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MY PLAYLIST Vol.11 TRIBUTE TO THE VELVET UNDERGROUND『WHITE LIGHT / WHITE HEAT』

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ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはアンディ・ウォーホルから離れ、ニコも去っていった。ルー・リードとジョン・ケイルの双頭といえる体制となって制作されたヴェルヴェッツ2枚目のアルバム『ホワイト・ライト / ホワイト・ヒート』。ハーモニーとリリシズムはフリーキーでヴァイオレントなサウンドに粉砕されていった。 まっ白な光しか見えなくなり、つま先が熱くなるというドラッギーな状態を表現したという「White Light / White Heat」は、そのコーラス部分こそ前作に通じるポップなナンバーだったが、そのほかは轟音と不協和音、不穏なフィードバックの洪水ともいえる。 かつて学生時代に友人の車の後部座席に座り、リアウインドウの下に置かれたスピーカーで頭の両側からこのアルバムを大音量で聴いた40分間は、その凶暴さに恐れをなしたものだ。 このアルバム収録曲も多くのカヴァー・ヴァージョンがあるが、以下、手持ちの音源から私の選んだ、TRIBUTE TO 『WHITE LIGHT / WHITE HEAT』  1. White Light / White Heat  The Professionals  2. The Gift 2 The Bollock Brothers  3. Lady Godiva's Operation Chapterhouse  4. Here She Comes Now Nirvana  5. I Heard Her Call My Name Half Japanese  6. Sister Ray Joy Division Track 1. シングル「 1-2-3」(1980年) Track 2. アルバム 『ザ・ラスト・サパー』 (1983年) Track 3. 4. 5.    Various Artists『アン・ピーシング・ザ・ジグソウ』 (2009年) Track 6,  アルバム『スティル』(1981年) という内容。 「White Light / White Heat」はセックス・ピストルズ解散後にスティーブ・ジョーンズとポール・クックがアンディ・アレンを加えて結成したザ・プロフェッショナルズが1980年にリリースしたセカンド・シングル「1-2-3」にカップリングされていた。ピストルズ・テイストが堪能できるカヴァーに仕上がっていてカ

MY PLAYLIST Vol.10『TRIBUTE TO THE VELVET UNDERGROUND & NICO』

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ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのファーストアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』。1966年にほぼ4日間で録音され、リリースされた1967年当時は全米ビルボードチャートの171位という結果だったが、1970年代後半のパンク、ポスト・パンク、ネオ・サイケデリックの多くのバンド・アーティスト達に支持された。いわくこのアルバムを聴いた奴は“全員が音楽を始めた”という。幻想と現実、ハーモニーとカオスをポップ・アートで包み込んだ『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』は、今となっては絶大な影響力を持つモンスター・アルバムである。 数多くのカヴァー・ヴァージョンがあるが、手持ちのディスクから、以下、私の選んだ『TRIBUTE TO THE VELVET UNDERGROUND & NICO』  1. Sunday Morning  Strawberry Switchblade  2. I'm Waiting For The Man Vanessa Paradis  3. Femme Fatale Teenage Fanclub  4. Venus In Furs Jim O'Rourke  5. Run Run Run The Motorcycle Boy  6. All Tomorrow's Parties Japan  7. Heroin  Echo & The Bunnymen  8. There She Goes Again R.E.M.  9. I'll Be Your Mirror The Primitives 10. The Black Angel's Death Song Smile Kick 11. European Son Ride Track 1. 12インチ・シングル「 Since Yesterday」(1984年) Track 2. アルバム『ビー・マイ・ベイビー(原題:バネッサ・パラディ)』(1992年) Track 3. CDシングル「 Ain't That Enough」 (1997年) Track 4. 10. Various Artists『VUトリビュート RABID CHORDS 002』 (2000年) Track 5.  11.  Various A

『ルースターズの時代 THE ROOSTERS AND THE ROOSTERZ』発売

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シンコーミュージック・エンタテイメントからインタビューブック『ルースターズの時代 THE ROOSTERS AND THE ROOSTERZ』が発売される。 シンコーミュージックのHPによると下記の内容が予定されている。 【予定CONTENTS】 第1章:ルースターズ前史 第2章:ファースト〜セカンド・アルバム 第3章:映画「爆裂都市」〜『INSANE』 第4章:「ニュールンベルグ・セッション」 第5章:『DIS.』『GOOD DREAMS』『Φ PHY』 第6章:「SOS」『NEON BOY』 第7章:『KAMINARI』『PASSENGER』 第8章:『FOUR PIECES』 第9章:アフター・ルースターズ 詳しくは シンコーミュージック・エンタテイメントのHP へ。 発売は2024年11月25日。

THE VELVET UNDERGROUND『AVANT 1958-1967』

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2019年7月24日、ETERNAL GROOVESよりリリースのコンピレーション。 ニコはジャック・ポワトルノー監督の映画『ストリップ・ティーズ』(1963年・日本未公開)の主役に起用され(クレジットはクリスタ・ニコ)、ニコが歌うセルジュ・ゲーンズブール作の主題歌「Strip-Tease」のリリースも検討されたが最終的にはジュリエット・グレコの歌でリリースされている。しかしニコが1962年に録音したデモ・ヴァージョンが2001年にリリースされたセルジュ・ゲーンズブールのCD3枚組コンピレーション『Le Cinéma De Serge Gainsbourg (Musiques De Films 1959-1990)』に初めて収録された。 ニコがアンドリュー・オールダムのイミディエイト・レコードからシングル「I'm Not Sayin'」でデビューした1965年よりも前に録音されたニコの歌声を聴いてみたいなーと思っていたところ、このVUのコンピレーションCD『アヴァン 1958-1967』に収録されているのを知って購入。ニコの「Strip-Tease」はとてもミステリアスな雰囲気だが作者のゲーンズブールはニコの低音が気に入らずサントラへの収録は見送られたという。 このCDはヴェルヴェッツの1966年の“セプター・セッション”を収録したアセテート盤から9曲、ヴェルヴェッツの1965年のデモ3曲、「Factory Jam」と題されたジャム・セッションが2曲、ルー・リードのヴェルヴェッツ以前のレコーディング4曲、それにニコの「Strip-Tease」とイミディエイトからのファーストシングルAB面「I'm Not Sayin'」「The Last Mile」を収録している。 Track List Scepter Sessions 1966(Acetate) 1. All Tomorrow’s Parties 2. I’m Waiting For The Man 3. Femme Fatale 4. Venus In Furs 5. Run Run Run 6. Heroin 7. I’ll Be Your Mirror 8. The Black Angel’s Death Song 9. European Son Demo & Rehe

NICO『LIVE IN DENMARK』

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1983年、VU Recordsよりリリースのライヴ・アルバム。 ニコの『ライヴ・イン・デンマーク』を買ったのはいつ頃だろう。ザ・ルースターズが1984年の夏におこなった7日間のライヴの4日目にニコの「Saeta」をカヴァー(ヴォーカルは安藤広一)したの知って聴いてみたいなと思ったのがきっかけだから1985年頃か。池袋の山野楽器で買った記憶はある。どーんとニコのアップのピクチャー・ディスクが迫力あってかっこいいよね。 このアルバムにはライヴのデータはクレジットされていないが、和久井光司責任編集『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド完全版』(河出書房新社・2021年)よると1982年10月6日、デンマークのクラブ・パラマウントでおこなわれたライヴで、バックバンドはザ・ブルー・オーキッズと記載がある。 フェイドインで始まり、静かで緊張感のある演奏とニコのヴォーカルが空間に深く浸透してゆく「Saeta」。タイトなリズム・アレンジでギターが活躍する「Vegas」。この2曲は1981年に7インチ・シングル「Saeta c/w Vegas」としてリリースされているが、このライヴではどちらもキーボードが使われておらずシンプルなバンドサウンド。「60/40」(下山淳が1990年に結成するバンド名の由来か)は1981年にリリースされたアルバム『ドラマ・オブ・エグザイル』収録曲。このバンドサウンド3曲の流れがいい。続いてニコがハーモニウムを弾きながら歌うのはアルバム『ジ・エンド』(1974年)収録曲の「Valley of The Kings」とアルバム『デザートショア』(1970年)収録曲「Janitor of Lunacy」の2曲でどちらも味わい深い。やはりニコの真髄というか、ニコの本来の表現はハーモニウムと共にあると思う。ここまでがアナログ盤A面。 B面トップはボブ・ディラン作、ニコのファースト・アルバム『チェルシー・ガール』(1967年)収録曲でアコースティック・ギターのみで歌われる『I'll Keep It With Mine』。続いて“ルー・リードのナンバーを”と紹介してヴェルヴェッツの「Femme Fatale」は、ギターの音色やアレンジが好み。同じくヴェルヴェッツの「I'm Waiting For My Man」とデイヴィッド・ボウイの「Heroes」の2曲

THE ROOSTERS『The Basement Tapes~Live at Shibuya eggman 1981.7.14』タワーレコード限定再発

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2003年にハガクレ・レコードからリリースされた、ザ・ルースターズの1981年7月14日渋谷エッグマンでのライヴ盤がアナログ・レコードとCDでタワーレコード限定再発。詳しくは タワーレコードの詳細ページ へ。 2003年のオリジナル・リリース(右の画像)ではCD1枚目にリハーサル7曲+第一部12曲、CD2枚目に第二部17曲を収録したCD2枚組だった。2007年にも廉価で再発されている。 今回のタワーレコード限定再発では第一部12曲を『The Basement Tapes~Live at Shibuya eggman 1981.7.14. 1st show』としてCD1枚(アナログLPも1枚)でリリース。第二部17曲+リハーサル7曲を『The Basement Tapes~Live at Shibuya eggman 1981.7.14. 2nd show+Rehearsal』としてCD1枚(アナログLPは2枚組)でリリース。まぁ要するにバラ売りですな。 発売日はいずれも2024年11月25日。ジャケットは新装されていて初期のストーンズ&ビートルズな感じ?2024年リマスターで解説は新たに書き下ろされている。

安部公房著『箱男』

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石井岳龍監督作品・映画『箱男』の原作(1973年発表)。これまで安部公房の小説を読んだのは『砂の女』くらいかな。先日電車移動する用事があって、駅で時間があり構内の本屋にふらっと入ったらこの映画版『箱男』のほぼ全面帯カバーがかかった文庫本(新潮文庫・右の画像)が売られていたので購入。まぁ映画観て原作読んでみたいなと思っていたんだが。 最初から難解な小説なのかなと思って読み始めるとほぼ映画と同様に話が進むので難なく読めて、面白く、ぐっと物語に引き込まれていくが、後半になって物語はぐねぐねと捩れ、迷路に迷い込んだような、どの章とどの章が関連しているのか、この章はあの章の前の話なのか、この人物とあの人物は同じなのか、などと考えてしまう、次元を超えた摩訶不思議な、構造の複雑な物語である。 “箱男は蛹である”、という記述や、今に通じる“ニュース中毒者”の逸話は興味深い。見る、覗く、書く、触れる等についての、そして匿名希望者についてのエクペリメンタルでイマジネイティヴな物語でもある。 原作を読んでこの不可思議な小説を映画化するのに石井岳龍ほどうってつけの監督はいないなと感じたし、映画におけるキックボードで移動する葉子の脚の際立たせ方や、軍医殿のダークで歪んだキャラクター、ワッペン乞食とのバトルシーンなど原作からイメージを膨らませた映像があらためて上手いなと感じた。原作にあったピアノを弾く体操の教師と少年D、箱男の父親に引かれた荷馬車に乗って結婚式へ向かうショパンという名の花婿の逸話は映画では描かれていなかったけど、このあたりは70年代的アンダーグラウンド感が強くなるため省かれたか。 もとの文庫本表紙 カーブミラーに映った家の写真で、撮影したのは安部公房。不思議で奇怪な雰囲気のある写真だ。この表紙装丁をいつから使用しているか分からないが、文庫初版は1982年(昭和57年)、2024年で74刷だ。 箱という蛹からどんな生き物が現れたのか、映画を観ても原作を読んでも私には謎のままである。

My Wandering MUSIC History Vol.108 DATE OF BIRTH『思い出の瞳』

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1986年8月25日、キティ・レコードよりリリースの12インチ・シングル。 ポートレートからリリースされた10インチ・アルバム『AROUND + AROUND』はタワーレコード経由でヨーロッパ、アメリカなど海外に輸出され反響をよび英モビルスーツやヴァージン傘下のレーベルから契約の打診があり、国内のレコード会社でも争奪戦となったというが、福岡在住を契約の条件にしていたデイト・オブ・バースの面々は、その条件を受け入れたキティ・レコードと1986年4月に契約。ポートレート盤に収録されていた「Remember Eyes」を再録し「思い出の瞳」として12インチ・シングルでリリースした。ジャケットはエンボス紙仕様で、いしかわこうじのイラストを使用。 帯には “海外では有名です、デイト・オブ・バース” のキャッチフレーズに、次の紹介文が記載されている。 “ロンドンをはじめ、海の向こうのPOPシーンでは既に高い評価を受けている注目の<デイト・オブ・バース>。ついに12インチシングルで登場です。おしゃれで、やさしくて、すこし懐かしい。絶対にお得な3曲入り1200円です。全国東宝系公開アニメーション映画「扉を開けて」エンディングテーマに決定。” 「思い出の瞳」は1987年にリリースされるキティからの最初のアルバム『夢と涙の日々』にも収録されているが、12インチにはアルバムより収録時間が40秒ほど長く収録されている。アルバム『夢と涙の日々』の帯裏にはロング・バージョンの記載がある。 アルバム『夢と涙の日々』帯裏より B面には、冷んやりとしたテイストの「冬空の子供達」、ポップでキャッチーな「スカートの丘」をカップリング。どちらも涙をたたえた少年少女の姿を描いた、と思える歌詞の内容で作詞はNORICOと重藤進。「スカートの丘」はこの12インチでしか聴けないのが残念な佳曲。 「思い出の瞳」は新井素子原作のアニメ映画『扉を開けて』(キティ・フィルム 1986年公開)の主題歌になり同映画のサウンドトラック・アルバムにも収録された。

My Wandering MUSIC History Vol.107 DATE OF BIRTH『AROUND + AROUND』

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1985年11月1日、ポートレート・レコードよりリリース。 デイト・オブ・バースの初音源となるファースト・アルバム。ポートレート・レコードは当時ルースターズのプロデューサーだった柏木省三がオーナーのレーベルで、この10インチ・アナログレコードが最初のリリースだった(カタログNo.はP001)。 1曲目の「Pack My Bag」。破壊力のあるリズムトラック、マーク・ボランのようでもありテレヴィジョンのトム・ヴァーレインのようでもある痙攣するギター、セクシーでミステリアスなヴォーカル、幻惑的かつスペイシーなキーボード、圧倒的な魅力を感じられる1曲で、私は友人のルースターズ・ファンだったKBちゃんに当時「こんなのあるよー」と借りて聴いたのだが、このクリエイティヴでセンスあるサウンドに驚いたものだ。 続く「Space To Time」と「Mistress of The Night」は、暗闇と星々といったイメージのベーシックはシンプルなドラムレスの曲だが、ファンタスティックなシンセ・ブルースと呼んでいいかも。機械仕掛けのオモチャのような、宝箱のフタを開けたようなイメージ溢れる、サンプリングを多用したサウンドの「Remember Eyes」は、このアルバムの中では唯一日本語詞で歌われ、後々までデイト・オブ・バースの代表曲になるポップな曲。エレクトロでカラフルでダンサブルなサウンドの「Fresh Chapter "Mixed Up 1967"」はキュートなヴォーカルも魅力。ラストの「Backward」は1分に満たないインスト。 全体で約20分のコンパクトなアルバムだが初期デイト・オブ・バースの魅力がぎっしり詰まっている。彼らが管理を任せられていたフチガミ・レコーディング・スタジオで録音され、プロデュース、エンジニアリング、ミックスはデイト・オブ・バース。コ・プロデュースは柏木省三。アートワークはルースターズのジャケットを多く担当した鏑木朋音で、このジャケットに使用している写真はジャン・コクトーの映画『詩人の血(原題:Le Sang d'un poète)』から。 「Pack My Bag」はプロモ・ヴィデオも作られており、ロケットが墜落・爆発するシーンや人力飛行機が飛行に失敗するシーンやトリケラトプスのソフビ(?)がサングラス美女と絡まったり、火山が

映画・石井岳龍監督作品『箱男』

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2024年8月23日公開、石井岳龍監督最新作『箱男』。 2007年にリリースされた『石井聰亙・DVD-BOX II』のブックレットに、1997年に制作が頓挫した『箱男』の記載があり当時の箱男のデザイン画や写真なども掲載されていて面白そうだな!と思っていたので、27年の時を経て映画が公開されることを知った時は、ぜひ観に行かねばと思っていた。近所のシネコンで上映してなかったので、少し離れたところにある別のシネコンへ車で出かけ鑑賞。パンフレットも買った(右の画像) 安部公房が1973年に発表した小説を映画化。刺激的でエクスペリメンタルな内容の面白さというのもあるけど、見た目の“タテ型洗濯機”のダンボール箱を被った男が、街に潜む!走る!闘う!姿を見るだけでも単純に楽しい(先の『石井聰亙・DVD-BOX II』ブックレットのデザイン画では箱男は“三菱製チルド冷蔵庫”のダンボール箱を被っていた)。 従属を拒み、匿名性を手に入れ、未登録な存在として社会を、世界を覗き見る箱男の存在とは何なのか。“誰が”箱男なのか。難解な物語ではあるが石井監督は娯楽性を盛り込み、デイヴィッド・リンチ的な雰囲気もありつつ、これぞ石井監督!のバトルシーンやサイケデリックなイメージもあり、スラップスティックでメタフィクショナルなエンターテイメント作品である。 迫力と繊細さをあわせもった演技をみせる個性的な男優3人、永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市。オーディションで選ばれた白本彩奈は、ベテラン男優達を翻弄するようにミステリアスな魅力を放ち存在感のある演技を観せた。 そして物語の終わり、現代に生きる我々にとっての箱とは何か、を考えることになる。 石井岳龍監督作品 映画『箱男』(2024年)flyer

鮎川誠 & BLANKEY JET CITY「I'M FLASH “Consolation Prize” (ホラ吹きイナズマ) 」

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2024年10月2日にビクターより鮎川誠の追悼盤『VINTAGE VIOLENCE 〜鮎川誠 GUITAR WORKS』がリリースされるが、鮎川とBLANKEY JET CITYの共演「 I’M FLASH “Consolation Prize” (ホラ吹きイナズマ) 」が8月21日に先行配信され、ビクターエンタテイメントのオフィシャルYouTubeチャンネルで公開されている。 1999年12月に録音され、映画に使用される予定だったが、映画自体がお蔵入りしたことで未発表となっていたレアトラック。 オリジナルはロケッツ(鮎川+浅田+川嶋)のアルバム『ロケット・サイズ』に収録されていた。 THE ROKKETS『ROKKET SIZE』(1984年)

香坂みゆき「気分をかえて」

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まだまだ暑いので…夏らしいアートワークのジャケットを…その4 夏らしいジャケットを7インチでと思ったがあまりなかった。最後は香坂みゆきの水着姿ジャケット「気分をかえて」(1981年)。といってもA面のタイトル曲は夏らしくはない山崎ハコ作詞作曲のブルースをぶっとばせ!Leave Me Alone!的な歌で、サウンドはブロンディ「コール・ミー」似でスピーディなアレンジ。 なので、どちらかというとジャケに合ってるのはカップリングの「サマー・ブリーズ」のほうで、爽やかな正統アイドル・ソング。作曲と編曲は林哲司。作詞は阿里そのみ(近年ブームとなったジャパニーズ・シティ・ポップで人気のある西城秀樹「かぎりなき夏」の作詞を担当しており、この作詞家については、ALFA MUSICのnote「 西城秀樹の「かぎりなき夏」を生み出した、作詞家・ありそのみと作曲家・滝沢洋一 “奇跡の出会い 」(text:都鳥流星)に興味深い記述あり)。 たぶんリリースされた当時に買ったと思うけど、なんで買ったのかなぁ。ジャケ買いか。おそらく初めて買ったアイドルのレコードじゃないかな。

南佳孝「モンロー・ウォーク」

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まだまだ暑いので…夏らしいアートワークのジャケットを…その3 南佳孝も夏のイメージが強い印象あるかな。 ジャケは2種類あり、これはセカンドプレスらしいが、夏っぽいイメージだけどシュールな感じ。なかなか ゴージャスなアレンジの 「モンロー・ウォーク」 。 カップリングはストリングスが涼しげな「渚にて」。AB面とも作詞:来生えつこ、作曲:南佳孝、編曲:坂本龍一の、シーサイドなサマーソング。 「モンロー・ウォーク c/w 渚にて」(1980年) 銀色のさざ波 夕陽のプリズム 浜辺のパラソルけだるく なびいて揺れる 「渚にて」

『Let's Go Steady―Jポップス黄金時代!』「40年目の真実――加藤和彦とパンタ 40年前の幻の対談を復刻!」

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雑誌『MUSIC STEADY』初代編集長のブログ『Let's Go Steady―Jポップス黄金時代!』に「 40年目の真実――加藤和彦とパンタ 40年前の幻の対談を復刻! 」と題された加藤和彦とパンタの対談が再掲されている。 万人の心を打つ音楽について、ロックについて、刺激を受けているものについて、パンクについて、等々語っており興味深い読み物となっている。 初出は雑誌『MUSIC STEADY』1984年3月号で、加藤和彦はアルバム『あの頃、マリー・ローランサン』、パンタはアルバム『SALVAGE(浚渫)』を前年の1983年にリリースしている。対談はリレー形式で、加藤和彦がパンタを対談相手に指定したという。 「壁にかける絵のような」加藤の音楽と“鉄のフックでおまえの身体引き揚げる”(「SALVAGE」)と歌うパンタの音楽。この時点で二人のやりたい音楽に差はあれど、グラム・ロックでは共通点あるだろうし、対談の中で二人ともウォーカー・ブラザース好きだったり、ぜひ加藤和彦のプロデュースで作品作って欲しかったなぁ。対談の中ではスウィート路線の3作目になるはずだったカヴァーアルバムを作ろうとした頃、加藤和彦にプロデュースを依頼するって話があった、という記載がある。 それにパンタ自身が『クリスタル・ナハト』が終わったらプロデュースを「加藤さんに頼みにいくかもしれない」と対談で語っているから、構想10年といわれた大作『クリスタル・ナハト』をリリースして、一息ついたアルバムを作るときには加藤和彦にプロデュースを頼んでもいいかな、と思ったのかも。そう考えると『〜ナハト』の後のアルバム『P.I.S.S.』にはそんな雰囲気があるね。もし『P.I.S.S.』を加藤和彦がプロデュースしてたら、もうすこしソフィスティケイトしたサウンドになったかな。でもこの頃のパンタは頭脳警察再結成を控えてかなりハード寄りになっていたからなぁ。 加藤和彦とパンタと聞いて思い出すのは、A面を安井かずみ・加藤和彦、B面を作曲:パンタ(作詞は青木茗=金井夕子)で分けあった岩崎良美のシングル。名盤。 「マルガリータ・ガール c/w Vacance」(1982年) まぁアルバム1枚じゃなくて、シングル1曲でもいいから加藤和彦のプロデュースでパンタの楽曲を聴いてみたかったな…。

追悼・Carl Bevan

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60FT DOLLSのドラマー、カール・ビヴァンが亡くなった。まだ51歳だった。 パワフルでシャープなドラムが魅力で60FT DOLLSのダイナモだった。いつかカールとリチャードとマイクの3人で…と思っていたが、それは永遠に叶わぬこととなった。 CARL BIVAN  60FT DOLLS 「New Loafers」「Talk To Me」 amassのニュース記事「 ウェールズのロック・トリオ 60FT・ドールズのドラマー、カール・ビイヴァン死去 」 BBCのニュース記事「 Drummer from 1990s rock band 60ft Dolls dies 」 SONIC GYPSIES「 UNOFFICIAL 60FT DOLL HOME PAGE 」 RIP…

高中正義「Blue Lagoon」

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まだまだ暑いので…夏らしいアートワークのジャケットを…その2 夏といえば高中、という時期があったよなぁ。Breezyなサウンド。高中を代表する2曲をカップリングした7インチ。ジャケはそれほど夏じゃないかな。 「Blue Lagoon c/w Ready To Fly」(1980年) Instrumental

パンタ「渚にて」

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8月7日立秋だけど、まだまだ暑いので…夏らしいアートワークのジャケットを…。 「渚にて c/w 想い出のラブ・ソング」(1982年) Ah 色褪せてく 夏の中でキミよ光れ Ah セピア色の サマーシネマよみがえる

追悼・フジコ・ヘミング

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2024年4月21日、フジコ・ヘミング逝く。92歳だった。 クラシック音楽を学校の授業ではなく、自ら聴くようになったのはいつだろう。映画で使用された楽曲で印象に残ったのはキューブリック監督『2001年宇宙の旅』のシュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」、コッポラ監督『地獄の黙示録』のワーグナー「ワルキューレの騎行」、大林宣彦監督『さびしんぼう』のショパン「別れの曲」(日本語詞をつけて主演の富田靖子が歌った)などなど、ロック関連ではEL&Pの「展覧会の絵」や冨田勲の『惑星』を聴いたりしたけど、もっと強く印象に残ったのはブライアン・イーノが『ディスクリート・ミュージック』で使用したり、戸川純が歌詞をつけ「蛹化の女」として歌い、遠藤ミチロウも歌詞をつけて歌った「パッヘルベルのカノン」で、元曲が聴きたくてこの曲が入ったカラヤン指揮・ベルリン・フィル演奏のCDを買ったのが初めてだと思う。モモヨがインスパイアされてリザードのアルバム『 ジムノペディア 』を作ったというエリック・サティ「ジムノペディ」の入ったCDを買ったり。ショパンの「別れの曲」はホロヴィッツのCD買ったな。 1999年2月に放送されたNHK・Eテレのドキュメンタリー『ETV特集』「フジコ〜あるピアニストの軌跡」は、たまたま見ていたのだが、フジコの波乱の人生、その人物像、華麗な「ラ・カンパネラ」の演奏は驚きだった。このドキュメンタリーは評判を呼び、フジコは一躍注目されることになる。私の職場でもビル・エヴァンスなどのジャズ好きのAKさんが「見た。フジコの演奏いいね」と言っていた。1999年8月にはCD『奇跡のカンパネラ』がリリースされ大ベストセラーとなる。AKさんが早速買ったので借りて聴いた。フジコは1931年12月生まれだから、この時67歳。この後、フジコを題材としたドラマ、映画、ドキュメンタリーなどの番組がつくられ、フジコの演奏を収めたCDも続々とリリースされ、フジコのコンサートには多くのファンがつめかけた。 髪をカラフル染め、首にスカーフを巻いて、ブレスレットをはめ、演奏中にジャラジャラ音をたてそうな大きなイアリングをつけてピアノを弾くフジコ。「自分らしく血の通った演奏をしたい」、「音を飛ばしたって、間違ったってかまわない。機械じゃないんだから」と強く自己主張をするフジコは、さしずめクラシックのヴ

追悼・JAMES CHANCE

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2024年6月18日、ジェームス・チャンス逝く。71歳だった。 NO WAVEムーヴメントの代表的な人物のひとりジェームス・チャンス(本名:ジェームス・シーグフリード)はリディア・ランチとともにティーンエイジ・ジーザス&ザ・ジャークスを結成、フリクション結成前1977年3月にニューヨークに渡ったレックはジェームスとリディア・ランチに誘われティーンエイジ・ジーザスにベーシストとして加わっている。ジェームス・チャンスはティーンエイジ・ジーザスを脱退後コントーションズを結成、レックを追ってニューヨークに渡ったチコヒゲはジェームスに誘われコントーションズの2代目ドラマーとなる。 レック達が関わったNO WAVEといわれたバンド・アーティスト達の音楽性、実験性、芸術性に限らず日常の行動や言動から受けた影響は、帰国後フリクションを形作る大きな初期衝動となった。それゆえ日本において日本のパンクロックについて振り返るときには、必ずフリクションとともにNO WAVEについて語られることになる。それにNO WAVEというムーヴメントを世界的に表出したオムニバスアルバム『 NO NEW YORK 』(1978年)が、日本ではリリース当時から一貫して評価が高く、NO WAVEの衝撃が特に大きかったと言っても良いだろう。そのアルバムに収録された DNA にはレックと共に渡米したモリイクエがドラマーとして参加している。 右上の本はジェームスが来日した2005年にエスクァイア・マガジン・ジャパンから刊行された『NO WAVE ジェームス・チャンスとポストNYパンク』。コントーションズに限らず、DNA、マーズ、ティーンエイジ・ジーザス&ザ。ジャークスのライヴ告知フライヤーの画像や、ジェームスへの100の質問、ジェームス邸訪問、チコヒゲが語るニューヨークでの生活、ファンジン「WATCH OUT Vol.2」からレックのインタビューとモリイクエの私信の再掲、PHEW、大友良英、山野直子などがジェームスやNO WAVEについて語り、椹木野衣によるジェームス・チャンスとNO WAVEの芸術性についての考察は非常に興味深い。スクリーミング・マッド・ジョージや塩井るりが当時のニューヨークを振り返り、ZEレコード創立者マイケル・ジルカによるNO WAVE入門など、当時のニューヨーク、パンク、NO WAVEの雰囲

My Wandering MUSIC History Vol.106 TOM WAITS『CLOSING TIME』

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1973年、アサイラム・レコードよりリリースのアルバム。 このアルバムを聴いたのは1980年代初め頃。その頃聴いたアメリカのバンドやアーティストで強く影響を受けたアルバムが3枚ある。ブルース・スプリングスティーン『 明日なき暴走 』、テレヴィジョン『 マーキー・ムーン 』、そしてこのトム・ウェイツのデビュー・アルバム『クロージング・タイム』だった。 ジャケットのトム・ウェイツが寄りかかる古ぼけたピアノの上には吸い殻の山になった灰皿、グラスに酒瓶、右上の時計の針は(おそらく午前)3時20分過ぎを指している。閉店時間(CLOSING TIME)だ。アルバムの内容を感じさせるカヴァーアート。 オープニングは夜明けを55年型の車に乗って走る情景を描いた「Ol' 55」。ピアノのリリカルな響き、アコースティックなセット中心のゆったりしたサウンドが心地よい。この曲はイーグルスがカントリーなフレイヴァーでカヴァーし『オン・ザ・ボーダー』(1974年)に収録された。フォーキーな「I Hope That I Don't Fall In Love With You」、ジャジーな「Virginia Avenue」、カントリーな「Old Shoes (& Picture Postcards)」、ミュートしたトランペットの音が優しいロマンティックな子守唄「Midnight Lullaby」、アナログ盤だとA面のラストだった切なく苦い「Martha」は40年以上前に付き合い別れた女性へのメッセージ。俺の全てはお前で、お前の全てはおれだった、だけど二人が一緒にいられない理由は、俺が男だったからだ、という男女間の友情がテーマなのかも。 アナログ盤だとB面の始まりはマーサに続いて女性の名前ロージーに語りかける「Rosie」、トム・ウェイツのピアノとヴォーカルのみで思い焦がれる感情を歌うセンチメンタルな「Lonely」、アップテンポな「Ice Cream Man」はセクシャルなイメージの歌詞で歌われ、曲の終わりにはイントロのピアノのメロディがオルゴールの音色となって幻惑的に響く。続いてこれもまた美しいメロディを紡ぐ「Little Trip To Heaven (On The Wings of Your Love)」、夜空に輝くグレープフルーツのような月とひとつの星、消えてゆく輝