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映画『狂い咲きサンダーロード オリジナルネガ・リマスター版』Blu-ray

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2016年11月4日、トランスフォーマー/ハピネットからリリースのBlu-rayディスク。 遂にブルーレイ化された石井聰亙監督の『狂い咲きサンダーロード』。 DVD-BOX持ってるし、どうするかなぁとも思ったんだが、やはりオリジナル16mmネガからリマスターされ、クリアになった映像を確かめたくて購入。買ってよかった。若干赤が強めになっているがクリアになった映像で映画を楽しめる。もともとの16mm版にはエンディング・クレジットは無かったので、そこには35mm版のものを使用しているという事だ。 パッケージデザインは公開当時のポスター(泉谷しげる画)をもとにしたもの。確か以前発売されたビデオテープもこのポスターを元にしたものだったなぁ。特典映像は下北沢ガーデンで行われたトークイベントとLOFT9 Shibuyaで行われたトークイベントの映像で48分。ただ後者のイベント映像の音声は、おそらくカメラ付属のマイクで収録されたもので聴き取りにくい。こういうのはライン収録して欲しいね…。音声解説は石井監督と助監督・緒方明と撮影・笠松則通が新たに収録、今回はカメラマンの笠松が参加という事で技術的な話も多い。今回の修復作業では気になるところもいろいろあったようだ。 これで何回目かなぁ、何度観ても面白い。製作費等の制限ある中での創意工夫と無制限のイメージ。現実と架空の交わり。石井聰亙の頭の中をフィルムに焼き付けたパンク・ムーヴィー。劇中に使われているモッズ、PANTA&HAL、泉谷しげるの楽曲もセンスよく、特にオープニングのタイトル・バックで使われる泉谷の「電光石火に銀の靴」はこの映画に使われていることから好きになった曲。泉谷の半生を語った『我が奔走 IT'S MY LIFE』(ロッキンオン社刊・1988年)でもこの曲は“完全なドラッグのノリ、アシッド・パワー”、 “重さや暗さを全く排除したはじけ方”、“かなりパンクの感覚で作った曲なんだ”と語っているように、映画の内容に完全にマッチしている。 デジタル上映素材(DCP)制作も行われて劇場上映が可能になった『狂い咲きサンダーロード』だが、我が町のスクリーンでこの伝説の爆走映画を観てみたいものだ。

『ROCK OF AGES』

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2016年11月1日、ロフトブックス刊 新宿ロフト40周年記念写真集。 フォトグラファーは地引雄一、三浦麻旅子、吉浜弘之、フジタヒロミ、神林律子、辻砂織、大西基、菊池茂夫がクレジットされている。 新宿ロフトのオープンは1976年10月、1999年3月まで西新宿小滝橋通り沿いにあったが、1999年4月から歌舞伎町に移転して現在まで営業。初期はライヴ写真があまりないのか掲載できなかったのかロフトのフリーペーパー「Rooftop」を転載したものが多い。写真としては1979年2月と思われるリザードのモモヨ~2015年のおやすみホログラムまで。 ルースターズは1983年8月のライヴ、1986年頃かな花田ヴォーカル期、2004年復活ルースターズ、その他ルースターズ関連ではバトルロッカーズ、1984、ゼロスペクター、南浩二、石井聰亙&バチラス・アーミー(メンバー写ってないけど)、サンハウス(+花田と思う)、ミチロウ+下山、大江ソロ、ロックンロールジプシーズ掲載。 恒松正敏関連ではフリクション、EDPS掲載。東京ロッカーズ期から1982年頃まではほぼ地引雄一の写真が掲載されているが、写真集としての出来上がりを比べてみると2009年に地引がリトルモアから出版した『TOKYO STREET ROCKERS 1978→1981』の方が紙質・写真の仕上がり、 見栄えも良いと思う(同じ写真が掲載されているからね…)。今回の『ROCK OF AGES』は紙質・見栄えがやや不満足だが、写真点数、ページ数重視で値段を抑えた感があるので良心的なのかな。もう一つ残念なのは写真それぞれにキャプションが欲しかったなぁ。それに44ページのミラーズの写真は下北ロフトじゃないの…。 写真だけではなく、証言者として五人が新宿ロフトへの思いを語っている。音楽プロデューサーの牧村憲一、お馴染み地引雄一、評論家の今井智子と中込智子、THE BACK HORNのベーシストで新宿ロフト元店員の岡峰光舟。五人とも興味深い内容。 まぁ私個人としてはロフトに足繁く通っていた訳ではなく、1983年~1984年頃にパンタやルースターズを観に行っていたくらいだ。それでも一番訪れた回数が多いライヴハウスかな…特別な思い入れはある。今回の写真集でロフト外観や内部の写真を見ていると、細い階段や、大きな時計があったことや、あぁこのミキサー卓の...

宇多田ヒカル「道」

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2016年9月28日、ユニヴァーサル・ミュージックよりリリースのアルバム『Fantome』より。 NHK朝の連続テレビ小説、朝の8時台の放送なので通学・通勤の時間帯ということもあるし、ドラマの内容に関しても少し前までは全く興味の対象外だったけど、思い返してみると漫画家水木しげるを題材にした『ゲゲゲの女房』からかな、録画して見てみようと思ったのは。鬼太郎に親しんだ年代としてはね。まぁ見たり見なかったりだったけど。 その後はまた興味なくなったが、宮藤官九郎が脚本を担当した『あまちゃん』で初めて全話を見た。ブームになったねぇ…。この時から録画した朝ドラを帰宅してから見る、という習慣が出来て『あまちゃん』以降の作品はだいたい見てるんだけど、『とと姉ちゃん』は最初数回見て、しばらく見るのをやめてたんだが雑誌作りを始める頃から毎回見るようになった。その『とと姉ちゃん』の主題歌を歌っていたのが宇多田ヒカル。 宇多田ヒカルの大ヒットしたデビュー曲「Automatic」(1998年)は当時テレビ・ラジオで大量にOAされていたけど、DJ/ヒップホップ・クラブカルチャーを通過したLooseなサウンド・メイクとヴォーカル、それでいてメロディアスでポップでダンサブル。当時アレンジャーが付いているにしても、これを作ったのが15歳とは、まぁとんでもないアーティストが現れたと思ったもんだ。随分たってからアルバム『ファースト・ラヴ』も中古で安く手に入れたけど(何しろ売れたからね)、既にオヤジの域に達している身としてはあまり聴きこむことはなくて、内容としては宇多田と同世代の10代~20歳代に受けるものだなぁと感じた。 朝ドラ『とと姉ちゃん』の主題歌「花束を君に」。私がこの曲をフルで聴いたのは2016年9月にNHKで放送された『SONGS』が初めて。この番組は宇多田と糸井重里との対談部分もありつつ、「ともだち」をインディ・レーベルTokyo Recordings主宰でシンガーの小袋成彬とのデュエットで、それから「道」をスタジオで歌った。この3曲はどれも印象に残る曲で、レコーダーに録画したのを繰り返し見ていたのだが、アルバム『ファントーム』(フランス語のFantome、oはサーカムフレックス付きが正式表記)がリリースされてから、CDを購入しようかどうしようか迷っていたのだが、リリース後10日くらいで入手。...

BOB DYLAN「BLOWIN' THE WIND」

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ボブ・ディランにノーベル文学賞。 全世界に小説家・詩人・戯曲・ノンフィクション…様々な文学者が何万人、何十万人?いるのかわからないし、そのなかでも偉大な作家たちが大勢いるんだろうけど、その人たちを差し置いてというか、脇に置いてというか、ミュージシャンであるディランが受賞することに文学界側から批判が出るのは、まぁ仕方ない。 ディランの音楽が全世界のフォーク、ロック、ポピュラー音楽のミュージシャン達に言葉に尽くせない程巨大な影響を与えた(与え続けている)ことは誰にも異論はないだろう。音楽界ではボブ・ディランは他の誰とも比べようもなくディランとして屹立している。 でも文学とクロスするところではどうなんだろう。何年か前から文学賞候補にディランの名前が挙がっていたと思うが、本気で捉えている人はそれほどいなかったんじゃないかなぁ。先ほども書いたけど世に文学者はごまんといるからね…。まぁディランの詩・言葉は英語圏に住んでないとなかなか理解できないんじゃないかと思うが(米英の詩人や宗教的な事柄、ドラッグ・カルチャーなんかを含めて)、私なんかディランのレコード・CDをかけながら歌詞・訳詞カードとにらめっこなんて聴き方になってしまいがち。ディランの詩を音楽と一体となって楽しむのはちょっと無理がある、というか、ディランの音楽は歌詞を読まないで聴いた方が楽しめるしカッコいいと感じる。だけど詩人ディランが、 親しみやすい音楽を介して老若男女問わず世界各国の隅々までその詩を伝えられるのであれば、それは詩人としてとても大きな存在であるとも思える。 私がボブ・ディランという存在を知ったのは、ガロの曲「学生街の喫茶店」かな?名前だけ。 楽曲としてディランに興味を持ったのはジミヘンがカヴァーした「All Along The Watchtower(邦題:見張り塔からずっと)」 経由でディランを聴いてみようと思ったんじゃないかな。日本で編集した『Gold Disc』ってベスト・アルバムを友人に借りて、初めてディランの曲をまとめて聴いた記憶がある。そのベスト盤に「All Along The Watchtower」は収録されてなかったけど。 今回の受賞を伝えるニュースでも多く流れていた「Blowin' In The Wind(邦題:風に吹かれて)」もそのベスト盤で聴いたんだろう。当時ハード・ロック好き...

剛田武著『地下音楽への招待』

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2016年9月22日、ロフトブックス刊 ライヴ・スポット吉祥寺マイナーにまつわるミュージシャン達をひとつの軸にしながら、1970年代後半~1980年前半にかけての日本のアンダーグラウンド・ミュージック・シーンを振り返る本が刊行された。 著者の剛田武は1962年生まれ。アメリカン・ポップス→ハード・ロック、ブルース・ロック、プログレ→パンク・ロック→前衛ロック→フリージャズ、現代音楽と聴く音楽の趣味が変わり、 自身も高校時代にはパンク・バンドでギターを弾き、浪人生活中には宅録、大学入学後にはアルト・サックスを手に入れジャズ研に入部しフリー・ジャズを目指すが“体育会的な気質が肌に合わず”離脱、自身のサックスにギターを加えたユニットOTHER ROOMを結成、と表現活動も行っていた。1982年5月頃に吉祥寺のライヴ・スペース“ぎゃてい”でアルバイトを始め、夜ごと行われた自由な表現活動を“大抵一桁”の観客と見聴きする。 ライヴ・スペース“ぎゃてい”の店長へのインタビューには店の出演者について語っている部分がある。 (他の店は)“ブッキングの基準が出来ていて、店のテイストに合うかどうかオーディションしたりするのでしょうが、マイナーやぎゃていは何でもOK。表現する意思があれば誰でも出演できる。音楽だけじゃない幅の広さを持ち、お金儲けや道楽が目的じゃない、自己表現にこだわりのある人たちが多かった” ぎゃていは1981年6月開店~84年5月閉店。時期は少し前になるが同じ吉祥寺にあったマイナーは1978年3月開店~1980年9月閉店のライヴ・スペースだった。ぎゃていやマイナーで演奏された、見に来ていた人が大抵一桁か、ゼロの時もあった表現活動(ここでは主に音楽)を関係者の証言から検証、記憶を記録し、詳細な脚注(加藤彰による)と当時のフライヤーなども交え、さらに当時の音源を収録したCDを付属し読者を地下音楽へと招待する、416ページの読み応えのある本だ。 この本でインタビューを受けるのは演奏者・パフォーマーとしては、 園田佐登志(明大現代の音楽ゼミナール主宰/アナルキス、他) 藤本和男(第五列) 鳥井賀句(ワースト・ノイズ/ペイン) 武田賢一(大正琴奏者/ヴェッダ・ミュージック・ワークショップ主宰) 白石民夫(サックス奏者/不失者、他) 工藤冬里(ワースト・ノイズ/ノイズ/マシンガンタン...

THE BEATLES「TWIST AND SHOUT」

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2016年9月9日、ユニヴァーサル/アップルよりリリースのライヴ・アルバム『Live At The Hollywood Bowl』より。 ビートルズ唯一の公式ライブ・アルバムがオリジナル・マルチ・トラック・テープからリミックスとリマスタリングを施され、ボーナストラック4曲を追加してリリースされた。 1964年と1965年にロスのハリウッド・ボウルで演奏された録音からセレクトしたオリジナルは1977年5月にリリースされているが、私はこのライヴ・アルバムを聴くのは初めて。ビートルズ初期を描いた1994年公開の映画『バック・ビート』でビートルズに目覚め、オリジナル・アルバムのCDを集め、ブートCDにも手を出していたが、このライヴ盤はこれまでCD化されていなかったこともあり手に入れてなかった。まぁ思えばビートルズのアナログ盤はガラクタ屋で安く手に入れたシングルが数枚あるだけで、アルバムは1枚も持ってないし、この『ハリウッド・ボウル』のアナログ盤も中古で安く見かけるが、オリジナル・リリースのジャケは今一つなデザインだし、ガイド本で読むと、歓声が大きく録音状態は万全ではない…とのことから、あまり聴いてみたいと思えなかったのだ(ブート聴いている奴が何言ってんだ)。 しかし1977年から40年を経た現在、音源の補正技術は格段の進歩を遂げている。今回のリリースでは、単一のトラックから音を取り除いたり分離したりする“デミックス”という技術が使われたという。もとの3トラックのテープからメンバーそれぞれの歌声や楽器を鮮明にし、演奏と絶え間なく続く歓声とのバランスを最大限に補正した。 ジャケットもなにやら爽やかに変更されている。ハリウッド・ボウルでコンサートが行われる2日前、 1964年8月22日シアトル・タコマ空港でカナダ・ヴァンクーヴァーへ向かうチャーター機に搭乗する4人をボブ・ボニスが撮影したものだ。この21世紀版『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』は期待を裏切らないのでは…と発売当日に購入。何しろ田舎でもビートルズの新譜くらいは売ってるからね…。 このCDの日本盤解説書にはオリジナルLPのジョージ・マーティンのライナーノーツ和訳も掲載されている。このコンサートにおける観客の歓声を “1万7千人の若くて健康な肺が送り出す途切れのない金切り声は、ジェット機の騒音ですらかき消してしま...

MARS「3-E」

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1996年、Atavisticよりリリースのアルバム『78+』より。 マーズの最初のシングル「3-E c/w 11,000 Volts」が聴きたくて、やはりマーズといえばホラー度満点なこのジャケのディスクだよなぁと思って、シングル曲の曲名も入ってるのを確認して入手。 アルバム『78』はもとはアナログ盤で1986年にリディア・ランチのレーベルWidowspeakからリリースされたが、1996年に3曲(ジャケットに表記のない1曲を含む)を追加しAtavisticから『78+』としてCD化リリースされた。1977年~1978年のスタジオ・レコーディングとライヴをコンパイルしたアルバムなのだが、ジム“フィータス”サ―ウェルによる音処理(クレジットはReprocessed by J.G.Thirlwell)がされており、低中音が前に出て高音はやや引っ込み気味、音が塊になった様な印象で個人的にはソリッド感や楽器の分離が削がれているように思う。YouTubeなんかで「3-E」のシングル・ヴァージョンを聴いてみるとね。スタジオ・テイクとしては同じと思うんだけど。まぁアルバムは興味深く聴けた。 メンバーはサムナー・クレーン(G&Vo)、コニー“チャイナ”バーグ(G&Vo)、マーク・カニンガム(B)、ナンシー・アーレン(Ds)。1975年頃“CHINA”というバンド名で活動を始めたが、ほどなくしてマーズにバンド名を変更、リディア・ランチ曰く“スーサイドとNo Waveをつなぐバンド”、 DNAのイクエ・モリはマーズのナンシー・アーレンのドラムセットを借りて練習していたという。ノー・ウェイヴのバンド群へ与えた影響も大きく先駆的なバンドといえる。 うーん、別のCD『The Complete Studio Recordings NYC 1977-1978』あたりを手に入れるかな…。 

DNA「YOU & YOU」

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2004年、No More Recordsよりリリースのコンピレーション・アルバム『DNA ON DNA』より。 No Waveシーンを代表するバンドのひとつDNAが残した7インチ「You & You」、EP「A TASTE OF DNA」、コンピ『No New York』収録曲などのスタジオ音源や初期のライヴ(1978年7月CBGB)等、32曲を詰め込んだコンピCD。 DNAはアート・リンゼイ(Vo&G)、ロビン・クラッチフィールド(Key)、イクエ・モリ(Ds)がメンバー。イクエ・モリは(フリクション結成以前の)レックと渡米していたがアート・リンゼイに誘われドラム初心者ながらバンドに参加した。この3人で活動していたのはコンピ『No New York』レコーディングの頃までで、その後ロビン・クラッチフィールドが脱退、ペル・ウブにいたティム・ライトがベーシストとして加わり、EP「A TASTE OF DNA」をリリースする。 「You & You」はDNAが最初にリリースしたシングルのA面曲。リチャード・ヘルやルー・リードのバンドでギタリストとして活躍したことで知られるロバート・クワイン(Bob Quine名義) のプロデュースで1978年Medical Recordsより「You & You c/w Little Ants」としてリリースされた。クラッチフィールドのキーボードとモリのドラムが作り出すリズミカルかつ単調、時に乱調な音空間に破壊的に斬り込むアート・リンゼイのギターとシャウト。アート・リンゼイのギターがチューニングしていないというのは本当だろうか。まぁチューニングしてあっても奏法は変わらないと思うが、出る音は違うだろうな。ノイズ…?このギター・サウンドは、まるで音が空気と触れ合って火花を散らす、そんなカガヤキを放っている。B面曲の「Little Ants」は実験的な曲。 熊谷朋哉のHPにイクエ・モリのインタビューがありDNAの事にも触れている。 NYに行ってみたらいきなりDNAだったの イクエ・モリ・インタヴュー 2008年には2枚組アナログ盤が限定リリース。37曲入り、アナログ盤にはなんとゼップの「Whole Lotta Love」のカヴァーが収録されている。うぅ欲しい…。

TH eROCKERS「ムーンナイト・ラブ」

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2016年8月17日、ポニーキャニオンからリイシューのDVD『13×7』より。 1991年3月29日新宿パワーステーションで行われたロッカーズの再結成ライヴ(メンバー・陣内・谷・角・橋本・船越) はライヴ・アルバム『LIP SERVICE』は聴いていたんだけど、当時ビデオテープで発売された『13×7』は未見で今回のDVD化再発で初見。 CD『LIP SERVICE』と曲数は違うけど同内容なんだろうと思っていたが違っていた。CDが1991年3月29日新宿パワーステーションのライヴのみに対して、DVDは9曲目の『可愛いアノ娘』の途中から、1989年7月15日に日比谷野音で行われたデビュー時のメンバー(陣内・谷・鶴川・穴井・船越)での再結成ライヴ映像に切り替わる。ビデオ発売当時13曲のうち1曲目~9曲目の途中までがパワステ、9曲目の途中~11曲目までが野音のライヴから収録された映像、その後12曲目と13曲目が再びパワステのライヴという内容。だから13曲を7人のメンバーで、という意味のタイトルになるわけね。ストーンズにならって。 今回のDVD化再発では1989年7月15日の日比谷野音の映像5曲がボーナストラックとして追加収録された。 ボーナストラック分は当時のスタッフが所有していたテープから起こした映像ということで、画質・音質の修正・編集はおこなわれていないが個人的には殆ど気にならない貴重な記録だ。そのボートラに収録されていた「ムーンナイト・ラブ」。 エディ・コクランの「Somethin' Else」を下敷きにして“公衆便所の落書きのよなアイツが目も醒めるよな女つれ…” という痛快な歌いだしの歌詞をつけたところで名作決定。こんな歌詞書けないよ。月夜のツキと運のツキを織り交ぜて使ってるところも工夫を感じる。スタジオ録音はファースト・アルバム『WHO TH eROCKERS』に収録されていたグッドロッキン・ナンバー。 ボーナストラック5曲は冒頭の「ジャッキー」から陣内の気合の入った(入り過ぎてる)パフォーマンスが見られる。ボートララストの「涙のモーターウェイ」で聴ける谷のディレイのかかったギターもあの時代を表しているなぁ。

ARB「空を突き破れ!」

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1990年、石橋凌が役者に専念するためARB解散。まぁその時は驚いたね。 田中一郎が抜け、サンジが抜け(というか解雇)、斉藤光浩が加入して抜け、白浜久が加入してサウンド面で大きく変化したけどアルバムは聴いていたし、その時々の世界を見据えるARBの歌は気になっていたもんだ。松田優作に心頭し役者へ転身した石橋凌に対して “なんでだよ、一生歌っていくんじゃなかったんかよ” という気持ちを抱いていた。ARB在籍中の映画『ア・ホーマンス』や『ボクの女に手を出すな』なんかは観たけどね。 でもARBやめてから出演したドンパチ映画の多いタイトルを見て、これが松田優作の遺志を継ぐってことなのかって個人的には思っていた。ARB解散に至る、スピリチュアルというかオカルトめいた石橋凌の心境も常人の理解超えるものではあったのだが。 その後、ARB復活~再び解散もありつつソロ歌手業も続け、役者業はずーっと続いている訳だが、まぁあんまりテレビドラマも映画もビデオも観ないんで石橋凌の役者代表作は何かというのも分からないんだけど、先日NHKを見ていてびっくり。NHKスペシャル『未解決事件File05・ロッキード事件』で石橋凌が田中角栄役。今の恰幅のよい石橋凌にはピッタリのはまり役だと思ったもんだ。 ARB初期、最初の事務所から飛び出し、“痩せて飢えた狼みたいな顔”をしていた頃にリリースしたアルバム『BAD NEWS』に中に「空を突き破れ!」という曲がある。   “政治家は飛行機ながめ  落花生の皮を剥く” 石橋凌が作詞したこの曲、もともとARBが1979年6月にリリースしたファースト・アルバムの為に書かれたものだという。当時話題になっていたロッキード事件に材をとった歌詞だが、所属事務所がこの内容にクレームをつけバンド側に撤回命令を出した。この1件でポップなラヴ・ソングを要求する事務所側とバンドとの溝は深まり、結局ARBは事務所を飛び出すことになる。 いってみれば“ロッキード事件”は石橋凌にとっても因縁のある出来事だ。37年もたってその事件で受託収賄罪で逮捕された田中角栄役を演じるなんて最高、役者やっててよかったなぁ、こりゃ石橋凌の代表作になるぞ、なんて個人的にはうれしくなった、のだが放送を見てあまりにも出演シーンが少ないんでちょっとがっかりだったなぁ。台詞も少なかったし…。でも見た目はバッチ...

TH eROCKERS「涙のモーターウェイ」

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2016年7月20日、ポニーキャニオンからリイシューのアルバム『SHAKIN'』より。 ザ・ロッカーズの7インチ・シングルリリース3枚目は「涙のモーターウェイ c/w TVエンジェル」で1981年8月にリリースされた。シングル盤ジャケットのメンバー写真は『COME ON』の別カットが使用されているが、レタリングなどデザインはポップな仕上がり。「涙のモーターウェイ」は陣内作詞作曲の、あの娘と深夜の街を突っ走るロマンチックなナンバー。 “くちびるにメロディ ジェラシーはトランクに”ってフレーズが秀逸。キマってる。それにこの曲のメロディ、陣内のヴォーカルにピッタリなんだよな(自作だからあたりまえだけど)。  “憂鬱な明日を 占うよりも  とぼけた奇跡を じっと待つよりも  ロマンスを手に入れた 夜をころがせ  スクラップに なっちまう前に” スクラップ寸前の人間にとっては、やけに染みる曲だぜ。 このシングル・ヴァージョンの「涙のモーターウェイ」が今回リイシューされた『SHAKIN'』のボーナストラックとして収録された。今回のリイシュー、最初のアナウンスでは『SHAKIN'』にボーナストラックは無いような記載だったので、購入を見合わせようかなぁと思っていたのだが、どうせ買うんなら3枚同時に…と思って、買ってみてびっくり。買ってよかった…。 ロッカーズのサード・アルバム『SHAKIN'』は1981年9月にリリース。「涙のモーターウェイ」はアルバムのラストに収録されたが、アルバム収録ヴァージョンはシングル・ヴァージョンとヴォーカルトラック、演奏トラックは基本的に同一と思われる。 シングルをもとにすると、ギター等の音の付け加え、コーラスの変更、音量バランスや音の定位置変更などによりアルバム・ヴァージョンとしているようだ。アルバム・ヴァージョンはナチュラルなギターの音色をプラスしてギターの弦の響きを活かした印象、コーラスは抑えられ、ややシンプルに聴こえる仕上がり。途中タンバリンの追加も効いている。こちらのほうがエンディングが25秒ほど長い。シングル・ヴァージョンはコーラスが随所に際立っているように思う。 特に3分過ぎ演奏がドラムのみになるところ“Hurry Up~”部分のコーラスは気持ちいい。 1980年3月上京~1980年9月アルバム・デビュー~1...

TH eROCKERS「シャープシューズでケリ上げろ!」

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2016年7月20日、ポニーキャニオンからリイシューのアルバム『COME ON』より。 これまでアルバム未収録だった「黒い眼をしてU.S.A.」と「シャープシューズでケリ上げろ!」が今回リイシューされたロッカーズのセカンド・アルバム『COME ON』にボーナストラックとして収録された。 ザ・ロッカーズの7インチ・シングルリリースは3枚。ファーストアルバムのリリース後、1980年11月にリリースされた1枚目のシングルは「黒い眼をしてU.S.A. c/w ショックゲーム」。A面の「黒い眼をしてU.S.A.」は作詞/陣内孝則、作曲/陣内孝則・チャック・ベリーとクレジットがある通り、チャック・ベリーの曲「Sweet Little Sixteen」に日本人の盲目的なアメリカ好きを揶揄した陣内作の日本語詞をのせたロックンロール・ナンバー。スピード感のあるアレンジでイントロやコーラスなどロッカーズ流に工夫されている。 この歌詞の内容でファーストシングル・リリースっていうのは個人的にはどうなんだろうと思うが、まぁロッカーズとしては気合入っていたんだろう。日本語詞の洋楽カヴァーといえばロッカーズのラストアルバム『ハンキー・パンキー』も同趣向(作詞はバンド外に依頼)だったので、今にして思えばなんだか妙な繋がりを感じる。 B面は陣内/谷作の「ショックゲーム」で『WHO TH eROCKERS』に収録されている。 2枚目のシングルは1981年2月リリースの「プライベートタイム c/w シャープシューズでケリ上げろ!」。 A面の「プライベートタイム」はバディ・ホリー的なノリの陣内作。歌詞の内容は「黒い眼をして~」に似たアングリ―なムード。翌月リリースされたセカンド・アルバム『COME ON』に収録されている。 B面の「シャープシューズでケリ上げろ!」は作詞/陣内孝則、作曲/谷信雄でレコードデビュー前からステージでは演奏されていたようだ。うねるベースとキレたギターのカッティングが絡み合う重心の低い演奏と陣内のハイなヴォーカルが魅力的なナンバーで個人的に好きな曲。『爆裂都市・バースト・シティ』サントラ盤に映画の効果音が被りエディットされたヴァージョンが収録されていたが、完全な楽曲として収録されていたのはシングル盤のみだった。 今回めでたく「黒い眼をしてU.S.A.」と「シャープシューズでケリ上げ...

TH eROCKERS「可愛いあの娘」

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2016年7月20日、ポニーキャニオンからリイシューのアルバム『WHO TH eROCKERS』より。 「可愛いあの娘」。ザ・ロッカーズの代表曲でありながら一般リリースはVo陣内、G谷、G澄、B橋本、D船越というメンバーで行われた1991年の再結成ライヴの模様を収録したライヴ盤『LIP SERVICE』で聴けるのみ(曲の表記は「可愛いアノ娘」)。 Vo陣内・G谷、G鶴川、B穴井、D船越というロッカーズがレコードをリリース(『WHO TH eROCKERS』~『Hanky Panky』)していた時のメンバーで演奏された「可愛いあの娘」は、1980年7月6日に日比谷野音で行われたライヴを収録したプロモ・オンリーの『REAL ROCK SEE SAW SCNENE VOL.1』というライヴ・アルバムでしか聴くことが出来なかった(というか私は聴いたことが無かったんだけど)。 私がこのプロモ盤の存在を知った時には既に高額で売られていて、とても手に入るようなもんじゃなかった。このライヴはSEE SAWレーベルのショーケース・ライヴだったようで、プロモ盤にはロッカーズの他に子供ばんど、TENSAW、ジョニー・ルイス&チャーのライヴが収められている。ロッカーズは「1999」、「気をつけろ」、「可愛いあの娘」、「キャデラック」の4曲が収録されていたが、今回ロッカーズ結成40周年を記念して再リリースとなったファースト・アルバム『WHO TH eROCKERS』のボーナス・トラックとしてこの4曲が収録された。待望のリリースだ。 「可愛いあの娘」は作詞が山部善次郎&陣内孝則、作曲は坂東嘉秀(田舎者~ドリル~ソロまで山善の相棒ギタリスト)。エディ・コクランというよりはTHE WHO版の「Summertime Blues」を下敷きにしたと思われる曲/アレンジで作られていて、歌詞はとてもシンプル。 “可愛いあの娘を自分のものにしたくてバラの花を一輪持ってくけれど、あの娘はつれない態度”っていう内容。念願の初期ライヴが聴けたわけだが、どーしてスタジオ録音が無いのだろうか。 ファースト・アルバム『WHO TH eROCKERS』のレコーディングは千葉県の成田空港近くにある観福寺本堂での1発録音。なんでも洋楽のアーティストが古城で録音するなら俺達日本人は寺だろ、という発想らしい…。1980年6月7日午...

山下毅雄「AFRO"LUPIN'68"INTSTRUMENTAL」

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1999年、VAPからリリースのアルバム『ルパン三世 '71ME TRACKS』より。 TOKYO MXでファースト・TVシリーズ『ルパン三世』が放送されている。 今まで何回も再放送で見てるけど、今見ても新鮮だなぁ。ハードボイルドタッチで峰不二子(声優は二階堂有希子)のセクシーさも際立ち、 “魔術師のバイカル”や“お子様ランチ”や“摩毛狂介”等々、毎回登場するキャラクターも個性的。ストーリーも結構ぶっ飛んで、ハチャメチャなところもあり、無理に辻褄合わせをしないところも面白く見られる。それで音楽もやっぱり良いんだよね。このファーストTVシリーズは山下毅雄のスコアで、このアニメのアダルト感を増すことに貢献していると思う。 そんなファースト・TVシリーズ『ルパン三世』のオープニングを見ながらある時、 あれっ?この背景の写真どっかで見た事あるな、もしかしてLed Zeppelinの…と思ってレコーダーをスロー再生すると、やはり峰不二子の背景にロバート・プラントとジョン・ボーナムの写真が。サイケデリックな雰囲気に合わせたのだろうか…。たぶんYouTubeにあると思うので興味ある方は探してみては…。 オープニングに使われているのはチャーリー・コーセイがヴォーカル、 “ヤッパ・パ・パ”とコーラスが特徴的な「AFRO"LUPIN'68"」(実際は第4話から第15話までオープニングに使われた)。オープニングの音楽や映像は度々変更があったようで、なかなかマニア向け。 ファースト・TVシリーズ『ルパン三世』のサウンドトラックのマスターテープは紛失しており、マスターをもとにした商品化はされていない。なので再録音盤が作られたり、ME(Music & Effects)テープから楽曲を取り出した商品が発売されている。 今回ファースト・TVシリーズ『ルパン三世』の音楽が聴きたくてオリジナルを聴くには現在これしかないって感じて入手したのが『'71 ME TRACKS』。放送に使用していたMEテープから取り出したので、台詞は入っていないものの、音楽は使用された部分だけで収録時間は短く、効果音(足音とか銃声とか車やバイクのエンジン音とか)が被さったままだ。モノラルでの収録。 ブックレットの解説(このCDの企画制作者・高島幹雄)によると“全23話分のME...

LED ZEPPELIN「TRAIN KEPT A ROLLIN'」

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1991年、OH BOYからリリースのブートレグ・ライヴ・アルバム『Don't Mess With Texas』より。 たま~に見かけるんだよねブックオフでブートを。で、500円とか安ければ買っちゃうんだけど。 これは1969年にダラスでおこなわれたテキサス・インターナショナル・ポップ・フェスティバルから8月31日に出演したゼップの演奏を収録したCD。ブックオフで見かけて、ブートでは音質がいいものが多いOH BOYレーベルだったので買ってしまった。でもハードロックのブートLPを購入していた数十年前、ゼップは買ったことが無かったと思うので、ゼップのブートは初めて手に入れたことになるかな。 裏ジャケの曲目表では1曲目は「Sweet Baby」と記載されているが、曲は「Train Kept A Rollin'」で、“Please welcome Led Zeppelin!”の紹介のあと、ボーナムのパワフルでトリッキーなドラム。ペイジのギターストロークに続いてお馴染みのリフが演奏される。ハイトーンのプラントのヴォーカルと挿入されるハープ。ジョン・ポール・ジョーンズのベースに支えられながら、 ペイジとボーナムのワイルドなプレイが堪能出来るエキサイティングなライヴ・ヴァージョン。 「Train Kept A Rollin'」は約3分と短い演奏だが、2曲めのブルージーな始まりの「I Can't Quit You Baby」との対比も良い。他に「Dazed And Confused」、マディのカヴァー「You Shook Me」、メドレーの「How Many More Times」、おなじみ「Communication Breakdown」を収録。途中カットされている箇所があったりするが、サウンドボード録音で音質も良く楽しめるライヴだ。

私の放浪音楽史 Vol.74 ZELDA『ZELDA』

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1982年8月25日 フィリップス/日本フォノグラムよりリリースのアルバム。 1978年9月ボーイズ・ボーイズ結成(メンバーはBチホの他Gエミ、Voクミ、Drカズミ)~1979年3月頃チホ脱退、チホは自身が発行していたミニコミChange2000の創刊号で新バンドのメンバーを募集、ゼルダ結成。この時サヨコはオーディションで落選している。 1980年1月3日新宿ロフトで“80年にスパークするモダンガールズ”と題されたライヴに出演(共演はボーイズ・ボーイズ、水玉消防団、ノンバンド)、Bチホ、Gヨーコ、Drマル、ヴォーカルは後にP.T.A'Sに参加するケイという女性でサヨコは客席から見ていたという。 1980年3月30日新宿ロフトでライヴ。ヴォーカリストが抜け、この日から当時まだ15才だったサヨコが参加(共演はS-Ken、不正療法、スタークラブ)。 1980年4月6日アトリエ・フォンティーヌにてサヨコが参加して2回目のライヴ、このライヴの後サヨコが正式加入。 1980年10月ジャンクコネクションから3曲入りEP「ASH-LAH」、 1981年アスピリン・レコードから3曲入りソノシート「MACKINTOSH-POPOUT」のリリースを経て、1982年8月にリリースされたのがゼルダのメジャー・デビュー・アルバム『ZELDA』。  アルバムと同時にシングル「ミラージュ・ラヴァ― c/w 密林伝説」がリリースされている。 デビュー・アルバムの制作は難航したようで、自分たちでレコードを作ってそれをレコード会社に買ってもらうという原盤システムをとったようだが、ゼルダのメンバーの思い描いた通りには進まなかった。プロデュースは彼女たちがシンパシーを感じていたリザードのモモヨだったが、モモヨ自身はアルバム全曲が彼女たちの作詞・作曲の楽曲では大衆性に欠けるとして、 楽曲を提供するもののゼルダのメンバーは反発、特にヴォーカリストのサヨコは他人の詞を歌う事に強く抵抗したが結局涙ながらに歌入れをしたという。 メイン・ヴォーカルを数曲ほかのメンバーが担当するという案も出されたがサヨコはこれを拒否した。また、彼女たちメンバー以外のミュージシャンをレコーディングに使用(モモヨ作3曲は、じゃがたらのていゆうがドラム、リザードのワカがベースを演奏、モモヨがギターで参加)するなど、モモヨの強引なプロデ...

TYPHUS「ノータッチ」

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2016年6月22日発表のアルバム『Typhus』より。 日本のハードコア・パンク黎明期に活動していたチフス(1980年秋結成~1981年7月解散)の “ほぼコンプリート音源集” CDがリリースされた。 ソノシート、カセットリリースの音源からセレクトされているが、チフスがポリティカルから1981年1月にリリースしたソノシートは今では非常に高額で売買されているから、こうして手軽に聴けるようになったのはありがたい。帯なし、歌詞記載も解説書も無し、厚紙ジャケット1枚封入のみでクレジット記載は裏ジャケのみ、という簡素な作りではあるが…。 全13曲26テイク収録。 やはりソノシートの4曲は強烈な印象を残すが、その他の音源、スタジオリハーサルやライヴ音源を聴くのは私は初めてなので興味深い。 14曲目に収録されている1980年10月28日のスタジオライヴ・テイクの「ノータッチ」は、ロミという女性メンバーがヴォーカルをとっているのも新鮮で、あのハードなチフスの演奏と“傷んだハートにノータッチ”と歌うやや脱力気味の女性ヴォーカルが妙にマッチしていてよい。この曲イギリスのスリッツの曲をもとにしているらしい。まぁどの曲も歌詞はユニークで極めて辛辣。 チフスはVoのイズミはあぶらだこへ、ギターのタムはザ・スターリンへ、ベースのシンはガーゼへ、ドラムのタクはスティグマへ、 とその活躍の場を移していく。

田代俊一郎著『博多ROCK外伝』

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2016年6月9日、INSIDEOUT刊 西日本新聞に現在も連載されている“九州近代歌謡遺聞”のロック編をもとに加筆・修正、上田恭一郎と吉村輝幸の写真を加えて出版されたもので、博多ロック先駆者であるサンハウスの誕生と活動にフォーカスし、他にもブロークダウンエンジンや山善の活動が取り上げられた1960年代~1970年代後半、フルノイズ、ロッカーズ、モッズ等を取り上げた1980年代、と大きく2つの年代の博多ロックシーンを現代の状況も踏まえながら振り返り、昭和、ぱわあはうすといったライヴ喫茶、本格的なライヴハウス80'sファクトリーの誕生、レコードショップ(ジュークレコード、ボーダーラインレコード)開店や、イベントのジャンピングジャム開催、タウン誌シティ情報ふくおか、音楽専門誌ブルージャグの発刊なども絡めて博多という都市の音楽的拠点を検証する。もちろん関わった人物も多彩に取り上げられている。 興味深いエピソード満載、シーナと鮎川の結婚式での写真やアーティスト若かりし頃、80'sファクトリーの店内等々珍しい写真が掲載されている。ルースターズは連載1回分、他にはアクシデンツやモダン・ドールズ、アンジー、ヒートウェイヴなど。巻末に掲載されている博多ロック略年表は、もうちょい詳しい年表にして欲しかったが、著者の博多ロックへの熱い思いはこの本の刊行された日付に象徴されているだろう。 著者は1950年北九州市生まれで慶大卒業後に西日本新聞社入社、現在は客員編集委員。 西日本新聞のHP 西日本新聞・連載・九州近代歌謡遺聞のページ 過去記事でロック編が読める。本ではモノクロだがここではカラー写真で掲載されているものも。現在は民謡編が連載されている。

私の放浪音楽史 Vol.73 ARB『W』

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1982年6月21日、ビクター/インビテーションよりリリースのアルバム。 前作では入院していたドラムのキースが復帰、戦争・労働・女性など“W”をキーワードにしたアルバム5枚目。アルバムに先駆けて5月にはシングル「クレイジー・ラブ c/w エイリーン」がリリースされている。「クレイジー・ラブ」は作詞・柴山俊之、作曲・木戸やすひろ、と曲作りをバンド外部へ発注しシングルヒットを狙ったらしい。クラッシュ&沢田研二のス・ト・リ・ッ・パーってイメージの曲調だがヒットとはならず…。当時聴いた私もこのシングルはチャート狙いだな、とは思ったものの曲としてのインパクトは薄く、この路線じゃないだろーと思ったものだった。B面の「エイリーン」は映倫(映画倫理委員会)を揶揄したルーズなロックンロール・ナンバー。どちらもアルバム『W』に収録されている。 アルバムのオープニングは「ウィスキー&ウォッカ」で、当時の冷戦構造をウィスキーとウォッカに喩え、米ソ中の対立をユーモラスに描き出したラップ調のファンキーなナンバー。クラッシュの「Magnificent Seven」の影響下にあったとも思えるが、田中一郎のギターがキレてるし、パーカッションも多彩に使用した軽快な曲だ。自分達も含めた日本のロックがチャートに上がらない歯がゆさ。なんとしても自分達のやり方で芸能・歌謡界のシステムに切り込んでいきたい。その石橋凌の思いを詰め込んだ「ユニオン・ロッカー」では、芸能界の“イカサマ野郎”を“高く吊し上げろ!”と同志ロッカー達へ連帯を熱く叫ぶ。 つらい繰り返しの日々に別れを告げたくても、夜が明ければまた振り出しに戻る…「Heavy Days」は石橋凌作のスローなワークソング。ビートルズの「The Ballad of John And Yoko」のような「二人のバラッド」はフォーキーな曲調でエンディングをビートリッシュに決める。 “家事なんてしなくていいから俺に愛だけおくれ”という柴山俊之作詞の「愛しておくれ」は、マディ・ウォーターズ「I Just Want To Make Love To You」のソフト訳版という感じだ。曲は田中一郎作。工業都市で働く男女をモチーフにした「モノクロシティ(Man Stand Up, Woman You Too)」、今夜もまた午後6時からステージでサックスを抱く男…激しくバップするサ...

『TH eROCKERS アルバム・3タイトル再発!』

TH eROCKERSのオリジナル・アルバム3タイトル再発! ファーストアルバム『WHO TH eROCKERS』にはボーナス・トラックとして『REAL ROCK SEE SAW SCENE VOL.1』(プロモLP・未発売) からのライブ音源「可愛いあの娘」ほか4曲収録。 セカンドアルバム『COME ON』にはボーナス・トラックとしてアルバム未収録のシングル曲「黒い眼をしてU.S.A」、「シャープ・シューズでケリ上げろ!」収録。 2016年7月20日発売。トーク・イベント、ライヴも予定されている。 待望のプロモ盤収録曲、アルバム未収録シングル曲のCD化。サード『SHAKIN'』にはボーナス・トラックは無いのかな…。もうちょっと未発表のものはないのだろうか。