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竹内まりや DUET WITH 大瀧詠一「 恋のひとこと~SOMETHING STUPID~」

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2014年12月3日、ソニー/ナイアガラからリリースのベスト・アルバム『Best Alaways』より。 大瀧詠一が亡くなって1年経つ。この12月にはレーベルを超えたベスト・アルバムがリリースされた。1971年4月にリリースした、はっぴいえんどの「12月の雨の日」(シングル・ヴァージョン)から2003年10月リリースの「恋のひとこと~Something Stupid~」(竹内まりやとのデュエット)まで、およそ32年間の作品の中からシングルをメインに選曲された35曲。レア・トラックは「夢で逢えたら」の未発表・大瀧詠一ヴォーカル・ヴァージョン。それに幾つかのシングル・ヴァージョンや別ミックスが初CD化収録されている。初回生産限定盤はカラオケを10曲収録したボーナスディスク付きの3枚組。 収録曲のほとんどは(ミックス/ヴァージョンを別にすれば)既に聴いたことがあるから購入をためらっていたけど、代表曲をまとめて聴けるしってことで購入。このベストを通して聴いて思ったのは、はっぴいえんどというキャリアは大瀧詠一にとって異質なものだったんじゃないかな、ということだった。もちろんミュージシャンとしてのキャリアの始まりだが、自分の嗜好の取入れ/表出にかなり抑制がかかっていたのであろう。萩原健太著『はっぴえんど伝説』によれば、大瀧はバッファロー・スプリングフィールドのシングル「For What It's Worth」は “今一つ良さがわからなかった” が、そのB面曲「Do I Have To Come Right Out And Say It」の “ポップな感じがたまらなく好きだった” と語っている。そしてバッファローをモデルとしたバンドを作りたかった細野晴臣と一緒にバンドをやろうということになるのだが、 “はっぴいえんどはさ、セダカ&グリーンフィールドだめ、マン&ウェイル(ワイル)だめ、ゴフィン&キングだめって形で足を踏み入れた世界だった” “シングル2枚含め、初のソロ・アルバムのレコーディングはさ、もう一挙にポップスのラインに行っちゃったの” “ぼくの基本はやっぱりアルドン/スクリーン・ジェムス系のポップスだからね” “正直な話、自分のルーツにたどりつくまでにずいぶん回り道をしてしまった” と大瀧は語っている。 ただ、このベストに収録されている、はっぴえんどの曲は「12月の...

『宝島AGES No.1』

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宝島社発行、宝島2月号増刊、2014年12月25日発売。 雑誌宝島を毎月読んでたのは1982年~1984年頃かなぁ。1985年~1988年頃までは時々買っていたと思う。当時の宝島は音楽、映画、書籍、ファッション、流行りものからちょっと懐かしい70年代もの、カウンター・カルチャーを含め若者カルチャー全般を取り上げていて、私は主に新譜やライヴ・レポートなんかの音楽情報、邦楽アーティストのインタビューが目当てだったけど、核とかコンピュータ等のテーマを取り上げて解説した“キーワード図鑑”のコーナーも面白かった。確か90年代はグラビア誌でそのあと経済誌に変わってたと記憶しているけど、今は全く手に取ることもない。調べてみると月刊で雑多な情報を扱う雑誌になってるな。 忌野清志郎が表紙の『宝島AGES』は1980年代の日本のカルチャーを振り返る増刊号。80年代前半の宝島といえばRCサクセションとYMOというイメージもあるが、この増刊号には、RCは三宅伸治と片岡たまき(元マネージャー)の対談、YMOはデザイナーの奥村靫正への取材が掲載されている。私的に一番面白く読んだのは1980年代を振り返る町田康とよしもとばななの対談で、6ページとボリュームがあり笑える内容でもある。映画『爆裂都市』に関しての話しもあり。 80年代の漫画といえばやはり『AKIRA』で、アシスタントの高畠聡へのインタビュー、これも興味深く読んだ。“今を生きる80'sバンド”というコーナーでは、ラフィンのチャーミーとPON、スタークラブのHIKAGE、ニューロティカのアツシ、ガスタンクのバキパーソンズのJILLと渡邊、KENZI&THE TRIPSのケンヂ、原爆オナニーズのTAYLOW、ジューシーフルーツのイリアとトシ、ピーズの大木へのインタビューがある。多くはアラウンド50ってところで、老いゆく身体へのいたわりが感じられる。髪の毛問題も深刻か。 “アトミック・カフェ 反核・脱原発の30年”と題されたAtomic Cafe Festivalを振り返る記事も面白かった。ルースターズは1984年~1986年まで毎年アトミック・カフェ関連のライヴに参加しているな。 まぁそんな感じの内容だけど、やはりVOWは爆笑もの。No.1だけど次はあるのかな。80年代を振り返るというのは懐古趣味なのか再評価なのか、雑誌一冊...

自殺『LIVE AT 屋根裏 1979』

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2014年12月11日、いぬん堂からリリースのライヴ・アルバム。 オムニバス・ライヴ・アルバム『東京ニュー・ウェイヴ'79』に2曲、津島秀明監督の映画『ロッカーズ』に1曲が収録されていたのみで、1978年9月~1980年にかけて活動していたバンド、自殺の発掘音源ライヴ・アルバムがリリースされた。 今から35年前、1979年6月ライヴ・ハウス屋根裏での記録。音はプライヴェート音源に慣れている耳であればまぁ良好と言えるものだ。マスターはおそらくオーディエンス録音のカセット・テープだろうと思うが、元のテープの状態により再生が安定していない箇所がある。この録音時はヴォーカル:川上浄、ギター:栗原正明、ベース:中嶋一徳、ドラム:佐瀬浩平というメンバーで、『東京ニュー・ウェイヴ'79』の時とはベースとドラムが交代しているが、ベースの中嶋一徳は『東京ニュー・ウェイヴ'79』録音時は8 1/2のメンバーであった。『LIVE AT 屋根裏 1979』は企画:佐瀬、監修:中嶋、栗原という元メンバーの協力のもとに制作されている。ブックレットの写真は地引雄一。 アルバムはイギー・ポップの「Gimme Some Skin」の凶暴日本語カヴァーで始まる。構成が面白い「みずたまりにて」。川上浄が自殺の前に活動していたバンドは“セカンド・スーサイド”だったが、そのバンド名と同じ「セカンド・スーサイド」はヘヴィなナンバー。ベースの中嶋一徳が作詞作曲したロックンロール・ナンバーで、もともとは中嶋が在籍していた8 1/2のレパートリーだったという「3-2-1-0」はポップな曲調。 「I Got A Right」は再びイギーのカヴァー(こちらは英語詞のまま)。「I Got A Right」と「Gimme Some Skin」はイギー・ポップがアルバム『Raw Power』(1973年)とほぼ同時期に録音していた曲で当時未発表だったが、Siamese Recordsが1977年頃にこの2曲を収録したシングル盤をリリースしている。ほぼインストに近い「ファンシー」はイメージ的にはTHE WHO×NEU!な感じか。CD後半は長尺な曲が続く。「Woo-」は穏やかなさと激しさが交差する曲でベースのフレーズが印象的だ。ファンキーかつ混沌とした「ひなたぼっこ」で破壊的に終了。 初回限定でボーナスC...

Drop's「さらば青春」

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2014年12月3日、STANDING THERE, ROCKS/キングからリリースのシングル『さらば青春』より。 Drop'sは去年(2013年)に友人から存在を教えてもらっていたけど、その時はミッシェル経由のブルースやっているなって印象はもったが特にCD買おうという気にはならなかった。先日たまたまDrop'sのヴォーカル/ギター・中野ミホを迎えてのラジオ番組をやっていて、そこで流れたのが「さらば青春」。一聴して気に入ってしまった。良い曲書くなぁ。その時にカップリングの曲「メトロ・ランデブー」も流れたがこちらも気に入った。中野のインタビューの受け答えも印象がよくて、何の質問か忘れたけど “ステージでは革ジャンなんか着てかっこつけてます”って答えていて、そういうのは大事だよな、と思ったり。ロックンロールは艶つけにゃあかん。インタビューでは「さらば青春」のミュージック・ヴィデオについての話もあり、冬の感じを出すため、たしか冷凍庫で撮影したと話していた。とても寒くて洋服の内側にホッカイロとか貼っていたけどギターを持つ手が震えて…みたいな内容を話していた。このヴィデオも良くできている。 「さらば青春」は中野が高校3年生の頃に作った曲だが、これまで録音されていなかった。少女から大人へ移り変わっていく姿を描き出したこの曲をリリースするのはこのタイミング(彼女たちは21歳だ)が最適だろう。ラジオで言っていたが曲が出来て、高校を卒業して、今改めてこの曲に対すると、作った時とは違う俯瞰した視点で向き合えることができたという。多くを語る歌詞ではないが、語られない部分に思いを馳せることもできる優れた内容だと思う。2014年のスローバラードと言える曲だ。今回のレコーディングにあたっては“何も言わず さらば青春よ~”のCメロの部分を加えて完成させた。この部分に卒業から今まで、そしてこれからの思いが込められている。 個人的には冬という季節があまり好きではないが、この曲を聴くとこれまで過ごしてきた冬の思い出の断片(たぶん楽しかったのだろう)がフラッシュバックされて、ちょっぴり冬という寒い季節が好きになった気がする。 カップリング収録は3曲。ギター荒谷朋美作曲のシャープなエッジのロックンロール「メトロ・ランデブー」はギターとキーボードのコンビネーションも最高だし、途中のドラムロー...

私の放浪音楽史 Vol.40 JOY DIVISION『LOVE WILL TEAR US APART』

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1980年4月、ファクトリーよりリリースのシングル。 ジョイ・ディヴィジョンの楽曲を聴いたのはこのシングルが初めてじゃなかったと思うが、この「Love Will Tear Us Apart」は強力な印象を残した。私が手にしたのは12インチだったが(7インチはジャケが違う)、ジャケットのゴシックな嘆きの天使の墓石というかトゥームのモノクロ写真だけでもインパクト大。あらためてネットで調べてみると(今は便利)イタリアのジェノヴァにある墓地“Staglieno Monumental Cemetery”というところで撮影された写真を使用している (アルバム『クローサー』のジャケットも同所のトゥームを使用しているようだ)。ファクトリーのデザイナー、ピーター・サヴィルによるスリーヴ・デザインはまさに芸術作品といえるジャケット。シングルのリリースはヴォーカリストのイアン・カーティスが自死した1980年5月18日の前月、1980年4月だった。 閃光のように始まりを告げるアコースティック・ギターのカッティング、メロディを際立たせるベースライン、深みと広がりを与えるシンセサイザーのフレーズ、イアン・カーティスの低く、精神の深淵を思わせる歌声は、お互いの愛が近づけば傷付けあうものである事を告白し、“もう一度、愛が僕らを引き裂く”と歌う。 「Love Will Tear Us Apart」のレコーディングは1980年3月に2回のセッションが行われており、 シングルのA面にはストックポートのストロベリー・スタジオで録音されたヴァージョンが収録されている。このヴァージョンは性急にハイハットを刻む歪んだ16ビートが特徴で、流れるようなメロディとの対比が歪な美しさを感じさせる。テンポはやや遅め。もう1回のセッションはオールダムのペナイン・スタジオで録音され、こちらはストロベリー・スタジオのヴァージョンと比べるとテンポが速く、ドラムはハイハットの刻みを工夫しているがエイトビートを基調としリズムは安定していて、バンドの一体感が感じ取れるヴァージョンだ。シングルのB面2曲めに収録されている。今聴くとこちらのヴァージョンが好み。 B面の1曲めにはやはりペナイン・スタジオで同時期に録音された「These Days」が収録されている。この曲もアレンジが工夫されていて得にギター・ストロークのタイミングや鳴りが絶妙...

Shiggy Jr.「SATURDAY NIGHT TO SUNDAY MORNING」

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2013年11月13日、モナレコードからリリースのミニ・アルバム『Shiggy Jr. is not a child』より。 Shiggy Jr.のファースト・ミニ・アルバム。アルバムのタイトルはShiggy Jr.のポップさが“ただ無邪気なだけじゃないぞ”という思いを込めたものなのだろう。 1曲めに収録されている「Saturday night to Sunday morning」はポップ全開、誰が聴いても解り易く楽しめる曲。 2枚めのミニ・アルバムと異なり、メンバーはキーボードを含む5人組体制でサウンドもバンド感のあるもの。軽快なリズム隊とキレのあるワウを使ったギター・カッティング、一度聴いたら歌いだしたくなるサビのメロディを持ち、熱いギター・ソロ、キーボードのソロもフューチャー、練られたアレンジで繰り返し何度も聴きたくなる、これまたキラーチューン。 ポップであることを至上命題にしているバンド(というかギターの原田)だからこそ作り出せたサウンド。繰り返す日常、少しの怠惰、楽しい時の輝き、その輝きが失われていく時の喪失感をうまく表現している歌詞も、感情が表出し過ぎずちょうどいい(これは他の曲にも言える)。このあたりが“not a child”なバランスといえると思う。「Saturday night to Sunday morning」はもともと原田がヴォーカルも担当していた以前のバンドで演奏していた曲だそう。 他の曲は、原田のヴォーカルも少し聴けるセンチメンタルな「サンキュー」、ヴォーカルの池田が好きだというチャットモンチーのテイストが感じられるサウンドのかっ飛びチューン「oh! yeah」、オルタナ系ノイジーなギターが聴ける「(awa)」、アルバムの中で唯一他のメンバー(ドラムの藤井良太)が作詞作曲した「今夜はパジャマ☆パーティー」は、多くの人に覚えがあるだろう深夜のまくら投げ戦争の歌。このミニ・アルバム・リリース時のバンドメンバーは全員同じ大学出身で、そんな学生生活の一端がストレートに伝わる曲、という感じ。ラストはアコースティックなラヴ・ソング「バイバイ」。全6曲入り。

Shiggy Jr.「LISTEN TO THE MUSIC」

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2014年7月16日、モナレコードからリリースのミニ・アルバム『LISTEN TO THE MUSIC』より。 たまたま見たJ-COMのテレビ番組「MUSIC GOLD RUSH」(お笑いコンビ・サバンナの高橋茂雄が司会をしている)で取り上げられていたShiggy Jr.。インディーズ・バンドは山ほどあるなぁと思って見ていたのだが、このバンドのセカンド・ミニ・アルバム『LISTEN TO THE MUSIC』のジャケット・イラストを江口寿史が描いていると紹介があり、なんとバンドメンバーが江口寿史に直接ジャケットのイラストを依頼して実現したそうで、ギャラの交渉も直接したらしい。凄いね。思い切ってるね。番組では江口寿史のインタビューもあり “こういう直接交渉めったにないけど、ギャラの話もちゃんとして、音も気に入ったし”みたいな内容で、出来たジャケットは“ヘッドフォンに流れる音楽に身を委ねたい”という「Listen To The Music」の世界観をイラスト化したジャケットで、80年代ひばりくん等の漫画で慣れ親しんだオヤジの購買意欲を刺激する仕上がり。番組で流れたライヴの模様や、チェックしたYouTubeの動画の音も、いいじゃないか、という内容で購入。 Shiggy Jr.の初ライヴは2013年1月というから、まだ2年足らずのバンド。2013年に1枚目のミニ・アルバムをリリースしているが、その後ドラム、ベース、キーボードが脱退しており、ヴォーカルの池田智子とギターの原田茂幸の二人の他はメンバーが変わっている(ベース、ドラムが加入)。作詞作曲を手掛け、サウンド・プロデュースもしている原田がデモの段階から最終的なサウンドの作り込み・仕上げまでを行っているようだ。このミニアルバムも基本的に演奏トラックは原田の打ち込みによるもので、新メンバーの演奏はほとんど入っていないらしい。 タイトル・トラックの「Listen To The Music」もバンド・サウンドではなく、4つ打ちのディスコ・ビートにカラフルなシンセが加わり、ギターはほとんど聴こえない打ち込みのトラックに “どキュート”な池田のヴォーカルがのったダンサブルでPop&Funtimeなナンバー、キラー・チューン。まちがいなく多くの人に訴求する際立った魅力を持つメロディとサウンドだ。 それでほかの曲がどうかというと...

私の放浪音楽史 Vol.39 STRAY CATS『STRAY CATS』

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1981年、英アリスタよりリリースのアルバム。 ストレイ・キャツが登場するまで“ロカビリー”に縁がなかった私だが、彼らのファースト・アルバム『ストレイ・キャッツ』はかなり衝撃的だった。ブライアン・セッツァーのテクニック抜群でスリリングなギタープレイ、リー・ロッカーのスラップ・ベース、スタンディングで演奏するスリム・ジム・ファントムのドラムが一体となったスピード感がありながらも腰の据わった音像は、パンク・ロック好きの私の気分にもフィットし、それまで感じた事の無かった高揚感をもたらしてくれた。それにブライアン・セッツァーの金髪リーゼントのルックスももちろん気に入った。なるほどこれがパンク世代のロカビリー=ネオ・ロカっていうのか。ジャケットのコンクリートの地下室のような場所に立つ3人の佇まいもかっこいい。 アルバムの冒頭を飾るのは、イギリスでのファーストシングル曲「Runaway Boys」。渋いノリで始まり、ブライアンのヴォーカルに魅せられ、ギターソロが炸裂する頃にはストレイ・キャッツの虜になっているだろう。挨拶がわりの1曲だ。ストレイ・キャッツはアメリカのバンドだがこのデビューアルバム発表前、なかなか盛り上がらないアメリカでの活動に業を煮やしイギリス行きを決意、イギリスでのライブ活動はすぐに評判を呼び、様々なイギリスのミュージシャンが絶賛し、またレコード会社の争奪戦になった。結局、英アリスタと契約しデイヴ・エドモンズをプロデューサーに起用しアメリカ本国に先駆けレコード・デビューとなったのであった。 古いロカビリー曲(「Bop Bop Ba Doo Bop」)を参考にした「Fishnet Stockings」、ウォーレン・スミスの曲をパンキーにカヴァーした「Ubangi Stomp」は裏打ちのギターカッティングが熱狂を誘う。エディ・コクランのスピード感溢れるカヴァー「Jeanie Jeanie Jeanie」、1979年に発生したイランのアメリカ大使館人質事件に材を取った「Storm The Embassy」はマイナー調でストレートなロック。この曲に影響された日本のバンドも多いのじゃないか。ストレイ・キャッツの代名詞ともいえる「Rock This Town」は英セカンド・シングルで本国アメリカでのファーストシングル。どちらの国でもヒットした。「Rumble In Bri...

THE HEARTBREAKS「SAVE OUR SOULS」

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2012年5月Nusic Soundsよりリリースのアルバム『FUNTIMES』より。 だいぶ前のアルバムなのだけれど最近入手して暫く車の中で聴いている。クロスビートのムック「80's Guitar Pop Disc Guide」に80年代じゃないけど紹介されていた見覚えのあるジャケを中古で発見、購入。 ハートブレイクスという、まんまなバンド名はどうかなーと思ったが、琴線に触れるメロディとギターワーク。タイトなリズム隊。良いね。ザ・スミスが引き合いに出されているが確かに『クイーン・イズ・デッド』の頃のスミスかなぁとも思う。それにヴォーカルは少しエドウィン・コリンズを思わせるスタイル。実際エドウィンが関わったトラックもある。全10曲のアルバムで長さもちょうど聴き易い。 どの曲も良いのだけれど選んだのは9曲目「Save Our Souls」。 ハネたリズムにキラキラしたギターサウンドのアルバムの中でも特にポップでキャッチーな曲。それに “We can walk in the settings of our favourite Smiths songs” なんていう歌詞も出てくる。なかなか無いよね、こういうリスペクトの表し方は。ハートブレイクスみたいなギターバンドが必ずイギリスには存在するんだよなぁ。ブリット・ポップ健在。 ジャケットに写るタイトルの写真は、閉鎖された古い遊戯施設のアーケードを撮影したものだという。そんな失われた“楽しい時”を今に甦らせるサウンドを飾るにふさわしい。

佐野元春「CONFUSION」

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2014年10月29日ソニー・ミュージック・ダイレクトからリリースのアルバム『VISITORS DELUXE EDITION』より。 オリジナル発表から30年、完全生産限定の4枚組(CD×3、DVD×1)と写真集の超豪華記念盤で、大きなトピックはアルバム『VISITORS』制作時に録音されながら未発表だった「Confusion」が収録されていることだが、2004年に『VISITORS 20th Anniversary Edition』を購入済みの私としては、iTunesから「Confusion」のみ購入した。 決して安くはない価格のリパック再発に関してはいろいろと言われているし、私みたいに購入を見合わせた人もいると思うが、佐野元春のリスナー/ファンへの配慮はデジタル配信でこういうレア・トラックをアルバム購入のみにしないで、レア・トラック1曲のみでも購入できるようにしていることだ。まぁ256kbpsの音質で我慢しなければいけないけど。歌詞が読めないのも寂しいけどね…。 「Confusion」はクールな質感をもったエレクトリックなタンゴ/ラテン・テイストの曲で、オリジナル『VISITORS』に収録されていても良かったんじゃないか、と個人的には思う。前作までのテイストを強くもった「Tonight」と当時ニューヨークのカルチャーから影響を受け、ファンクやヒップホップの手法を大胆に取り入れた楽曲のちょうどあいだに位置するようなポップなメロディをもった曲だ。歌詞もなかなか刺激的。 「Complication Shakedown」のラストのギターサウンドと「Confusion」の冒頭のエフェクトのつなぎが良いかなと思って、私のiPodではオリジナル『VISITORS』の「Complication Shakedown」と「Tonight」の間(つまり2曲目)に入れて聴いている。

私の放浪音楽史 Vol.38 Dr. FEELGOOD『MALPRACTICE』

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1975年、United Artistsよりリリースのアルバム。 しかしこのフィールグッズのセカンド・アルバムは因果なタイトルとも思えるなぁ、先日のウィルコの病気が誤診だったニュースを見ると。このタイトル、フィールグッド医師はヤミ医者って感じかな。 1980年頃にARBを聴くようになって、そのサウンドのルーツだっていうので私の友人たちはDr.Feelgoodを聴き始めていた。その頃初期ウィルコ在籍時のフィールグッズで入手しやすかったのはこのセカンド・アルバム『マルプラクティス(邦題:不正療法)』で、私が初めてフィールグッズを聴いたのはこのアルバム。英UAからのリリースだが私が聴いたのはアメリカのコロムビア盤だった。なので名盤ファーストはもう少し後で聴いた。だけどこのセカンドもファーストと同じくらい良くできたアルバムで聴き易く大好きなアルバム。 ボ・ディドリーの曲でジョニー・キッド&ザ・パイレーツ版を参考にしたと思われる「I Can Tell」で始まるがイントロ一発でノックアウト。ウィルコは16~17歳ころ、ジョニー・キッド&パイレーツのシングル「I Can Tell」が物凄く好きなレコードで、友達の家に行くときはいつも持っていって聴いていたそうだ。カヴァー曲では、ヒューイ“ピアノ”スミス&ザ・クラウンズのR&B「Don't You Just Know It」の緩いノリが最高だし、第9監獄の暴動をテーマにしたザ・ロビンズ「Riot In Cell Block No.9」でマシンガンサウンド炸裂!。これも古いブルースでキャンド・ヒート等がカヴァーしていた「Rolling And Tumbling」、イントロのリフとリズムが印象的なボビー・パーカー「Watch Your Step」を取り上げている。 ウィルコのペンによる曲では、代表曲のひとつとなる「Back In The Night」、カキコキ・ギターが特にカッコいい「Another Man」、ブルージィな「Don't Let Your Daddy Know」、ドクターネタの「You Shouldn't Call The Doctor (If You Can't Afford The Bills)」ではリー・ブリローとウィルコのダブル・ヴォーカルも聴きもの。 このほか、ウィルコ・ジ...

『レコード・コレクターズ 2014年11月号 日本の女性アイドル・ソング・ベスト100(1980年代編)

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レココレで女性アイドルソングの投票をおこなっている。「あなたが選ぶ女性アイドル・ソング・ベスト100」。レココレ2014年7月号(1970年代編)と11月号(1980年代編)で選ばれた各100曲、計200曲がノミネート曲となる。 私は80年代アイドルというと、テレビ版「セーラー服と機関銃」を見て以来の原田知世ファンというか、シングル盤やLPを買っていたのだけれど、レココレ2014年11月号の日本の女性アイドル・ソング・ベスト100(1980年代編)で「時をかける少女」が1位というのは驚き。この曲を高い順位であげた選者が多かったということなのだろう。 2位の早見優も意外だったけど、松本伊代も評価高いな。 70年代、80年代それほどアイドルを聴いていたわけでもなく、テレビを通じて聴いていたくらいだが、私も投票しようと思っている。 たぶんこれで…。 あなたが選ぶ女性アイドル・ソング・ベスト10 1970-1989  1.赤いスイートピー/松田聖子  2.Woman〜 “Wの悲劇” より/薬師丸ひろ子  3.小麦色のマーメイド/松田聖子  4.時をかける少女/原田知世  5.木綿のハンカチーフ/太田裕美  6.春一番/キャンディーズ  7.卒業/斉藤由貴  8.涼風/岩崎良美  9.探偵物語/薬師丸ひろ子 10.UFO/ピンク・レディ

WILKO JOHNSON「 'CURED' OF CANCER」

ウィルコ・ジョンソンが末期のすい臓癌で余命1年だという事を紹介したのは2013年2月だった。それから1年8ヶ月。ウィルコ・ジョンソンが癌を克服した事を発表した。 当初手術不能と言われていたが、今年10月ウィルコのステージを見ていたチャーリー・チャン医師(余暇に写真家としても活動している)が “元気に活動出来ているのは何かほかの病気なのではないか?”と疑いを持ち知り合いのすい臓専門医師に紹介したという。 ウィルコは再検査で神経内分泌腫瘍という進行の遅い癌だとわかり、この春、腫瘍を切除したほか、すい臓全体と脾臓、胃と腸の一部を摘出、肝臓周辺の血管を切除/再建する手術を受け、遂に10月22日ロンドンで開かれた「Q Awards」に出演した際に「癌を克服した」と報告した。 ウィルコとチャン医師との出会いは、 BARKS“ ウィルコ・ジョンソンを救ったのは、外科医のファン ”で読むことができる。 素晴らしいファンが見ていてくれたね。

私の放浪音楽史 Vol.37 LIZARD『GYMNOPEDIA』

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1981年10月、トリオよりリリースのアルバム。 リザードの3枚目となるこのアルバムはメンバーの相次ぐ脱退、前作『バビロン・ロッカー』制作時からけしの叢へ深く入り込んだモモヨを巻き込んだ事件を経て、レコード会社をキングからトリオへ移籍、バンド周辺の人間関係の危機、アルバム制作が進むにつれてバンドの崩壊も決定的となるなか、1981年の夏に録音されたものだ。録音メンバーはモモヨ、ワカ、ベル(この3人がリザード名義)、北川がクレジットされている。バンドはアルバム制作にあたり再起を誓ったが北川はレコーディング途中で、ベルもレコーディング終了後に脱退している。 アルバムタイトルの『ジムノペディア』はフランスの作曲家エリック・サティが1888年発表したピアノ曲のタイトル「ジムノペディ」をモモヨが変容させたもの。レコード帯には “今日の祝祭とは何か?黄金色の祝祭はどこへ行ってしまったのか?それがこのアルバムのテーマである” というモモヨの言葉が記されている。サティの「ジムノペディ」は古代ギリシアの祭典を描いた壺から着想されたらしいから、そのあたりも共通したイメージなのだろう。ジャケットはインディでリリースしたMOMOYO & LIZARD!名義の『SA・KA・NA』のジャケットと同じ撮影時のものが使用されている。付属しているインナーには歌詞が印刷されていなかったが、確か応募すると歌詞と写真を載せたブックレット仕様のものが貰えたのだと思う。私が持っているLPは中古で、そのブックレットが付いていたものを買った。 アルバムのイントロとして30秒ほど「王国」が使われ、ベースがうねり躍動する「セレブレーション」でアルバムは始まる。穴倉の暗闇から光を目指す流行性舞踏病を讃えた祝祭の歌だ。 “やぁ、君、また会ったね…”と言うフレーズが印象的に使われ、歌声の中に転生するモモヨの夢を描いた「眠りの国」。タイトル・トラックの「ジムノペディア」はサティ的、現代音楽的アヴァンギャルド性にドアーズをプラスしたような呪術的でもある曲。続く「放蕩息子の逆襲」はアップテンポでポップな曲。モモヨと北川のギターのアンサンブルが素晴らしく歌詞も秀逸。1980年12月のジョン・レノンの狙撃事件に材を取った「ガレキとガラス」。ここまでがアナログA面。 菅原庸介(モモヨ)著『蜥蜴の迷宮』によればこのアルバムの “A...

私の放浪音楽史 Vol.36 頭脳警察『頭脳警察セカンド』

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1972年5月、ビクター・MCAよりリリースのアルバム。 前回のPANTA『KISS』リリースとほぼ同時期に頭脳警察のセカンド・アルバムが再発されている。当時この再発はファンとしては、まぁパンタがラヴソング集を出すのと同じくらいの事件ではあったんじゃないか。なにしろ1972年5月にリリースされ1ヶ月で発売中止。それからどんな過激な内容なんだという噂が長らく語り継がれてきた幻のレコードだった。9年あまり市場から姿を消していたこのアルバムは1981年8月21日、つまりシングル「悲しみよようこそ」と同じ日、アルバム『KISS』リリースの1ヶ月前に再発売された。 このタイミングがパンタのスウィート路線論争をさらに過熱させる事になるのだが、まぁそれは前回の話だ。ただパンタによれば『頭脳警察セカンド』は1981年以前からレコード会社側から再発の話があって、頭脳警察の存在ばかりが大きいうちは嫌だとパンタ側が断っていたそうだが、PANTA&HALの存在が大きくなってPANTA&HALが解散した時点でパンタが再発をOKしたそうだ。伝説の『頭脳警察セカンド』が聴ける!その再発盤を早々と購入した友人のH君に借りて聴いたと思う。 パンタはヴォーカルとギター。ドラムは全編通してトシが演奏、ベースは増尾光浩がこの時期に加入し、サポートには初期メンバーだったギターの山崎隆志、フルートやピアノ、オルガンで吉田美奈子が参加している。「銃を取れ!」の歪んだ音色のベース・ラインのうねり、ギターの鋭いエッジのカッティング、メドレーでなだれ込む「マラブンタ・バレー」のコンガの響き、赤く/青く毒を吐くパンタのヴォーカル。冒頭の2曲を聴いただけでも頭脳警察のサウンドは異形のモンスターを思わせるものだった。ヘルマン・ヘッセの詩(植村敏夫訳、原題:Leb wohl, Frau Welt)に曲をつけたリリカルな「さようなら世界夫人よ」は頭脳警察を代表する曲で、吉田美奈子のフルートが印象的なフレーズを奏で、オルガンが荘厳に響く。後に内田裕也がカヴァーする軽快なロックンロール「コミック雑誌なんか要らない」。パンタの私小説的な「それでも私は」や「暗闇の人生」も魅力的な曲。 トシのコンガが活躍するヘヴィ・ロック「軍靴の響き」、人を喰ったような歌詞とサウンドの「いとこの結婚式」ではパンタはたて笛も演奏。この曲は...

私の放浪音楽史 Vol.35 PANTA『KISS』

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1981年9月21日、ビクター/フライングドッグよりリリースのアルバム。 パンク/ニュー・ウェイヴの影響を受け様々なグループ/アーティストが登場、スタイルやサウンドを先鋭的な方向へ変貌していったものも少なくなかった1981年の日本の音楽シーンで、これまでの過激な、またはポリティカル、ハードな姿勢から敢えてソフトでスウィートな路線に向かっていった一人のアーティストがいた。その年早々にPANTA&HALを解散したパンタだ。 パンタはソロ活動を開始するにあたって“みんなが口ずさめるうたなんてロックじゃない”と思ってこれまで活動してきたが、 “ロックであっても口ずさめるうたをやりたい”、“ロックとうたを分けない”という考えに変わり、 “うたをやるならば、今までひたかくしにしていたスウィートな部分を思いっきり出す”ことを目指したと語っている。 それに加え私見だが、この時期パンタのポピュラリティを得たいという思いはピークに達していたのではないだろうか。海外では様々な社会性を伴ったアーティストが多くの支持を得ている、それも世界的に。ラヴ・ソングでなくてもヒット・チャートに登場する。もちろん言葉の違いはあるので英語圏のアーティストと比べられないが、日本でのパンタの知名度はごく一部のロック・ファンに限られたものだ。これを全国に広げたい。歌詞が一般に受け入れられないものがあるならば、今回歌詞は犠牲にしてもいいだろう。サウンドとメロディは思いっきりスウィートに、日本の歌謡/ニュー・ミュージック/ポピュラー界へ切り込んでいこう。という戦略をパンタや制作側がこの時期に立てたのではないか、と勝手に思っている。 パンタは当時語っていた。“今、狙っているターゲットは、松山千春、オフコースのファン層。そっくりいただいちゃおう、と。 それであわよくばリチャード・クレイダーマンを聴いているファン層も” それらしい言葉が並んでいれば何でもいいと考えた歌詞は他人に依頼した。作曲は全曲パンタ(中村治雄)。ディレクション/編曲は歌謡/ニュー・ミュージックでも数多く仕事をしてきた矢野誠が担当した。 アルバムに参加したミュージシャンのクレジットは無いが、2007年の雑誌「ROCKS OFF Vol.1」の記事によると、 キーボード:矢野誠、難波弘之 ギター:今剛、白井良明、是方博邦 ドラム:上原裕、古田たか...

LYNCH / FROST PRODUCTIONS「A special TWIN PEAKS announcement」

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なんと2016年にツイン・ピークスが復活。 米国のTV局Showtimeが2016年に戻ってくることを伝えるビデオ「A special TWIN PEAKS announcement」を公開している。25年後の現代を舞台にした続編となる模様。現在はリンチとマーク・フロストが脚本を作成中。9話が作られ、監督はリンチがするらしい。凄い。 再来年かぁ。早く見たいけど日本での放送はどうなるんだろう…。 やっぱり有料チャンネルだろうね…。

私の放浪音楽史 Vol.34 THE MODS『FIGHT OR FLIGHT』

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1981年6月21日、エピック・ソニーよりリリースのアルバム。 ザ・モッズの初期のスタイルはヴィジュアル的にも格好良かったなぁ。友人の部屋の壁にファースト・アルバムリリース時のポスターが貼ってあって、たぶんロンドンでのレコーディングの時に撮られたものだろうけど、地下道にメンバー4人が並んだモノクロの写真だった。 “For The Broken Kids”とかアルバム帯に“すべてのグループを前座にする”とかいったキャッチ・コピー。スリムなブラック・ジーンズ、シャープシューズ、革ジャン、森山のセットされた髪型、首にはバンダナ。 ファースト・アルバムのジャケットもクラッシュのファーストを下敷きにしたようなデザインになってる。歌詞カードにはロンドン・ヒュー・ストリートのパブの前に立つメンバーの写真とトミー・スミスのシルエット。ファースト・アルバムのサウンド全体では、もともと森山らメンバーが好きだった初期フーなどのブリティッシュ・ビートに、パブロックやピストルズの『Never Mind~』、ジョニー・サンダース等のパンク影響下で、特にクラッシュのセカンド『Give 'Em Enough Rope(邦題:獣を野に放て)』や同時期のクラッシュのシングル作品に強く影響されたサウンドだと思う。エピックとの契約の際にバンドから提示したロンドンでレコーディングするという条件は、1981年4月~5月ロンドンのマトリクス・スタジオで叶えられた。 シド・ヴィシャス(本名・ジョン・サイモン・リッチー)をモデルにした「不良少年の詩(SONG FOR JOHN SIMON RICHIE AND US)」はスピーディで各楽器の絡みがスリリング。モッズが最初に契約しかけたアルファ・レコードでの出来事を題材にした「WATCH YOUR STEP」、サンフランシスコのガレージ・バンド、フレイミン・グルーヴィーズの「Shake Some Action」を引用した「崩れ落ちる前に」。この曲はファースト・シングルとしてもリリースされている。こんなカッコいい曲作れるんだぁと思ってたけど、元ネタがあったのを知ったのはずーっと後だった。でも完全にモッズの曲になっているよ。“崩れ落ちる前に/崩せ”というフレーズが特に印象的だった。崩れていくのを傍観者として見ているのではなく、自ら崩すのに手をかけろというパンクの“...

私の放浪音楽史 Vol.33 THE ROOSTERS『THE ROOSTERS』

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1980年11月25日、日本コロムビアよりリリースのアルバム。 前回の『à-GOGO』に書いたFMライブで特に「ロージー」が気に入った私はさっそく同曲が収録されているルースターズのファースト・アルバムを入手。といってもやはり誰か持っている人に借りたんだと思う。 まずジャケットに目がいく。大江の剃った眉、花田のコンポラスーツ、井上の白いエナメルのシャープシューズ、池畑の髭と黒いサングラス。3人は吸いかけの煙草を手に、大江は地面に埋めたセメント袋に上に立ち、後ろの井上と池畑の足の開いたポーズは何がしかの主張を感じる。だけど大江の黒いスーツは三つ釦でシャツはボタンダウン。三つ釦のスーツは当時一般的じゃなかったし、ボタンダウンシャツとの組み合わせも英国モッズ的というか、初期ストーンズ、キンクス、フーなどのブリティッシュ・バンドのファッション・スタイルを思わせる。他の3人もスーツにネクタイ着用。ストーンズのセカンド・アルバム『No.2』のジャケットに東映ヤクザ映画のムードを混ぜたような仕上がり。いわゆるツッパリ/ヤンキーとは一線を画してはいるものの、廃工場(と思われる)でのロケーション、壁にスプレー書きしたバンド名、歌詞カードにはバイクに集うメンバー(中指立てている人もいるし)の写真、アナログ盤の歌詞カードに記載されていたメンバープロフィールには好きな服装の質問に“特攻服”と答えているメンバーが1名いることから、ファースト・アルバムの帯キャッチコピー“腑抜け野郎の脳天をたたき割れ!!”に違わぬキケンな雰囲気を漂わせてはいる。 収録曲でカヴァーは4曲。エディ・コクランのカヴァー「カモン・エブリバディ」はシド・ヴィシャスの歌うビストルズのヴァージョンで聴いて知っていたが、ルースターズはスピード感とタイトさが魅力。この曲のカヴァー・ヴァージョンは数多くあると思うが、このルースターズ・ヴァージョンは最高の部類に入るだろう。サーフイン・ホットロッド系のインストグループ、チャンプスのカヴァー「テキーラ」はもちろん聴いたことがなかった。この曲もジャキジャキしたギター・カッティングと締まったリズムで、アルバムのイントロダクションとしての効果も大。ボ・ディドリーの「モナ(アイ・ニード・ユー・ベイビー)」はストーンズ・ヴァージョンが下敷きだが、私はクラッシュの“No elvis, beatles...

私の放浪音楽史 Vol.32 THE ROOSTERS『THE ROOSTERS à-GOGO』

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1981年6月25日、日本コロムビアよりリリースのアルバム。 ルースターズのレコードを始めて聴いたのはセカンド・アルバムだった。たぶん友人のKBちゃんに借りたのだろう。同じころ出ていたアナーキーの『亜無亜危異都市』を貸しレコード屋で借りて、一緒にカセットに録音した覚えがある。 当時はアナログA面の「One More Kiss」や「Girl Friend」のスウィートな感じが、んー、ちょっとなぁという感想だったが、B面「Dissatisfaction」からの流れが好きだった。まぁ同時にカセットに録音したアナーキーも聴きつつ、他のバンドと同じようにルースターズも特別贔屓にしているバンドというわけではなかった。 ある日友人からまわってきたカセットにはFMのライヴ録音が収められていて、A面にはモッズのライヴ、B面にはルースターズのライヴが録音してあった。ルースターズのライヴは「ロージー」、「Dissatisfaction」、「Fade Away」、「Do The Boogie」の4曲だった。後にこの録音は『The Basement Tapes~Sunny Day Live At Shibuya Eggman 1981.7.14』として完全版がリリースされるエッグマンでのライヴなのだが、当時はこのライヴがいつ、どこで録音されたのかもわからなかった。 “まぼ、まぼろしのシングル”と紹介して始まる「ロージー」のコーラスを効かせた花田のギター・プレイはファンタスティックで、池畑のドスドスと突き進むリズムも迫力満点。大江の少ししゃがれてるけど艶のあるヴォーカルも魅力的だった。セカンド・アルバム収録の2曲「Dissatisfaction」と「Fade Away」のライヴはドライヴ感を増しているし、「Do The Boogie」の混沌とした演奏にも惹き込まれた。 『à-GOGO』がリリースされた当時、大江はよく自分達の魅力を“最新型ロックンロール”と口にしていたが、確かにこんなに格好良いRock'n'Rollを演奏しているバンドは稀有な存在だ。スリーコードを使った曲でもこれだけの表現力があり、スピード感があり、スリリングな瞬間を作り出せる、しかも迸る新鮮さと腰の据わった落ち着きをも兼ね備えている。とにかく4曲のFMライヴ、これが私をルースターズの虜にし、スペシャルなバンド...