らずでプライドとハッタリは一人前の働く若者の歌。2分半でオチも付いたコンパクトな傑作。続いて4枚目のシングルだった「 DOWN 」でアナログ盤A面終了。 B面のはじまりはリズムボックスのバスドラの音を強調して強烈なドスッという音像をつくりあげた「家族」。父親を亡くし、母親・兄・姉と僕の4人で暮らす家族。まともな職につかず母親に心配をかけ続ける兄貴と恋人に騙されている姉、これまたどん底な曲だが、“ゆっくりと流れる河に沿った石畳 僕は自転車に乗って毎日ここを通る”の歌詞とメロディにはヨーロッパ的な風景が感じられる。ヴィスコンティ『若者のすべて』やデュヴィヴィエ『パリ...

私の放浪音楽史 Vol.104 小山卓治「DOWN」

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1984年5月21日、CBSソニーからリリースのシングル。 小山卓治4枚目の7インチシングル。ジャケットの小山卓治はアルバム『インフィデル』(1983年)のディランを彷彿とさせる容貌になり、前作「傷だらけの天使」のジャケからブルーな雰囲気を更に増している(前作と同じく写真は井出情児)。まぁタイトルは「ダウン」で、落ち込んで鬱陶しい気分になる理由を歌うんだから当然である。 それでも桑田りん、佐藤めぐみの女性コーラスを加えてサウンド面では爽やかさを取り入れ、軽快なキーボードの音色にスピーディなリズムで憂鬱さを消し去ろうとしている印象はある。もっともこのシングルリリース後、小山卓治自身が体調を崩し入院してしまうのだが…。 小山卓治初のプロモーション・ビデオも作られ、そこではサングラスもかけず、髭面ではなくさっぱり、すっきりした顔立ちで歌っている。当時はなんの変哲もないビデオだな、と思ったが、今見るとシンプルでいいかな。 この曲のリリースから40年経っているが、このフレーズはずーっと変わらずこの国の音楽業界の実態を表している。   “ガキ共のためのTOP 3が  テレビから流れる  またあの曲を歌うっていうのかい  新しいだけでいいのなら  もう時間の問題だ  ほら次のやつが出番を待ってる” カップリング(B面)はオルガンの音色が印象的なアレンジの「土曜の夜の小さな反乱」で、まもなく三十路の真面目な勤め人が、やり直したいと、きまぐれに足を向けた繁華街に行ったことを後悔する内容。30歳でとうとうおっさんになる、というのも今から思うとちょっと可笑しいけど、DON'T TRUST OVER THIRTYだったからな当時は。 このシングルのレコーディングメンバーは、 ドラム:カースケ ベース:大庭珍太 E.ギター:金井タロー キーボード:ロケット・マツ パーカッション:小松崎政男 というメンバー。バッキング・ヴォーカルには桑田りん、佐藤めぐみ(A面のみ)が参加。

私の放浪音楽史 Vol.103 小山卓治「傷だらけの天使」

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1983年12月12日、CBSソニーからリリースのシングル。 ファーストアルバムから半年で届けられた新曲は1970年代中頃にショーケンと水谷豊が出演していたテレビドラマと同タイトル。私もいろんな面で影響されたドラマ『傷だらけの天使』については 以前も書いた 。 激動の1960年代が終わり、シラケてゆく1970年代を体験した小山卓治がその1970年代を振り返った曲だという。兄弟になった俺達、半端な自由と脆い絆、そして裏切り。曲の後半で歌われる歌詞、“スクリーンの中で男がこう歌う「友よ答えは風の中にある」”は、おそらく映画『バングラディシュ・コンサート』で「風に吹かれて」を歌うディランだろう。 ダイナミックなイントロで始まり、シンプルなビートと掻き鳴らされるアコースティック・ギターのストロークが歌を支えていくが、曲の後半、“せめてこれくらいの格好が お似合いだってあてがわれた 俺達の時代ってやつに せめて最後のお別れを”と歌った後、急激にテンポアップしてフェイドアウト。 B面には「悪夢」を収録。悪夢のような現実の日々、当時一部で広がっていたハンド・イン・ハンドな盛り上がりを一蹴し、自分を欺き、貶めようとする者に抗い、望むものは傷つくことも傷つけることも恐れず、自分の手を汚さなければ掴み取れない。これまでも小山卓治が幾つかの曲で歌ってきた、誰かにあたえられたもので満足することに対する拒絶、あたえられたものじゃなく自分が真に望むものを探し掴み取ること。この曲でもそのために走り出せと歌う。フォーキーな雰囲気がありつつもロッキンなアレンジがいい。 このシングルのレコーディングはファーストアルバムから引き続き小山卓治 with THE CONXで行われており、 ドラム:付岡オサム ベース:大庭チンタ E.ギター:MOONEY E.ギター:金井タロー ピアノ&オルガン:ロケット・マツ サックス:スマイリー・松本 というメンバー。アレンジは「傷だらけの天使」がプロデューサーの前田一郎&THE CONX、「悪夢」はTHE CONXが担当した。モノクロのジャケット写真は井出情児によるもの。 下のジャケ写は作曲・大野克夫、演奏・井上堯之バンドのドラマ主題曲。1974年リリースの4曲入り7インチシングル。 小山卓治のベストをカセットに録音して作った時、この主題曲を入れクロスフェードで小山卓治...

ロック・アーティストの詩集 国内編

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ロック・アーティストの詩集、国内アーティスト編。 『パンタ詩集 ナイフ』(JICC出版局刊・1989年初版) 私にとっては待望のと言ってもよかったかな。パンタが紡ぎ出すポリティカルでロマンチック、アヴァンギャルドでシュールでユニークでラディカル、時に暴走、時に不可解、さらに優しくて聡明な歌詞。えぇ新品で買いましたよ…この詩集は。頭脳警察「銃をとれ!」からソロ・アルバム『クリスタル・ナハト』迄、1970〜1987年の楽曲から、当時未発表の20編を含むパンタ自身が選んだ85編を収録した詩集。ヒロ伊藤と鋤田正義による写真ページ、吉原聖洋による詩の解説と年譜あり。充実した内容だ。帯の裏に書かれた紹介文は橋本治によるもの。 『遠藤ミチロウ全歌詞集 お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』(ソフトマジック刊・2001年初版) ザ・スターリン初の音盤、1980年のソノシート「電動こけし」から2000年の「21世紀のニューじじい」(間寛平への提供曲・ミチロウのヴァージョンはアルバム『AIPA』に収録)まで195編の歌詞を収録している。セルフ・カヴァー9曲入りCD付属。阪本順治(映画監督)と宮藤官九郎による解説あり。 『供花』(思潮社刊・1992年初版) 町田町蔵初の詩集。5章に分かれており134編の詩を収録、5章はINUのアルバム『メシ喰うな!』全曲とオムニバス『レベル・ストリート』収録の「ボリス・ヴィアンの憤り」、カセットブック『どてらい男又(やつ)ら』からタイトル曲を除く町蔵作詞の全曲、アルバム『ほな、どないせぇゆぅね』全曲の歌詞を収録している。1〜4章に収録されている詩の書かれ方として“時に書き下ろしを、時に今までのアルバムやライブの歌詞に手を加えたものを、年代順ではなく意識の流れに沿って書いていった”と記載がある。カセットブックのタイトル曲「どてらい男又(やつ)ら」は手を加えられ書き下ろしの詩となり1章に収められている。いくつかの詩の部分は後にリリースされた楽曲の歌詞になっている(「頭腐」、「出戻り春子」、「パワー トゥ ザ ピープル」)。大座談会と年譜、バンドメンバーの一覧あり。 『それから 江戸アケミ詩集』(思潮社刊・1999年新装第一刷) 初版は1993年に刊行。「試作」と題された6編の詩を含む49編が収められている。アケミの発言を文字起こしして掲載している...

ロック・アーティストの詩集 海外編

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ロック・アーティストの詩集、海外アーティストだとこれだけだな読んだのは。全部古本で安く買ったんだと思う。 『ジョン・レノン詩集』岩谷宏訳(シンコーミュージック刊・1986年初版) ジョン・レノンのソロ代表曲にリンゴ・スターへの提供曲「I'm The Greatest」と「Goodnight Vienna」、ジョニー・ウィンターへの提供曲「Rock And Roll People」を含む、歌詞53編を収録。映画『バックビート』の影響でビートルズに嵌ってた頃に買ったと思う。ビートルズの詩集もどこかにあるはず。 『デビッド・ボウイ詩集 オディティ』北沢杏里訳(シンコーミュージック刊・1985年初版) 1969年『スペース・オディティ』から1984年『トゥナイト』までのアルバムから選ばれた歌詞53編を収録。モノクロで4ページの写真あり。1990年代にライコ・ディスクから再発されたボウイのCDを集めてた頃に買ったと思う。 『マーク・ボラン詩集 ボーン・トゥ・ブギ』中川五郎訳(シンコーミュージック刊・1988年初版) マーク・ボランの1965年デビューシングル「The Wizard c/w Beyond The Rising Sun」からボランの死後リリースされたアルバム『ユー・スケア・ミー・トゥ・デス(邦題・霊魂の叫び)』(1981年)まで、シングルやアルバムから選ばれた歌詞77編を収録。鋤田正義によるモノクロの写真ページ(6枚)あり。Tレックスのオリジナル・アルバム(アナログ盤)を借りてカセットに録音して持ってたから歌詞が読みたくて買ったのかも。 パティ・スミスの詩集『バベル』日本版・山形浩生、中上哲夫、梅沢葉子訳(思潮社刊・1994年) アメリカで1978年に出版された『BABEL』が原本。歌詞集じゃないけど。1990年代中頃にパティのCDがボーナストラック入りでリイシューされた頃に買った気がする。 『ロック・オリジナル訳詩集3・僕にはこう聴こえる』町田町蔵、他訳(思潮社刊・1992年) 海外アーティストの歌詞を日本人アーティストが訳すという試みの3冊目。ほとんどが訳者自身の解釈で日本語にしたというか原詞とは別物で、原詞やタイトル、曲からイメージを膨らませて創作している。町田康の小説を読み始めた頃に町田町蔵の訳詞が読みたくて購入した。町田はフランク・ザッパ(マザー...

ルー・リード詩集『ニューヨーク・ストーリー』梅沢葉子訳

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1992年に初版、2013年に改訂版が刊行され、絶版となっていたルー・リード自選詩集『ニューヨーク・ストーリー』(原題:Between Thougt and Expression)が2024年4月に待望の再刊となった。河出書房新社より。 1992年にCD3枚組ボックスセットともにルー・リードのアンソロジー・プロジェクトのひとつとして刊行された詩集であり、CDボックスセット、詩集ともタイトルは『BETWEEN TOUGHT AND EXPRESSION』と共通のタイトルがつけられた。 VUのファースト・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』からルーのソロ『ニューヨーク』(1989年)、ジョン・ケイルとの『ソング・フォー・ドレラ』(1990年)まで、ルー自身が選んだ87曲の歌詞が収録され、そのなかには、ニコに提供した「Chelsea Girls」やルーベン・ブラデスのアルバム『ナッシング・バット・ザ・トゥルース』(1988年)収録の「The Calm Before the Strom」と「Letters to the Vatican」、マルコム・マクダウェル主演の映画サントラ『ゲット・クレイジー』(1983年)に収録されていた「Little Sister」も含まれる。 他にUnmmuzzled Ox誌に掲載された2編の詩「The Slide」と「Since Hald the World Is H2O」、文芸誌に依頼された小説『ブルックリン最終出口』で知られる作家ヒューバート・セルビー・ジュニアへのインタビュー(結局雑誌には掲載されなかった)と、ローリング・ストーン誌にインタヴューの依頼をされたチェコスロバキアのハヴェル大統領(当時)が、インタビュアーをハヴェル自身が選んでいいのならとルー・リードを指名し実現したインタビュー(結局ローリング・ストーン誌には掲載されず、ミュージシャン誌に掲載された)が収録されている。 ロック系アーティストの詩集(訳詞集)はいろいろ刊行されているけど、海外のアーティストなら訳詞のついてるCDやレコードがあるし、国内アーティストならだいたい歌詞カードが付いてるわけで、それほど詩集として手元に置きたいということもないのだが、2022年にNHK総合で放送された『映像の世紀バタフライエフェクト』・「ヴェルヴェットの奇跡 革命家と...

ザ・ルースターズ、貴重なシングルを、5/15一斉配信開始!その2

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ザ・ルースターズのシングルが5月15日に配信開始されたのにあわせ、日本コロムビアの ルースターズ・オフィシャル・サイト にはファースト・シングル「ロージー c/w 恋をしようよ」についてルースターズのオリジナル・メンバー大江、花田、井上・池畑のインタビュー(というかコメント)が掲載されている。それにザ・ロッカーズとして観ていた穴井も。これは保存版だろう。 右のジャケ写は2017年に再発された7インチ(COKA-55)。なにしろオリジナルは幻だからね…。

私の放浪音楽史 Vol.102 小山卓治「FILM GIRL」

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1983年3月21日、CBSソニーからリリースのシングル。 小山卓治のデビュー7インチシングル。私はデビューアルバムを聴いた後にこのシングルを入手したと思う。アルバムに収録されていた「FILM GIRL #2」のタイトルがなんで#2なんだ?というところから探した気がする。 AB面ともデビュー前に自主制作されていた音源をマスタリングし直してリリースされた(プロモ用の自主制作盤が存在しており、自主盤のジャケットは切り貼り文字の素朴な作り)。地元の練習スタジオで録音され、小山卓治オフィシャルHPの ディスコグラフィ によると、ギターには佐橋佳幸、ベースと編曲で西村昌敏(後にフェンス・オブ・ディフェンス)が参加していると記載がある。 「FILM GIRL」は、彼女がギョーカイに染まっていく様を描いた曲(実体験らしい)で、詞とメロディが同時に出てきて、ものの5分くらいで出来上がったという。アルバム・ヴァージョンよりテンポは遅くアレンジはいかにもシンガソングライターといった感じで、購入時に聴いた時はアルバムとだいぶ違うな、ロックな感じがしないなと思った記憶がある。カップリングの「西からの便り」はオルガンの音色で始まり、ややフォーキーな印象だ。 CBSソニー盤のジャケットには煙草に火をつけるのか、暗闇を照らすためなのか、ジッポライターの火に手をかざす写真が使われている。この手は小山卓治自身の手を写したものだという。デザイン的には後のデビューアルバム『NG!』やセカンドシングルの「カーニバル」も同様だがスプリングスティーンのアルバム『ネブラスカ』のジャケット風デザインと言えるかな。 参考文献:長谷川博一編『ミスター・アウトサイド わたしがロックをえがく時』(1991年大栄出版)、ミニコミ『OYAMA TIMES VOL.1』、『同VOL.2』(1984年りぼん)

ザ・ルースターズ、貴重なシングルを、5/15一斉配信開始!

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2024年5月15日、ザ・ルースターズの7インチ・シングル8枚、12インチ・シングル2枚のAB面に加え、アルバム『KAMINARI』の初回プレスに付属したソノシートの「TRANSMISSION」が配信される。 以下、日本コロムビアの オフィシャルHP より。 配信楽曲LINEUP 1.ロージー(single ver.)/恋をしようよ 2.どうしようもない恋の唄/ヘイ・ガール(アルバム未収録) 3.ONE MORE KISS(single ver.)/DISSATISFACTION 4.GIRL FRIEND(single ver.)/WIPE OUT~TELSTAR(アルバム未収録) 5.レッツ・ロック(日本語 ver.)/ゲット・エヴリシング(日本語 ver.) 6.THE AIR/DESIRE 7.SAD SONG (WINTER VERSION)/HEART'S EDGE (REMIX) 8.SOS/Sunday/Oasis(3曲ともアルバム未収録) 9.Super mix (Stranger in Town) (single ver.)/Mega Mix(アルバム未収録) 10.TRANSMISSION(アルバム未収録) 11.BURNING BLUE/STRANGE LIFE  右上の写真はアルバム『KAMINARI』初回プレスに付属のスペシャル・ソノシート「TRANSMISSION」

Rolling Stone Japan 田家秀樹『J-POP LEGEND CAFE』特集・PANTA追悼

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大阪のFM局 FM COCOLOで放送されている音楽評論家・田家秀樹の『J-POP LEGEND CAFE』で、2024年2月に特集された「PANTA追悼」計4回が Rollin Stone Japan WEBサイト に掲載されている。 頭脳警察の相棒TOSHIとマネージャーの田原章雄、ビクターのプロデューサー高垣健、ライターの志田歩、現在の頭脳警察メンバーおおくぼけいと竹内理恵をゲストに迎えた計4回、いずれの回も興味深い話が満載で読み応えのある内容となっている。 頭脳警察、PANTAソロ、PANTA & HAL、石川セリなどへの提供曲についてやスウィート路線、再結成頭脳警察から、未来の頭脳警察へと話は及び、PANTA亡き後の頭脳警察の活動にも期待が高まる。 第1回 PANTA追悼、TOSHIとディレクターが語る頭脳警察の新作アルバム『東京オオカミ』 第2回 レジェンドプロデューサー高垣健が語る、ビクターのロックの礎を作ったPANTAの音楽 第3回 ライター志田歩が語る、PANTA & HALが追求した頭脳警察とは違うアプローチ 第4回 おおくぼけいと竹内理恵、現・頭脳警察のメンバーが語るPANTA 右上のジャケ写は2020年7月18日リリースの3曲入りEP『絶景かな』。

私の放浪音楽史 Vol.101 小山卓治 with THE CONX『NG!』

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1983年6月22日、CBSソニーよりリリース。 キャッチコピーは「言っちまえばいいんだ。そこから、すべてが始まるんだから」だった。怖いもの知らずのタフなイメージ。熊本出身の小山卓治(当時25歳)が横浜のバンドTHE CONXとタッグを組み作り上げたデビュー・アルバム。言葉とギターを武器に都市(というか東京)を相手に格闘する怒れる若者という印象をアルバム全体から感じる。都市の路上で探しているのは報われる夢、それともハンパな夢なのか。 オープニング、フェイドインで始まる「1WEST 72 STREET NY NY 10023」。ブルースを歌うのが上手い男と上手にダンスを踊る女の出会いから2人が “ダコタ”にたどり着くまでを描いた、まるで16mmのモノクロフィルムを観ているような、それでいて歌詞に出てくるネックレスとかネオンとか壁のポスターとかって言葉の部分はカラーに着色されているようなイメージ。とても映像喚起力のある曲だ。出だしのフレーズ“あんた地下鉄の匂いがする”は、小山卓治が実際に言われた言葉だそう。男が歌うブルースはBRUCEじゃなくてBLUESの方がよかったと思うんだけど(歌詞カードにはBRUCEと書かれている)。 デビューシングルの「FILM GIRL」をTHE CONXと再録、曲名は「FILM GIRL #2」と名付けられた。サックスの響きが都会的で洗練された印象に生まれ変わった。「カーニバル」は真夜中に真実があると信じ、夜の街を彷徨う者達の歌で、2枚目のシングルになった疾走感のあるナンバー。スローなテンポの「ILLUSION」は都市生活者の見る幻影を浮かび上がらせる。  “ 綺麗な服着て綺麗な店で  おいしいものを食べてる君は  みんなとまったく同じに素敵だ ” という歌詞が秀逸。アナログ盤ではここまでがA面。 アナログ盤ではB面トップのモップス「朝まで待てない」(1967年)のカヴァー。個人的にこのアルバムで一番好きなのが、オルガンの響きとベースラインが最高なネオロカ・テイストの「HEAT OF THE NIGHT」で、真夜中の聖者を気取り、ナイフのようなハンドルさばきで246をぶっ飛ばす自称ジョンその連れヨーコ。“約束をタイヤで踏みつけ”ってフレーズが威勢いいが、“ここ”から逃げられない閉塞感も漂う。 少年犯罪というヘヴィな内容をアコースティ...

和久井光司『ディランを歌う WAKUI sings DYLAN』

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ボブ・ディランの曲をカヴァーする日本人アーティストは数あれど、ディランのカヴァー曲でアルバムを1枚作ったのは日本人では和久井光司だけだろう。それも全12曲が和久井自身による日本語詞だ。原曲にほぼ忠実な訳詞もあれば、原曲のエッセンスやモチーフをとらえた意訳、グッと和久井自身に引き寄せた超訳と様々な日本語詞で歌われている。2007年11月28日、ソニー・ミュージック・ダイレクトからリリースされた。 お馴染み「風に吹かれて」はリズムをレゲエに、ゲスト・ヴォーカルにパンタ、あがた森魚、中山ラビ、小室等、サエキけんぞうが参加して、なかなか豪華なオープニング・ナンバー。「メンフィス・ブルース・アゲイン」は、サビの部分が “俺のステージは まだ トラックの上でいい メンフィス・ブルーズ歌う”と訳されているのが面白い。軽快な演奏にディランのメロディの良さを再認識。 超訳といえるのが「ハリケーン」で、9.11同時多発テロの衝撃、腹黒い奴らを告発、ロックンロールとオン・ザ・ロードに生きることを歌う。“ねぇ、寝よう、ねぇ”で始まる「レイ・レディ・レイ」もユニーク。 ベスト・トラックといえるのが「ブラインド・ウィリー・マクテル」。戦前から活躍していたブルースマン、ブラインド・ウィリー・マクテルから名をとったこの曲は、アルバム『インフィデル』(1983年)のアウトテイク。『ブートレグ・シリーズVol.1〜3』(1991年)でアコースティック・ヴァージョンが初めてリリース、その後『ブートレグ・シリーズVol.16 スプリングタイム・イン・ニューヨーク』(2021年)ではバンド・ヴァージョンがリリースされた。和久井はほぼ原曲に沿った日本語詞でブルースとロックを感じさせるソリッドな演奏のカヴァーに仕上げた。サックスとギターのスリリングなソロも聴きどころ。 ラストのアコースティック・ギターとヴォーカルのみで演奏される「運命のひとひねり」もしっとりとしていい。 収録曲は下記の12曲。  1. Blowin' In The Wind  2. Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again  3. The Man In Me  4. Hurricane  5. Jokerman  6. Lay...

SHEENA & THE ROKKETS『#1 SPECIAL EDITON』

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シーナ&ザ・ロケッツのファースト・アルバム『#1』が1979年のオリジナル仕様で鮎川誠秘蔵音源シリーズAYU-Recordsより2024年3月25日にリリースされた。 『#1』は1979年にエルボンよりオリジナルがリリースされ、1986年にヴィヴィッドからアナログ盤、1994年にCHOPからCD化、2004年にヴィヴィッドからCD再発と何度か再発されているが、これらの再発に関してはバンド側に了解なくおこなわれ、鮎川、シーナも全く知らされておらず印税も入っていないということだ。また曲順などオリジナルと異なる仕様でリリースされていたので、オリジナル・エルボン盤仕様での再発は今回が初となる。 通常盤に加えて、初回限定のスペシャル・エディションがリリースされ、スペシャル・エディションには、 下記の3枚のCD、 ・『#1』オリジナル+ボーナス・トラック(通常盤と同じ) ・『#1 MONO』モノミックス ・『御法度盤 鮎川誠の”素晴らしきロックの世界”』(アルファ時代のライブ等秘蔵音源集) それに下記の特典アイテム、 ・鮎川誠とシーナのフォトブック「#1Rokkets FIRST Recording Day」 ・エルボン盤LPミニポスター(両面デザイン) ・特製コルクコースター ・月刊鮎川誠No.5 が特製赤ショッパーに入れられていた(右上の写真)。 アルバム『#1』に関してはマスターテープからではなくシーナの生家から見つかったテスト盤をマスターとしているため若干のスクラッチ・ノイズがあるが通常聴く分にはほとんど気にならない。ボーナストラックで収録されているシングル・ヴァージョンの「涙のハイウェイ」、そのシングルB面曲「恋はノーノーノー」も盤起こしのようだ。 しかし、ようやくオリジナルの曲順・ヴァージョンで『#1』が聴けるのは非常に嬉しいし、オリジナル仕様はしっくりくる。セカンドラインなリズムの「夢見るラグドール」(サンハウスの「夢見るボロ人形」)で始まるのがいい。「レモンティ」をはさんでアルバム・ヴァージョンの「涙のハイウェイ」は、冒頭のSEが無かったり、シーナのヴォーカルや演奏も落ち着いている感じを受ける。これまでプロデューサーとしてクレジットされていた柏木省三の名前は無くなり、プロデュースは鮎川誠となっている。 SHEENA & THE ROKKETS #1 『#...

VARIOUS ARTISTS『LOFT SESSIONS VOL.1 featuring female vocalists』

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先日紹介した平野悠著『 1976年の新宿ロフト 』の中でも触れていた、ロフトが立ち上げた“LIVE HOUSE LOFT SERIES”(通称ロフト・レーベル)としてビクターから1978年3月にリリースされた『ロフト・セッションズ Vol.1 フィーチャーリング・フィメール・ヴォーカリスツ』。素晴らしい夜景のジャケ、そのタイトルからロフトで行われたライヴ・セッションの模様を収めたアルバムと勘違いしそうだが、ライブ作品ではなくロフトに所縁あるミュージシャン達、6人の女性ヴォーカリストによりビクターのスタジオで録音された楽曲を収録している。プロデュースは『1976年の新宿ロフト』で平野悠と対談していた牧村憲一、エクゼクティヴ・ブロデューサーは平野悠。 1970年代の後半、“ライヴハウスから新人を発掘しよう”をテーマにロフトの平野悠が、牧村憲一をプロデューサーとして迎えレコード事業に参入、ロフト・レーベルとしては2枚目のアルバム・リリースが『ロフト・セッションズ Vol.1』だった。 ピピ&コットでデビューしソロでも作品を発表していた吉田佳子はシンガーとして数年間のキャリアがあるものの、他の5人のシンガーはこのオムニバス作品が音源デビューとなった。 ロフトで行われていた新人オーディションで選ばれた大高静子(おおたか静流)、 紀ノ国屋バンドのリード・ヴォーカル高崎昌子(1979年にアルバム『ストリート・センセイション』をリリース)、 1979年にソロ・デビュー・アルバムをリリースする上村かをる、 当時大学生だったという堤遙子、 1978年11月に牧村憲一のプロデュースによりRCAからデビュー・アルバム『ビギニング』をリリースする竹内まりや(『ロフト・セッションズ Vol.1』の表記は竹内マリヤ)。 演奏陣はセンチメンタル・シティ・ロマンス、美乃家セントラル・ステイション、ムーンライダーズ、紀ノ国屋バンド、(金子マリ&)バックスバニー、ラストショウ、ソー・バッド・レビュー等から参加、豪華なメンツとなっている。 内容は「 Light Mellow on the Web 」に詳しく。 右上のジャケ写は2016年に再発された紙ジャケCD。 “LIVE HOUSE LOFT SERIES”で1枚のシングルと4枚のLPをリリースし平野悠はレコード事業から撤退、“ロフトの金欠とレ...

ましまろ「天国の扉」

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真城めぐみ、真島昌利、中森泰弘の3人組ユニット、ましまろが2016年にリリースした2枚目のシングル「遠雷」にボブ・ディランの日本語訳詞カヴァー「天国の扉」が収録されている。 原題「Knockin' On Heaven's Door」、直訳だと“天国の扉を叩く”だが、ディラン・オリジナルの邦題は「天国への扉」だった。 歌われている訳詞は真島昌利によるもので、ほぼ原詞通りだが、ディランの歌詞が2番までなのに対し真島の訳詞は3番まであり、2番の“今までやってきた事が/今夜俺を打ちのめす”と3番の“ママ いい子になれなかった/どうしてもなれなかった”という部分を追加しているようだ。ほぼ日本語に訳し切ったのが潔い。 YouTubeにはシングル「遠雷」に収録されたヴァージョンとは歌詞が違うライヴ音源がアップされている。こちらもすっきりした仕上がりでなかなか良い。 CDシングルの他収録曲は真城めぐみのヴォーカルでボサノヴァなタイトルトラック「遠雷」と、真島がブルースを唸る「海と肉まん」どちらも真島昌利の作詞作曲。

MY PLAYLIST Vol.9『THE VERY BEST OF BRAIN POLICE 1972-2024』

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これまで頭脳警察のベスト盤というと第1期頭脳警察の楽曲から選んだ『頭脳警察BEST』(1987年)や90年代再結成までのベスト『頭脳警察BEST 1972-1991』(1993年)がリリースされているけど、自分の好きな曲で2024年『東京オオカミ』までのスタジオ録音から集めてみたいと思い、CD1枚に収まる収録時間で選曲。入れたい曲がありすぎて「銃をとれ」、「ふざけるんじゃねえよ」、「悪たれ小僧」、「万物流転」といったオフィシャル・ベストに入っている代表曲や、好きなシングル「孤独という言葉の中に c/w 今日は別に変わらない」の2曲、ライヴは除外したので「赤軍兵士の詩」も入れたかったけど外れることに。 以下、私の選んだベスト・オブ・頭脳警察 1972-2024。  1. 最終指令"自爆せよ"   from『歓喜の歌』(1991年)  2. まるでランボー  from『仮面劇のヒーローを告訴しろ』(1973年)  3. 嵐が待っている  from『頭脳警察 3』(1972年)  4. コミック雑誌なんか要らない  from『乱波』(2019年)  5. ダダリオを探せ  f rom『 乱波 』(2019年)  6. 扇動  from『頭脳警察 7』(1990年)  7. 間際に放て  from シングル「時代はサーカスの象にのって」(2008年)  8. サラブレッド  from『悪たれ小僧』(1974年)  9. 指名手配された犯人は殺人許可証を持っていた  from『頭脳警察 3』(1972年) 10. あなた方の心の中に黒く色どられていない処があったらすぐに電話をして下さい  from『誕生』(1973年) 11 さようなら世界夫人よ  from『頭脳警察セカンド』(1972年) 12. 時代はサーカスの象にのって  from シングル「時代はサーカスの象にのって」(2008年) 13. いじわる猫  from『暗転』(2013年) 14. 麗しのジェット・ダンサー/メカニカル・ドールの悲劇/プリマドンナ/やけっぱちのルンバ  from『乱波』(2019年) 15. タンゴ・グラチア  from『東京オオカミ』(2024年) 16. 黒の図表  from『俺たちに明日...

THE GROOVERS「SIMPLE TWIST OF FATE」

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ザ・グルーヴァーズの「 Like A Rolling Stone 」は友部正人の日本語詞だったが、1996年リリースのマキシCDシングル「欠けた月が出ていた」のカップリング曲「Simple Twist of Fate」(邦題:運命のひとひねり)では藤井一彦による日本語詞によるボブ・ディランのカヴァーが聴ける。 ボブ・ディランの名作アルバム『血の轍』収録のアコースティックな原曲のテイストを残しながら、エレクトリックなバンドサウンドにオルガン(エマーソン北村)と女性コーラス(マリー・コクラン)を加えたアレンジ。藤井一彦が自身の訳詞で海外アーティストのカヴァーを録音、音盤化した最初の曲じゃないかな。ほぼ原詞のストーリーを踏襲したなかなか味のある日本語詞になっている。 ネットを見てたらロフトのサイトの Rooftop にグルーヴァーズ20周年時(2011年)のインタビューがあり、グルーヴァーズがトリオになって下北沢シェルターでおこなった1991年の初ワンマン・ライヴのことを藤井一彦が「ボブ・ディランの『LIKE A ROLLING STONE』やリトル・リチャードの『SLIPPIN' AND SLIDIN'』を日本語にして唄ったりしたね。英語を覚えて唄うよりも伝わるかなと思って。考えてみれば日本語吹き替え版カヴァーも長いよね、トリオでの初ライヴからずっとやってるわけだから」と語っている。 このインタビューで「フロントマンであるヴォーカリストが脱退してギタリストが唄うことになったという経緯は、先人で言えばルースターズの軌跡と重なりますよね」と聞かれて、藤井一彦は「実は、ルースターズにあやかって“GROOVERS”の最後の“S”を“Z”にするかどうか迷ったんだよ(笑)。それじゃあまりにパクリだからやめたけど」と答えているのが微笑ましい。

ユーミンストーリーズ NHKドラマ化

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以前ユーミンのトリビュート短編集『 YUMING TRIBUTE STORIES 』を紹介したが、その中から3つの短編「青春のリグレット」、「冬の終り」、「春よ、来い」がドラマ化された。1つの短編を1週月〜木曜4回で放送するようだ。個人的には小池真理子と桐野夏生の作品もドラマ化して欲しかったなぁ。 以下、ドラマの紹介・解説は NHKの「ユーミンストーリーズ」ホームページ より引用。 幅広い層に愛される松任谷由実の名曲からインスピレーションを得て、3人の小説家が生み出した3つの物語。ドラマ化をするために、映画、ドラマ、ミュージックビデオなどで活躍する3人の監督、3人の気鋭脚本家、豪華出演者たち、トップクリエイターが集結。それぞれの創造力が掛け合わされたストーリーは、郷愁の念を抱かせ、切ない気持ちへと誘い、一歩前に踏み出す勇気を与えます。一日の終わりの15分、ユーミンの名曲に思いはせながらホッと一息つけるオムニバスドラマを3週に渡ってお届けします。 第1週「青春のリグレット」(15分×4話) 3月4日(月)~7日(木) 夜10時45分 【原作】綿矢りさ 【脚本】岨手由貴子 【出演】夏帆、金子大地、片桐はいり、中島歩 ほか 【語り】ジェーン・スー 【演出】菊地健雄 <あらすじ> 結婚して4年で夫に浮気され、夫婦関係が破綻しかけている菓子(かこ) [夏帆]。まだやり直せる。そう考えた菓子は夫の浩介[中島歩]を旅行に誘うが、その旅先で、昔ある人に言われた言葉が実は重要な意味を持っていたことに気づき・・・。青春時代の記憶が後悔となって呼び起こされる、ほろ苦い恋の物語。 「青春のリグレット」収録アルバム『DA・DI・DA』(1985年) 第2週「冬の終り」(15分×4話) 3月11日(月)~14日(木) 夜10時45分 【原作】柚木麻子 【脚本】ねじめ彩木 【出演】麻生久美子、篠原ゆき子、伊東蒼、クリスタル ケイ、浅田美代子 ほか 【演出】箱田優子 <あらすじ> スーパーでパートとして働く藤田朋己[麻生久美子]は、新しく入ったパートの仙川真帆[篠原ゆき子]と全く会話が続かず気まずい思いを募らせる。しかし有線である曲が流れた時、初めて変化が訪れた。もう一度、少しだけ日常に変化を。一人の思いをくみ取ったパート仲間によって、ちょっとした大ごとに発展してしまう友情の物語。 「冬の終り」収...